むすんで ひらいて

YouTubeの童話朗読と、旅。悲しみの養生。
ひっそり..はかなく..無意識に..あるものを掬っていたい。

近くの遠くと、遠くの近く

2013年11月24日 | 旅行
晩秋に、長野県の紅葉の山を歩いた。
夜、目をつむると、黄・橙・赤にまぶたが発光していた。

そういうこと、沖縄の海でもあったなぁ。
ひざ下丈の浅瀬に顔をつけたら、どこまでも澄んだ、とろりと光る空間が広がっていて、黄・紫・青の熱帯魚たちが白砂に細長い影を落としながら、ひら~、ひら~。と舞っていた。
その夜、わたしは夢の中でも、魚の後を追って、揺れていた。
それは、潜らないと見えない、足元の別世界だった。


山歩き二日目に、雲行きが怪しくなってきたので、早めの帰路に着いた。
渓谷沿いの、細くカーブの多い道を車で降りてくると、畑の脇に露店が出ていて、おじいさんが台の上にゴロゴロ野菜を載せているのが見えた。

ちょうど、少し前から降り出した雨も弱まったところだ。
道端に車を寄せ、どれどれ。と戻ってきてみると、大小色形さまざまなカボチャ、どーんと存在感あるさつまいも、天然きのこいろいろ、大豆に大根、見慣れない乾物。。などが、たくさんではないけれど、小気味よく並べられていた。

「おぉー、ぜんぶ自分で作ったよ。今日はこれだけになっちゃったけどねぇ。うんうん、カボチャかね。そりゃあ、おいしいのは、やっぱりこの大きいのだよ。味は比例するからねぇ。おーう、ほっくほくだよ」
と、身振り手振りで話しながら、スイカみたいな大っきいカボチャを薦めてくれた。

日持ちのしそうなものをと、隣に並んでいるさつまいもの、これも大きいほうの二本入りを選んで買い物袋に入れたら、重みがぎゅーっと手に食い入った。

トランクに積み終えて振り返ると、おじいさんはぽつぽつ雨の中、黒い長靴で畑に戻っていくところだった。
その傍らには、キャベツが二株青々と育っていて、収穫の済んだ土ばかりの畑で、砂漠のサボテンのように見えた。

 
数日後、街に帰ってきたら、桜の紅葉の渋さに初めてはっとした。
いつも、春だけ待ち望んでいたんだ。

さっそく焼いたお土産のさつまいもは、お菓子のようにねっとり甘かった。
カボチャだけじゃない。
わたしまでほっくほくしていると、雨に煙る小さな露店と、野菜の台の後ろから体いっぱいの動作で作物たちを紹介してくれた、あのちいさなおじいさんを思い出した。

遠くて近いあっちの方から、じきに雪がくるだろう。






















                           かうんせりんぐ かふぇ さやん     http://さやん.com/


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「それ」らしく | トップ | 照らしたもの »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

旅行」カテゴリの最新記事