毛津有人の世界

毛津有人です。日々雑感、詩、小説、絵画など始めたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

典子のこと

2025-02-18 08:43:40 | マラッカ紀行

僕は東京からやって来た彼女のことを今でもよく覚えている。彼女はとても美しい日本女性だった。

いつものように遅く目覚めた僕はまっすぐにシャワー室へ飛び込んだ。そして冷たい水を頭から浴びながら、ゲストハウスのオーナー夫婦が、初めて耳にする女性の名前を何度も呼んでいるのを聞いた。
シャワー室を出た僕にロニーが満面の笑みをたたえて話しかけてきた。

「おはよう秀実、調子はどう」僕はいつも通りの返事に加え、
「いったいどうしたの。随分と上機嫌じゃないか」と答えた。

すると彼は。
「わたしの娘の典子がたった今東京から着いたばかりなんだ」

そういって20代後半の好奇心に満ちた瞳をした彼女を自慢そうに紹介しようとするのだった。
そこで僕は、
「本当にロニーが言う通りなんですか」と聞かざるを得なかった。
すると彼女は、
「もちろん冗談よ。でも彼はいつも私のことを実の娘のように扱うの」
と、優しい笑みを浮かべて答えるのだった。彼女の英語は非常に流暢であった。その典子の返事においかぶさるようにして、
「本当を言うとね、彼女を二番目の女房にしたいんだけどね、は、は」
と、モスリムであるロニーは悪びれずに付け加えるのだった。

典子はこれまで自分が見て来た日本女性とは全然違って見えた。彼女の黒い瞳は知性の輝きを十二分に湛えていた。肌は大粒の真珠のように滑らかで透明感があった。その美しい肩の上に漆黒の髪が泳ぐ風情が何とも言えなかった。それでもスロースタータである自分は「Nice to meet you」と社交辞令的に言ってその場を離れると、バルコニーに出てその日一番の煙草に火をつけるのであった。すると背後から、
「秀実、今晩は典子のために歓迎パーティーを開くんだ。秀実も参加してほしい」
と、ロニーの声。僕は即座にOKと答えていた。

その後ロニーは典子と連れだって買い物に出て行った。そしてロニーの妻ビーもホールを離れたその隙を狙って、僕はレセプションカウンターの上に開いたままで置かれてあった宿帳を覗いた。彼女の職業欄にはofficerと記入されていた。だから何かの公務員職にあるのだろうと僕は推測した。年齢は29歳だった。続く。

 

 

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薔薇 8点  その2

2025-02-18 06:53:10 | 静物画

もうすぐ春です。心が躍ります。すべての動植物が蠢き始めるのを感じています。

 

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funny face

2025-02-17 13:03:11 | 人物画

こういう面白い顔の表情を集めています。お手元にございましたらどうぞ写真をシェアしてください。出来上がった絵は無償であなたにお届けします。

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2024年最後の女性客

2025-02-17 09:07:39 | マラッカ紀行

2014年が海外旅行最後の年になってしまったが、それからも年に3組から5組の来客があったので心の平安を得ていた。だけど、これがいつまで続いてくれるのかと思うと不安ではある。だんだんと年寄りじみた顔になっていくので早晩若い婦人は来てくれなくなるだろう。やがて正真正銘の孤独老人になるのだろう。

この人とはFacebookで知り合った。しかし共通の友人がいっぱいいるので初めて顔を合わせることになってもお互いに少しも照れることはなかった。彼女が2024年最後の来客になった。僕は彼女にこう言った。「マラッカでは会えなかったけれどそれは僕にとってはとても幸いなことでした。さもなければ僕はきっとあなたに恋をして最後にはには振られていたことでしょうから」そうなのだ、僕はマラッカでたくさんの美女に会いすぐに恋に落ちたのだが、いつも失恋で終わっていたのだった。だから僕はこの世で寅さんぐらい身近に感じる人はいないというわけだ。

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Portrait of Lady Diana

2025-02-17 06:14:13 | 有名人

2008年にポルトガルで英国ロイヤルファミリイの一員と馴染みになり彼女が大のダイアナファンでよく食事やお茶を共にしたと話してくれたので、その彼女のためにレディ・ダイアナの絵を描き始めた。その後もこの高貴なるご婦人とはFacebookでお付き合いしているのだけど、最初にあなたのことを何と呼べばいいかと質問したら、ファーストネイムで呼んでくれと言われた。日本でいえば宮様とタクシー運転手が友達になりファーストネイムで呼び合うなんかは絶対に起こりえないことだろう。宮様がFacebookで私生活をあからさまにしているなどということも絶対にありえないことだろう。日本文化は実に個性的なのである。

 

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