失われたメディア-8cmCDシングルの世界-

50円とか100円で叩き売られている8cm CD singleを見るとついつい買ってあげたくなることはないか。私はある。

「SHAKIN' THE TREE」 Y. N'DOUR & P. GABRIEL 1989年

2006-04-05 | 
YOUSSOU N'DOUR & PETER GABRIELの洋盤8cmシングル。

ユッスー・ンドゥール&ピーター・ガブリエル。86年のガブリエルの大ヒットアルバム「SO」に参加し、一躍ワールド・ミュージック(ってヘンなネーミング!)の代表選手の位置を得たユッスー。セネガルが生んだ最大のスター・シンガーだ。タイプはちょっと違うが、ミルトン・ナシメントを聴くときに似た畏れを感じさせる深い歌声は、英米のアーティストたちとは、文字通り別世界から響いてくるようだった。

①SHAKIN' THE TREE
(PETER GABRIEL/YOUSSOU N'DOUR)
ガブリエルのベスト盤のタイトルソングにして先行シングル。「SO」ではバックに徹していたユッスーの声が前に出てきては、ガブリエルに勝ち目はない。ゆったりと歩くようなリズムに(最初は)抑え目のユッスーのコーラス、続いて静かに語りかけるようなガブリエルの声。そして、じわじわとふたりの声が力を増してくる。ふたつの個性が溶け合っているかと言えば疑問だが、それぞれわりと勝手に(かつお互いを認め合って)互角のぶつかり合いを見せてくれている、傑作だと思う。

②OLD TUCSON
(YOUSSOU N'DOUR/HABIB FAYE)
③SWEEPING THE LEAVES
(GEORGE ACOGNY/ROD BEALE/YOUSSOU N'DOUR)
あとの2曲はユッスーのソロ。ガブリエル抜きだと、リズムの自由度が上がっているしユッスーの歌声ものびのびしているのだけど、①の緊張感の魅力はやはり捨てがたい。

定価忘れた。多分タワーレコードで買った。


ガブリエルの、特に80年代に入ってからのソロ作品は、アフリカン・ビートと、西洋音楽が染みついた自分との折り合いをいかにつけていくか、という葛藤がテーマみたいなところがある。素直にアフリカのリズムを楽しむなら明らかにユッスーの方が優れているのだが、血肉とは言えないリズムを、格闘しつつ後天的に獲得していく様はある意味感動的。細野晴臣の一連の仕事にも通じる音楽の喜びが感じられる。ガブリエルの凄さは、それでいて(いい意味での)プログレテイストも感じられるところだろう。チャートアクションも絶好調だった「SO」は、私の中で「アヴァロン」や「ヨシュア・トゥリー」などと並ぶ80'sの宝石。



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