水彩 10x15cm 2016
旧のアパートはベランダと台所が直結していたので、台所の床の上にお米をばらまいて雀を呼び込んでいた。本当はベランダで餌付けできればフン害がなくてよいのだけど、それをやればアパートの住人から苦情が出そうだったので、台所の開き戸を開けて人目につかないように台所に招き入れて生米をシェアーしていた。初めはたった一羽の訪問だったのだけど、2,3日もすれば友達や家族を引き連れて押し寄せてくるようになった。しまいには50羽くらいに膨れ上がって、自分の主食であるコメは完全に彼らに食べられてしまう有様だった。それでも彼らを追放できなかったのは自分を訪ねてくる友が一人もおらず、孤独と貧乏のどん底を味わっていたのでやけくそになっていたのかもしれない。(笑) 彼らは雪の日も雨の日も日中2時間おきにやってきた。それが数年続いたので何回も母親に連れ添ってひな鳥がやってくるのを目撃した。みんな1羽か2羽の子供を従えていたが、この雛たちはピヨピヨと甲高い声を張り上げ、両の翼を小刻みに震わせ母親に餌をねだるのである。その都度親鳥は休みなしに働いて子供に口移しで米を与えるわけである。この子供たちは随分と成長して自分で食べられそうになってもやはり親からの口移しを要求するのである。米の小山の上に陣取った子供が自分より低い位置にいる母親に餌をねだっている光景はちょっと見ものであった。もう体つきも羽根の生え具合も親鳥とそう違わない子供が頑強に口移しをねだるのである。そして親鳥は自分が食べるのも忘れたかのように子供に尽くしているのである。親離れ子離れの難しさはこんな小さな生き物にまで及んでいるのかもしれない、と思ったものである。
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