モジリア

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おじさんが読む「赤毛のアン」

豆本エッセー 中華そば

2013年03月16日 | 豆本

ー中華そばー

 昭和30年頃のこと、

妹則子が中華そば作りに凝っていた。

 

当時、ラーメンという云い方はなかったような気がする。

毎夜、10時頃になると

夜泣きそばのチャルメラの音がする。

則子はドンブリを持って,飛び出してゆく。

そばが茹であがるまで夜泣きそばのおじさんと話をする。

そのうち則子も見よう、見まねで中華そばを作り始めた。

なかなか、おじさんの味にはならない。

 

 あれこれ工夫して中華そばを作り、

その都度おじさんに聞くテーマがあり、

チャルメラが鳴るのを心待ちにしていた。

 

 中華そば一杯40円の時代、

一杯の中華そばを家族で分け合って食べた。

夕食を済ませたあとの夜食だからその程度の分量で充分だが、

今のように家族で外食するような時代ではなかった。

昼食か夕食で家族それぞれ一人前ずつ食べたい思いがあった。

則子が中華そば作りに凝りだした背景にはそんな思いがあったのだろう。

 

 鳥ガラとネギを一緒に煮込むなど、

おじさんの味に段々近づいて、ついに完成の域に達した。

 

おじさんのチャルメラも則子を待っている様子もなく

通りすがりにちょっと御挨拶する程度に鳴らして通り過ぎてゆく。

 

 私も則子をまねて中華そばを作るようになった。

そして父や母、下の妹恭子も弟も

ほぼ一定の味の中華そばが作れる。

施行錯誤を繰り返したのは則子一人、

味が完成するまでは眺めているだけだったが、

完成すると不思議に家族全員が同じような味に作れる。

文化?とはそういうものらしい。