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特別支援教育の理解は10年前と変化したか

2018年12月09日 | 教育
 10年前である。高等学校の養護教諭を対象に,特別支援教育に関する研修会を行っ
た。その際の内容である。養護教諭から聞く高校の現状には,乳幼児期からきちんと
対応されず,青年期まで来てしまった子どもたちの悲運があった。

1.このようにして発達障害の子は青年期を迎えた

① 未就学児健診の体制ができていない


 1歳半・3歳時検診での適切な対応が未整備検診時に,専門家(主に臨床心理士)
が入り,観察を行う,配慮の必要に幼児の保護者の相談を受ける,という体制ができ
ていないところがある。

○様子を見ましょう

とされてしまうケースが多い。また,アスペルガーの場合,言葉がそれなりに出てお
り見過ごされやすい。

② 見過ごされやすい幼児

 保育園・幼稚園では集団の中で何とか過ごしていく生活レベルでは問題が見過ごさ
れやすい。境界線といわれるIQ75程度の子の場合,身辺自立や会話の面では通常
の子についていくことができる。また発達障害があってもIQが100を超える子の
場合,幼児期の多動な傾向やこだわりがあっても,理解力は高いため,

○少し変わっている子

ということで見過ごされていく。

③ 小学1年生の2学期より問題が大きくなる

 小学校の1年生の1学期はひらがなが中心の内容である。まだ分からなくてもつい
ていける。2学期から漢字も入り,計算も入ってくると,境界線の子は極端に遅れ始
める。知的の問題のない発達障害の子はすでに突発的な行動や,コミュニケーション
で問題が見える。しかし,学習である程度ついていける,また,特別にできる教科な
どあると「様子を見ましょう」ということになってしまう。

○大丈夫ですよ

 2年生,3年生までは,「ちょっと変わったところがありますが,こんなところが
がんばっていて良くできるので,大丈夫ですよ。」といわれ,5年生で急に「専門の
方に見てもらったほうがいい」と言われるケースがある。

④ 中学では生徒指導の範疇となる


 現在は意識がガラッと変わったが,数年前までは「中学で発達障害の疑いがあり,
配慮の必要な子というのはいない。生徒指導の範疇です」というところが多かった。

⑤ 保護者はなかなか障害を疑えない。そして高校へ

 知的に問題がなく,学習的についていけると,保護者はなかなか障害を疑えない。
変わったところはあるといっても,やはり高校,大学を目指していく。子どもが精神
疾患などに陥り,危機的な状況になって初めて専門機関へ相談に行くというケースが
出てきている。

○適切な対応がなされず,二次障害を抱えた状態である

 そしてこの状態を放置おくとどうなるか。いわゆる三次障害である。人に危害を
加えてしまう,といった行動障害といえる状況に進んでしまう恐れがある。報道され
た悲惨な出来事が記憶にある方も多いものと思う。

2.発達障害の子を放置してはいけない

 基本的な知識があり,対応の技術がある。その技術を学んでいる教師とそうでな
い教師がいることは確かである。
 ADHDの子は注意が散漫ではなく,一つの事に注目してしまうところに問題があるの
だ。
 自閉症の子は,質的な障害があり,年齢相応の事ができていても,低年齢の当然で
きるだろうことが本当にできないこともあるのだ。
 そのようなことに対応する具体的方法を多くの教師が理解することが必要である。

・掲示物は最小限にする。

「自分の興味のあることに集中してしまうこども達」がいる。余計なものが黒板,も
しくはその周辺に貼ってあることにより,その子は学習に集中できない。極力取り外
すことが必要である。

・整理の仕方のモデルを示す。

 ロッカーや机の中がぐちゃぐちゃになり,整理できない子がいる。発達障害のあ
る子はなかなか整理ができない。「何をどのように整理すれば良いか分からない」こ
とも原因となる。やり方のモデルを示し,真似させ,ほめていくことを繰り返して定
着させる必要がある。写真の提示も有効である。

・マス目黒板・マス目ノートを使う。

 どのように黒板に書かれたことを写してよいか混乱する子がいる。これは発達障害
があるなしにかかわらず,起こる現象である。算数の筆算などは特に位取りが意識し
づらくなり,間違いの原因となる。併せて,ノートもマス目のある物を使った方が圧
倒的に書きやすくなり,間違いが少なくなる。

 10年たった今,特別支援教育に対する理解はどのくらい進んでいるのだろうか。
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