![]() | 博士の愛した数式 (新潮文庫) 小川 洋子 新潮社 2005-11-26 売り上げランキング : 2863 おすすめ平均 ![]() Amazonで詳しく見る by G-Tools |
生来の捻くれ者につき、話題に取り上げられている最中は
ベストセラーと呼ばれる本には手を出さず、とんでもなく
後になってこっそり読んでいい本だったなと感動する性質。
今週半ば暇つぶしに本屋さんに寄ったとき、
眼に留まった本書をちらっと読んでみた。出だしが良い。
「彼のことを、私と息子は博士と呼んだ。そして、博士は息子を、ルートと呼んだ。」
出だしの一文がいい本は、最後まで良いに決まってる。
センチメンタルな気配の漂う出だしは、すでに亡き人を偲ぶ様子。
この時点ですでに涙がじわ~っと滲んでくる。
ヤバイヤバイ。通勤電車では読めない。
いつ泣き出してもよいように、コンタクトを取り外し
化粧を落とし歯を磨いて枕の横にティッシュを置いていざスタート。
万全の用意で読み始めたものの、80分しか記憶がもたない「博士」への
同情よりも、心から数式を愛している「博士」のロマンチストさに感動し
ティッシュはあまり必要なかった。
「数学者はロマンチストである」とよく言われるけれど、
本書の「博士」も間違いなく、こうしたロマンチストの1人。
交通事故による脳への損傷で記憶が80分しかもたなくても
彼の数や数式に対する情熱と信奉は生涯変わることがない。
数の後ろに隠されている秘密を解き明かし、意味を見出す術に長けている
「博士」の話は、数学好きではない人をも好きにさせちゃうほど魅力的。
ひとりの男の子の人生にも多大な影響を与えるのでした。
好きこそ物の上手なれ、じゃないけど、本当に好きなことであれば
他人に話すときも熱が入るし、それだけ影響力もあると思うので
そういう人は他人に教えるのに向いていると思うのですよ。
わたしも「博士」のような数学者に数学を学んでいたら
数学ができるできないは別としても、今頃もっとポジティブに
数字を受け止めることができたんだろうなあ。
現実は・・・ボロボロです。