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グレーゾーンの子への指導技術

2018年12月28日 | 教育
学級には発達障害で苦しむ子が必ずいる

【6.5%】

 通常の学級にはこれだけ障害の疑いのある児童生徒が存在する。2012年,文部科学
省の調査(通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全
国実態調査)によるものである。

 30人のクラスに2名程度は障害の疑いのある子が存在するということになる。そ
の子をひきつける授業が教室で展開されなければならない。

【1.6%】

 この数字はある県の8市町村を対象に調査し,障害の疑いのある児童生徒が存在す
る割合である。国の調査の3分の1以下となっている。これは,地域性ということを
差し引いたとしても全国の調査と比べてあまりに少ない数値である。このことは,そ
れだけ,見落とされている子が,数多くいるという証である。

【存在を自覚する】

 学級の中には,発達障害で苦しむ子が必ずいるのである。その存在を自覚し,正面
から受け止め,巻き込んでいく授業,学級のすべての子が力をつける指導を目指さな
ければならない。

 通常の学級に存在する発達障害は,おもに,注意欠如/多動症(ADHD)
自閉症ウペクトラム症,学習障害(LD)である。
 以上の子ども達は,それぞれの障害の特質が違う。しかし,発達障害児の認知の性
質から,共通して言える性質がある。

【ワーキングメモリーが少ない】

 ワーキングメモリー。これは「作業記憶」である。これが大変少ないと言われる。
このことを理解しないと,発達障害の子は授業についていくことができない。

 たとえば次のようなことはないだろうか。算数の時間。

T「教科書の23ページを開いて,3番の問題をやりなさい。」
C「先生,どこやるんですか。」
T「何でよく聞いていないんですか!」


「先生,どこをやるんですか。」と聞いた子は本当に分からない場合がある。
先ほどの指示には,

①教科書を出しなさい。
②23ページを開きなさい。
③3番の問題を探しなさい。  
④その問題をやりなさい。


というように,ざっと4つほどの指示が入っている。発達障害のある子は,作業記憶
が一般に少ないといわれる。一度に4つの指示を出されて分かるはずがない。その場
合,指示を分けて一つ一つ出し,「隣の人と確認。」「3番の問題に指をおいてごら
んなさい。」と確認作業を入れて進めていくことが時には必要である。

 さらに,そのような子への配慮として,以下がポイントとなる。

【 一目で分かる工夫 / 言葉を削る /言い換えない】

 板書はし過ぎない,シンプルにキーワードをしっかり囲むなどぱっと見て分かる工
夫が必要である。

 説明はし過ぎない。10秒以内で重点を伝える努力をする。

 言い換えない。説明を加えようとしたため,言葉を言い変え,説明の説明になって
しまうと,分からない子はさらにわからなくなる。

【心理検査は不可欠】

 発達障害,とりわけ,学習障害(LD)の子は,やはり心理検査が必要である。た
とえば,「K-ABC心理・教育アセスメントバッテリー」では,その子の得意なこ
とは何かが分かる。また,全体を見せて学習を進めたほうがいいか(同時処理型),
スモールステップで教えるほうが理解が早いか(継次処理型)が分かる。「WISC
-Ⅳ」では,その子の課題が見え,次につなぐ学習のヒントが分かる。
 気を付けてほしいことは,検査をして検査の解説になってはいけないことである。
どの学習が次に必要であるか。そのことを見つけ,伝えなければ意味はない。

 まずは,学級に存在することを自覚する。そして,作業記憶に乏しいといった基本
的な理解をする。さらに,心理検査でその子の得意と弱点を把握し,指導に当たる。

 学級に存在する発達障害の子ができるようになることは,教師の力を伸ばし,教育
力を高めることにつながる。おのずとよい学級が作られていくのである。
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