日本の2020年度末の債務残高は1216兆円、過去最大だが、インフレさえ起こさなければ、国債の発行額は気にする必要はないという。むしろ長期のデフレ不況が続き、コロナ禍やエネルギー価格高騰で国民生活が苦しい今は、積極的に国債を発行し、国民に借金をばらまくべきだとも述べているのは経済学者の井上智洋氏である。なお、井上氏は、こんな見解を述べると近年注目されているMMTいわゆる現代貨幣理論に近いと思われるかもしれないがMMTに全面的に賛成はしていないともいう。ただ自国通貨を持つ国にとっては、財政赤字自体は全く問題ないと考えているとも述べている。
財政破綻したギリシャにはドイツからの大量の借金があった。日本には他国からの借金がほとんどない。国が自ら発行できる通貨で返済できる債権を借金とは呼べない。よく日本の財政を家計にたとえた話として、例えば400万の年収の人が年に700万支出し、不足分の300万を借金に頼っているという話。だが、国の借金と個人の借金とは全く性質が違うものだ。現在国民一人当たり970万の借金があるといった誤解を生む報道もあったが、借金をしているのは国であり、国民はむしろ債権者なのだ。
資本主義経済では、国や企業などの経済主体は基本的に永続することを前提に作られている。従って、どこかの段階で全額を返済しないといけないということはない。個人の場合、いつか亡くなるので元気なうちに返済しないと家族や家主に迷惑をかける。しかし、企業は社債の返済期限が来ると借換債(かりかえさい)を発行し借金を継続できる。また、銀行にとって借金は負債だが、預金総額が増えていくことを借金が増えているという人はいない。政府が発行する国債も同様で、どこかの段階で全額返済しなくてはならないということはない。持続可能かどうかが問題なのだ。国債残高をゼロにする必要はないのだ。増え続けても持続可能なら問題はないともいえるのだ。
日本がこれ以上借金を増やすとギリシャのように財政破綻するという人がいる。ギリシャはユーロ圏に属していて、自国通貨を発行できない。そんな国が国債を発行し過ぎると買い手がいなくなり、国債価格が暴落し、金利が暴騰する。それでギリシャは財政破綻した。しかし、日本のように、自国通貨を持っている国は金利が高騰しないようにコントロールできる。日銀が通貨を発行して国債を買うことを保証しているため、国債の買い手がなくなることもない。金利を一定程度に抑えることもできる。
気にする必要があるのはインフレだ。今はウクライナ侵攻の影響もあり、ガソリン価格や穀物の価格が上昇している時である。
インフレには大きく分けてコストプッシュ型とデマンドプル型の二つある。コストプッシュ型というのは生産力が下がるなど、供給側の要因で物価が上がるという型を指している。いま、ウクライナ侵攻でロシアからの供給がストップし、天然ガスや原油などの価格が上昇していることがまさにそうだ。これに対し、デマンドプル型というのは、国民が多く消費し景気が過熱して物価も上がるという型を指す。今、コロナ禍で日本以上にお金をばらまいたアメリカは景気が過熱している。そのため、今アメリカにはコストプッシュ型とデマンドプル型の両方のインフレが起きている。
通常、インフレ率はCPI(消費者物価指数)を指標とする。ただ、肉や野菜などの生鮮食料品は価格が変動しやすいため、それらを除いたコアCPIという指標も使われる。石油のようなエネルギー価格の影響を除いたものをコアコアCPIという。現在、日本ではCPIもコアCPIも上昇しているのだが、石油価格の影響を取り除くと、まだデフレ状態が継続している。日銀はコアCPIをもとに、インフレ率2%の目標を定めている。しかし、コアCPIは特殊な事情で石油価格が高騰しただけで上がり、景気の過熱を正確に把握できないため、インフレ目標はコアコアCPI(石油価格の影響を取り除いたCPI)を指標にすべきと思われる。そのように見ると日本の景気はまだ過熱してはいない。
アベノミクスでインフレ率は多少上昇したが一昨年のコロナの影響でデフレに戻った。去年の末くらいから再びインフレ率が上がってきたのは、景気が良くなったのではなく、コストプッシュ型のインフレによるものだ。アメリカではコロナのパンデミックがもう終わったとの認識で消費が活性化してきた。だが、石油産出国が再度のコロナ感染拡大による消費減少を恐れて石油の供給を出し渋っている。今後、世界的にコロナの感染拡大が終わったとの認識が定着すれば石油産出国も出し渋りをやめると思われたのだが、そこにウクライナ侵攻が始まった。現状はロシアからの供給がストップしたことで、原油や穀物の価格が上がるコストプッシュ型のインフレが世界的に起きてきている。今のままでは、ガソリンや小麦粉をはじめさまざまなものが値上がりする。日本の場合は、コアコアCPIが上がっていないので、さらに国債を発行し、給付金を国民に配布して良いとも考えられる。
(参考メモ)
歴史的に見れば、国内で自国通貨を追加発行するというのは、いろんな国で見られることだが、アメリカでは何度も実施されてきた。かつて、1ドルが360円という時代が定着していたが、為替変動制を導入し、アメリカは自国の貿易赤字を解消していく目的もあって、円高へと進ませる政策を取り始めた。そして有名な1985年のプラザ合意によって、急激な円高へと進むことになる。今では1ドルが130円前後を行き来するまでになった。円とドルの国内通貨量を日本とアメリカで対比すれば円とドルの対比の値が見える。日本以上にアメリカは過去50年の間に通貨を追加発行してきている。日本では、かつての民主党政権では、公共事業も縮小し、国債発行についても国内経済の禁じ手になるといって消極的だった。そのため景気は落ち込んだまま続いてきた。ところが自公政権になって、ようやく公共事業も増え、景気回復のための赤字国債の発行も何度か行われ、回復に向かった。自国通貨の追加発行は時々に必要な経済政策ともいえる。
