・オーストラリア人の〝開拓者魂〟(マイトシップ)の話
18世紀に始まったこの国の開拓は、決して生易しいものではなかった。過酷な気候風土の中、個人や家族など少人数では到底開拓を進める事等、出来なかったはずである。その様な状況下、見ず知らずであっても荒野で出会った時には助け合う、そうでないと人は生きて行けなかったのだ。
「助け合う」と言っても荒野での事、再び出会うことなどまずあり得ない。お返しの助けを期待するのは、無理な事だ。しかしいつか何処かで困った時に、全く別の人に助けられる事だってあるかもしれないのだ。開拓を志す人々にとって、それこそが「助け合う」と言う事が、生きるうえで大切な事であったのだ。要するに、人は荒野に於いて、他の人に優しくなれないと、生きて行けないのだ。
開拓者にとって荒野で出会う人は、〝Mate〟(「マイト」と言って、同士、仲間、友人の意味)であり、開拓者の〝Mateship〟(仲間意識、相互扶助精神)が、今現在に於いてもオーストラリア人の心の中に脈々と生きている。
私が荒野で1人ポツンとヒッチしていた時、仲間意識で乗せてくれたのであろう。私が無事にシドニーに着けたのも、オーストラリア人気質のマイトシップ(これはオーストラリア語で、英語では「メイトシップ」と言う)のお陰なのかも知れません。