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【あらすじ】小さな町で小さな床屋を営むホクトさんはあるとき、吸い込まれそうなくらい美しい空を見上げて、決意する。「私はもっともっとたくさんの人の髪を切ってみたい」。そして、彼は鋏ひとつだけを鞄におさめ、好きなときに、好きな場所で、 好きな人の髪を切る、自由気ままなあてのない旅に出た……。流浪の床屋をめぐる12のものがたり(文藝春秋)。
何かを学べるとか、元気がもらえるとか、いつまでも記憶に残るとかではなく
切り取られた空間の、不思議な浮遊感やつつましい幸福感やささやかな連帯感が
あくまで詩的に余韻たっぷりに語られる物語。
12の物語には、薄くも濃くもいつもどこかに放浪床屋のホクトさんが存在し、
晴れの空、雨の空、昼の空、夜の空、海とつながる空などなど、いろんな空が登場する。
いつも足元ばかり見てセカセカ歩くばかりの生活だけど、この物語を読んで
たまには空を仰ぎみたくなったその日は満月の夜だった。
薄い檸檬色のグラデーションをまとった満月の空を
放浪床屋のホクトさんもどこかで眺めているのだろうか。