昔は徒弟制度というのが一般で職人でも商人でも芸人でも政治家でもみんな師匠の家に住み込んでその技と知識を盗み学び、しかる後に独立するのが正道だったようだ。これは上手くできたシステムで親は年頃になった子供の夢を聞き、それに見合った師匠に預けれるだけですでに養育の責任を果たしたことになり、肩の荷を降ろせたのだから願ったりかなったりではないか。今のように大学までの学費や生活費を負担するなんざ僕のような稼ぎのない人間にはたまったものではない。僕は離婚後の娘の養育費として10年間で600万円送金したが、これは小生には荷が勝ち過ぎた。18歳で高校を卒業するのを機に養育費負担は免除してもらった。それでやっと自由になりポルトガルで暮らしたりカナダで暮らすことができたというわけだ。
僕はそういう徒弟制度時代の大工さんを何人も身近に見て来たが、今の大工さんはどうして大工さんになるのだろうか。やはり徒弟制度は今も健在なのだろうか。それとも職業訓練学校で技術を身に着けて適当な就職先を見つけるのだろうか。
僕は絵画の師匠に一度もついたことがないのでもっぱら模写と写生の一点張りだった。貧乏のどん底で絵を始めたのだからほかに方法がなかった。しかしこれが正解であったことを後に実感した。それで名画の模写こそは技術習得の最短距離だとみんなに勧めた。日本では漫画家として有名になったヤマザキマリさんが17歳でイタリアに放り出されて美術学校に学ぶわけだけど、やはり学校ではもっぱら名画模写に精をだしておられたようだ。だから名画模写がどれだけ有益であるかははかり知れないものがあると思っている。僕はPinoからたくさんのものを学んだ。今も学び続けている。これを中断することはないだろうと思っている。