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東京目黒から山梨へ育児のためにお引越し。40代高齢出産ママの雑記帳です。

博士の愛した数式 (小川洋子)

2008年06月21日 | 本のこと
博士の愛した数式 (新潮文庫)博士の愛した数式 (新潮文庫)
小川 洋子

新潮社 2005-11-26
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おすすめ平均

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生来の捻くれ者につき、話題に取り上げられている最中は
ベストセラーと呼ばれる本には手を出さず、とんでもなく
後になってこっそり読んでいい本だったなと感動する性質。

今週半ば暇つぶしに本屋さんに寄ったとき、
眼に留まった本書をちらっと読んでみた。出だしが良い。

「彼のことを、私と息子は博士と呼んだ。そして、博士は息子を、ルートと呼んだ。」

出だしの一文がいい本は、最後まで良いに決まってる。
センチメンタルな気配の漂う出だしは、すでに亡き人を偲ぶ様子。
この時点ですでに涙がじわ~っと滲んでくる。

ヤバイヤバイ。通勤電車では読めない。
いつ泣き出してもよいように、コンタクトを取り外し
化粧を落とし歯を磨いて枕の横にティッシュを置いていざスタート。

万全の用意で読み始めたものの、80分しか記憶がもたない「博士」への
同情よりも、心から数式を愛している「博士」のロマンチストさに感動し
ティッシュはあまり必要なかった。

「数学者はロマンチストである」とよく言われるけれど、
本書の「博士」も間違いなく、こうしたロマンチストの1人。

交通事故による脳への損傷で記憶が80分しかもたなくても
彼の数や数式に対する情熱と信奉は生涯変わることがない。

数の後ろに隠されている秘密を解き明かし、意味を見出す術に長けている
「博士」の話は、数学好きではない人をも好きにさせちゃうほど魅力的。
ひとりの男の子の人生にも多大な影響を与えるのでした。

好きこそ物の上手なれ、じゃないけど、本当に好きなことであれば
他人に話すときも熱が入るし、それだけ影響力もあると思うので
そういう人は他人に教えるのに向いていると思うのですよ。

わたしも「博士」のような数学者に数学を学んでいたら
数学ができるできないは別としても、今頃もっとポジティブに
数字を受け止めることができたんだろうなあ。
現実は・・・ボロボロです。