裸木となるや連理の枝しかと 大野鵠士 (獅子吼3月号/主宰24句)

2022年04月10日 | 主宰句・主宰句鑑賞
【獅子吼995号】 2022年3月号 主宰24句
連理の枝 大野鵠士

地球こそ終の栖よ初御空
※季語 初御空/新年
※終の栖(ついのすみか) 終生住んでいるべきところ。最後に住む所。死後に落ち着くところ。(広辞苑)
※参考句 これがまあ終の栖か雪五尺 一茶

若きらの御慶どこやら令和めく
※季語 御慶/新年 新年に交す改まった挨拶
※参考句 長松が親の名で来る御慶かな 野坡(やば・・蕉門十哲の一人)
※若きら 若者たち

忍び足にも山茶花は散り止まず
※季語 山茶花/初冬

掌につくづく細き木の葉髪
※季語 木の葉髪(このはがみ)/初冬

暁闇の奥へと霜の鉄路消ゆ
※季語 霜/三冬
※暁暗 暁に月が無く、暗いこと。また、夜明け前の暗い時。あかつきやみ。

鶴翼の陣なり鴨は鴨のまま
※季語 鴨/三冬
※鶴翼 戦場での陣形のひとつ。鶴が翼を広げたようなⅤ字型に兵を配置し、中に敵勢を取り込めて攻撃しようとするもの。(新明解)

福耳にマスクの紐を託しをり
※季語 マスク/三冬

寒紅の唇閉ぢて黒マスク
※季語 マスク/三冬
  
藍深き空や風花舞へる午後
※季語 風花/晩冬
  
水洟をかむは寒山拾得か
※季語 水洟/三冬
※寒山拾得 寒山と拾得の飄逸な姿を組み合わせた中国・日本画の題材の一つ。中国唐代の禅僧。

鶴首の器一輪雪中花
※季語 雪中花/晩冬
※鶴首 徳利、花瓶、茶入れなどの、口が鶴の頸のように細いもの。

星凍てて天は谺を返す如
※季語 凍つ/三冬

為し得ざることの多さよ海に雪
※季語 雪/三冬
 
虚空なる雪片無量無辺かな
※季語 雪片/三冬 
※無量無辺 計り知れないこと。果てしなく多いこと。

冬鵙の声後ろから袈裟懸けに
※季語 冬鵙/三冬

大寒の空割れさうなまでに澄む
※季語 大寒/晩冬

天涯は真一文字の寒茜
※季語 寒茜/三冬 冬夕焼の傍題

 一月十七日
あの月に地震はあるか寒苦鳥
※季語 寒苦鳥/三冬  かんくちょう(雪山の鳥)
※経文に出て来る鳥。「寒苦必死、夜明造巣」いざ夜が明けると怠けてしまう。精進を求めない衆生に譬えた想像上の鳥

パプリカをパスタに加え室の花
※季語 室の花/三冬 室咲の傍題

冬灯モカ珈琲と哲学書
※季語 冬灯/三冬  冬の灯の傍題

裸木となるや連理の枝しかと
※季語 裸木/三冬  枯木の傍題

太陽の季節は果てて寒の月
※季語 寒の月/晩冬  寒月の傍題

母許に眠る心地の日向ぼこ
※季語 日向ぼこ/三冬
※母許(ははがり)
※参考句  母許といふ涼しさのありにけり 坂本祥子

福招く猫など飼はむ春隣
※季語 春隣/晩冬  春近しの傍題

2 コメント

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「忍足にも (きりぎりす)
2022-04-14 07:07:05
山茶花は散り止まず」…寒い冬でした。

この頃の暑さはどうでしょう。
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山茶花は (健人)
2022-04-14 21:22:13
俳句では初冬の季語となっており、確かに咲き始めるのは11月から12月初めぐらいですが、それ以後も長く咲き続けます。掲句は散り止まない山茶花を詠んでいるので、おそらく1月以降の景色なのでしょうね。忍びにも・・・という措辞が面白く、あるあると納得してしまうような情景です。簡単な言い回しに見えますが、五七五を巧みに使った一句だと思います。
 かなり掲載が遅れたので、季節感はずれてしまいました。この一週間はホントに暑かったですが、ようやく平年並みに戻るようですね。今度は油断して風邪をひかないように。
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