財政破綻したギリシャにはドイツからの大量の借金があった。日本には他国からの借金がほとんどない。国が自ら発行できる通貨で返済できる債権を借金とは呼べない。よく日本の財政を家計にたとえた話として、例えば400万の年収の人が年に700万支出し、不足分の300万を借金に頼っているという話。だが、国の借金と個人の借金とは全く性質が違うものだ。現在国民一人当たり970万の借金があるといった誤解を生む報道もあったが、借金をしているのは国であり、国民はむしろ債権者なのだ。
資本主義経済では、国や企業などの経済主体は基本的に永続することを前提に作られている。従って、どこかの段階で全額を返済しないといけないということはない。個人の場合、いつか亡くなるので元気なうちに返済しないと家族や家主に迷惑をかける。しかし、企業は社債の返済期限が来ると借換債(かりかえさい)を発行し借金を継続できる。また、銀行にとって借金は負債だが、預金総額が増えていくことを借金が増えているという人はいない。政府が発行する国債も同様で、どこかの段階で全額返済しなくてはならないということはない。持続可能かどうかが問題なのだ。国債残高をゼロにする必要はないのだ。増え続けても持続可能なら問題はないともいえるのだ。
日本がこれ以上借金を増やすとギリシャのように財政破綻するという人がいる。ギリシャはユーロ圏に属していて、自国通貨を発行できない。そんな国が国債を発行し過ぎると買い手がいなくなり、国債価格が暴落し、金利が暴騰する。それでギリシャは財政破綻した。しかし、日本のように、自国通貨を持っている国は金利が高騰しないようにコントロールできる。日銀が通貨を発行して国債を買うことを保証しているため、国債の買い手がなくなることもない。金利を一定程度に抑えることもできる。
気にする必要があるのはインフレだ。今はウクライナ侵攻の影響もあり、ガソリン価格や穀物の価格が上昇している時である。
インフレには大きく分けてコストプッシュ型とデマンドプル型の二つある。コストプッシュ型というのは生産力が下がるなど、供給側の要因で物価が上がるという型を指している。いま、ウクライナ侵攻でロシアからの供給がストップし、天然ガスや原油などの価格が上昇していることがまさにそうだ。これに対し、デマンドプル型というのは、国民が多く消費し景気が過熱して物価も上がるという型を指す。今、コロナ禍で日本以上にお金をばらまいたアメリカは景気が過熱している。そのため、今アメリカにはコストプッシュ型とデマンドプル型の両方のインフレが起きている。
通常、インフレ率はCPI(消費者物価指数)を指標とする。ただ、肉や野菜などの生鮮食料品は価格が変動しやすいため、それらを除いたコアCPIという指標も使われる。石油のようなエネルギー価格の影響を除いたものをコアコアCPIという。現在、日本ではCPIもコアCPIも上昇しているのだが、石油価格の影響を取り除くと、まだデフレ状態が継続している。日銀はコアCPIをもとに、インフレ率2%の目標を定めている。しかし、コアCPIは特殊な事情で石油価格が高騰しただけで上がり、景気の過熱を正確に把握できないため、インフレ目標はコアコアCPI(石油価格の影響を取り除いたCPI)を指標にすべきと思われる。そのように見ると日本の景気はまだ過熱してはいない。
アベノミクスでインフレ率は多少上昇したが一昨年のコロナの影響でデフレに戻った。去年の末くらいから再びインフレ率が上がってきたのは、景気が良くなったのではなく、コストプッシュ型のインフレによるものだ。アメリカではコロナのパンデミックがもう終わったとの認識で消費が活性化してきた。だが、石油産出国が再度のコロナ感染拡大による消費減少を恐れて石油の供給を出し渋っている。今後、世界的にコロナの感染拡大が終わったとの認識が定着すれば石油産出国も出し渋りをやめると思われたのだが、そこにウクライナ侵攻が始まった。現状はロシアからの供給がストップしたことで、原油や穀物の価格が上がるコストプッシュ型のインフレが世界的に起きてきている。今のままでは、ガソリンや小麦粉をはじめさまざまなものが値上がりする。日本の場合は、コアコアCPIが上がっていないので、さらに国債を発行し、給付金を国民に配布して良いとも考えられる。
(参考メモ)
歴史的に見れば、国内で自国通貨を追加発行するというのは、いろんな国で見られることだが、アメリカでは何度も実施されてきた。かつて、1ドルが360円という時代が定着していたが、為替変動制を導入し、アメリカは自国の貿易赤字を解消していく目的もあって、円高へと進ませる政策を取り始めた。そして有名な1985年のプラザ合意によって、急激な円高へと進むことになる。今では1ドルが130円前後を行き来するまでになった。円とドルの国内通貨量を日本とアメリカで対比すれば円とドルの対比の値が見える。日本以上にアメリカは過去50年の間に通貨を追加発行してきている。日本では、かつての民主党政権では、公共事業も縮小し、国債発行についても国内経済の禁じ手になるといって消極的だった。そのため景気は落ち込んだまま続いてきた。ところが自公政権になって、ようやく公共事業も増え、景気回復のための赤字国債の発行も何度か行われ、回復に向かった。自国通貨の追加発行は時々に必要な経済政策ともいえる。
そもそも始まりは赤字からだしな。