厚労省の不正・腐敗<本澤二郎の「日本の風景」(3177)
<徳洲会36協定違反をなぜ黙認するのか>
従業員が50人、100人もいれば、そこの会社には労働組合ができる。雇用主の義務である。憲法は労働三権を規定、弱者である労働者の人権を保護している。近代法の約束である。ところが、日本には怪しいブラック企業がかなり存在する。その代表格が、3万数千人の職員・従業員を抱える日本最大の病院規模を誇る徳洲会である。労働組合がないための医療事故も多発している、と元オーナーの徳田虎雄元顧問の中原義正氏が、厚労省に36協定違反で告発している。
<「労働組合」がない実態を徳田虎雄元顧問が告発>
36協定を、さぶろく協定と読んで、労働法の根幹規定で知られている。時間外勤務について、雇用主と組合が協定を結ぶことを強要している。労働者の人権保障の骨格となっている大事な規定であって、違反は許されない。厚労省の任務だ。
厚労省労働基準局がまともな行政行為をしていれば、労働組合はすべての中小企業にも存在する。むろん、1000人以上の会社であれば、組合の不存在は許されない。
したがって、3万人以上もの医療従事者を抱える徳洲会グループの労働組合不存在は、誰もが想像さえ出来ないのだが、実は、間違いなくここには組合がない。一部の市民は「徳洲会は事故が多すぎるので、治療に行かないようにしている」と語っているほどだ。
救急医療病院としての便利さがあるものの、その実力は、かなり問題がある。その内部事情に詳しい人物が、36協定違反の徳洲会を告発したことに、かつては敵対関係にあった日本医師会も注目している。
告発者の中原氏は、福田赳夫副総理時代(三木内閣)の秘書も歴任、その勇気と行動力に福田本人が「熱血漢」と評した人物である。
中野四郎元国土庁長官秘書官も歴任したほか、自民党清和会秘書会幹部としても知られている。安倍晋三も清和会メンバーだから、彼の素性にも詳しい。
福田のいう「熱血漢」が、不正と腐敗の温床となっている厚労省に告発状を出したことと、早々に厚労相から自民党総務会長に横滑りした加藤勝信とも、いわく因縁めいた事情も、一部の関心事となっている。
<医療事故の元凶にも>
徳洲会病院は70余の大病院などで形成されている。世界的にも、その規模の大きさは注目を集めている。その病院関係者を動員しての、これまた大規模な選挙違反事件が摘発され、列島に衝撃を与えて、まだ日も浅い。
人間の命を守る大事な職務をしている人達が、特定候補の選挙応援に大量動員されるという珍事は、宗教団体の会員がその教団が設立した政党候補者を応援するのとやや似ているのであろうが、公職選挙法は前者を厳しく禁じている。
筆者は、この事件について「徳洲会疑獄」と称して何度も報じてきたが、その中で理解できない事実にぶつかった。それは徳洲会が、海外に銀行を所有している点である。金融問題についての研究不足に違いないが、そのうちに判明するはずである。石原慎太郎への巨額献金も注目されたが、これが検察の捜査から逃避、その理由・原因もいまだに不透明である。
ともあれ、労働組合がないための選挙応援であった。仮に、組合があれば、そうした違法行為に手を染めることはなかったろう。たとえ、そうでなかったとしても、内部告発で未然に防止できたかもしれない。
「闇のルール」で働いている医療従事者の人権と待遇について、内部の関係者も頭を痛めているようだ。事故多発に備えて、地方検事長上がりのヤメ検を顧問弁護士に起用した病院長がいたというから、これまた事故多発病院であることを裏付けている。
もはや、徳洲会病院の組合不存在を放置しておく余裕はない。36協定違反病院の放置は、働く者の人権と患者とその家族に不安を強いるもので、一刻も有余は許されない。
厚労省と徳洲会に何があったのか。メスを入れる必要があろう。
<「技能実習生」=現代の徴用工か>
今日も新移民法とも呼べるような入管法の改正案が、国会で審議されている。これまた悪法の最たるものである。
隣国では、次々と徴用工の違法判決が出て、財閥に衝撃を与えている。反省と謝罪のない歴史認識に対する極右政府への反撃でもあろう。寝た子を起こした安倍・財閥内閣への自業自得判決で、国際社会は日本政府に冷ややかだ。
筆者は、昔のことだが、中国人留学生が新聞配達をしていて交通事故死した悲劇を聞いたことがある。加害者の無理解な対応に歯ぎしりしたものである。
いままた技能実習生で命を落としたり、劣悪な労働環境と低賃金で失踪する外国人労働者の現状から、正直、マルクスの時代を想定される非常事態に胸が痛む。新移民法とも呼べる入管法改正が具体化すれば、これが一段と増大することになろう。
厚労省労働基準監督署が正常に機能せず、遊び惚けている現状では、極論かもしれないが、第二の徴用工になるのではないのか。魅力的な女性だと、やくざの性奴隷にされてしまうだろう。
<年金・障害者雇用働き方改革など怠慢極まれり>
日本国民は、国民生活に重大なかかわりを有する厚労省に、この6年以上も前から痛めつけられてきた。年金問題では、散々泣かされてきた。いまもトラブル続きのようだ。
この貴重な虎の子を、博打レベルの株式に投資している安倍内閣である。年金受給者のイライラは消えない。
最近は、障害者の雇用を義務付けた規則を、当の役所が違反していたことも発覚した。厚労省の怠慢も極まっている。
100万円の大金を使っての技能実習生の中には、事故死した例も、わかっただけでも相当な数字である。親兄弟遺族の無念は、医療事故体験者からすると、わがことのようにいたたまれない。
財閥の指令には従順な自公内閣、巨大病院の36協定違反に甘すぎる厚労省を放置しておくことは、到底許すことは出来ない。
2018年12月7日記(東京タイムズ元政治部長・政治評論家・日本記者クラブ会員)
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