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普通ここまでやるか?納税者を平気でダマす税務署の卑劣な手口
先日掲載の「恐ろしい自爆営業。元国税が明かす、かんぽより酷い税務署の実態」では、税務署員に課せられている「信じ難いノルマ」の実態を暴露した、元国税調査官で作家の大村大次郎さん。今回大村さんはメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』で、何も知らない納税者を平気で騙す税務署の「卑劣」な手口を白日の下に晒しています。
※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2019年12月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:大村大次郎(おおむら・おおじろう)
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。
税務署は平気で納税者を騙す
前回の「恐ろしい自爆営業。元国税が明かす、かんぽより酷い税務署の実態」では、税務署の調査官には追徴税のノルマがあるということを述べました。税務署の調査官は、この「追徴税ノルマ」のために法律ギリギリの方法で納税者を騙して追徴税を巻き上げるようなこともしばしばあります。
そもそも、現在の税務調査のシステムそのものに「騙し」的な要素があるのです。税務調査で申告漏れなどがあった場合、納税者は「修正申告書」を出すことになります。この修正申告というのも、実はくせものなのです。修正申告と言うのは、納税者が税務調査で指摘を受けて「前の申告は誤りがあったので修正します」と自発的に申告するものです。これって、よく考えたらおかしいと思いませんか?もし、税務調査で明らかな誤りが見つかったなら、納税者に自発的に修正させなくても、税務署自身が追徴税を課せればいいことでしょう?税務署にはそういう権限が持たされているのです。
なのに、なぜ納税者に自発的に修正させるかというと…後で、文句を言わせないためなのです。税務調査での指摘事項というのは、実はあいまいなものが多いのです。税法に照らし合わせて、「明らかに間違っている」というようなことは少ないのです。「何かおかしいけど、法律上は微妙」というものが多いのです。
たとえば、接待交際費です。知り合いと飲食してそれを接待交際費に計上した場合、その知り合いが仕事に少しでも関係するのであれば、接待交際費に計上できます。が、仕事にまったく関係ないのであれば、接待交際費にはできません。しかし、その知り合いが仕事に関係するかどうかという判断は非常に難しいものでもあります。
接待交際というのは、新しい顧客を開拓するために行うという面もありますので、今現在その知り合いと仕事上の付き合いがなくても、いずれ顧客になる場合もあります。その知り合いが仕事上の助言をくれることもありますし、ビジネスのヒントをくれたり、取引先を紹介してくれたりすることもあります。だから仕事に関係があるかどうかというのは、微妙なのです。
しかし、税務署は直接取引している相手じゃない場合は、なるべく接待交際費を否認しようと、納税者を説得しようとします。もしそういう曖昧な指摘事項を、税務署が強制的に追徴課税などをしてしまうと、納税者が反発し訴訟になったときに、覆されたりするのです。
そこで、納税者と同意の上で、納税者が自発的に申告を修正したという形をとりたがるのです。だから、もし税務調査の結果に納得が行かなければ出さないという選択肢もあるのです。税務署の指摘に納得がいかない場合は、「納得できない」と税務署に伝え、「修正申告は提出しない」とことも出来るのです。
「修正申告を出さない」という手もある
前項では、修正申告を出さないということもできると述べましたが、そのことについてもう少し詳しく説明しましょう。税務調査では、調査官は修正申告を素早く出してくれるように求めてきます。それは、相手によく考えさせないためなのです。前述したように調査官は、ノルマに追われ時間に追われているので、調査を早く終わらせたいのは調査官の方なんです。
税務調査においては修正申告をどうするかが、もっとも大事なことです。納税者にとっては追徴税がいくらになるかという肝の事項です。このときに、調査官の指摘に納得がいかなければ、決して簡単にひきさがってはいけません。必ずしも税務調査の期間内に修正申告の内容を決めなくてもいいのです。多少長引いても、自分が納得のいく形で、修正申告は出したいものです。
だから、本当に納得がいかない場合は、修正申告を出さないという方法もアリなのです。そして、「修正申告を出さない」という態度を見せることは、交渉の上でも効果があります。
もし納税者が修正申告を出さなかった場合、調査官は税務署に持ち帰って、更正をするかどうか検討します。更正というのは、「あなたの申告は間違っていたので、これだけの追徴税を払いなさい」と税務署が課税することです。強制的に言ってくるということは、税務署としては絶対に間違いは許されないことになります。
逆にいえば、曖昧なもの、グレーゾーンのものなどは、なかなか更正はできないのです。もし調査官が指摘内容に自信がなければ、指摘事項を変更したり、追徴税額を減額してくることもあります。「税金を負けるから、早く修正申告をだしてくれ」ということです。だから納得がいかないのに、言われるままに修正申告を出すのは、非常に損なことなのです。
調査官の奥の手「始末書」とは
また税務署の調査官は、もっと汚いの騙しの手口も持っています。その代表的なものが「始末書」です。
始末書というのは、何か不祥事をしでかしたときに、監督的、上司的な立場の人に出す反省文のようものです。税務署の調査官は、この始末書というものを非常にずる賢く使います。
納税者が不正に近いことをしていたときに、調査官は「始末書を出してください」と言います。そして納税者は「深く反省していますので、穏便にお願いします」ということを書いて税務署に提出するのです。
たとえば、次のような感じです。
「この売上計上漏れは、うっかりミスではなく、わざとやったんでしょう?」
と調査官が納税者を問い詰めます。納税者は、まともに言い返せません。そして調査官は
「こういうケースは、税務署としては厳しく対処しているところですが、ここは穏便に済ませてあげますので、始末書を書いてください」
それを聞いた納税者は、始末書を書けば、処分が軽くなるとでも思い、調査官に言われた通りの文言で始末書を書いてしまうのです。
しかしこの始末書が非常にクセモノなのです。というのは、納税者は始末書を書いても得にはならない、むしろ大きな損になるのです。なぜかというと、始末書を出したからと言って、税務署が穏便に済ましてくれることはないからです。むしろ始末書を出したことによって、「自分が悪かった」ということを認めたことになり、重加算税を課せられる羽目になってしまうのです。
実は調査官が始末書を要求するケースというのは、「不正かどうか明確な物証に乏しい場合」なのです。重加算税を課すときというのは、納税者側に明確な不正があったときだけです。しかし、税務調査での指摘事項というのは不正かどうかはっきりしないことが多いものです。そのため調査官は、納税者側に始末書を書かせることで「不正の意図があった」という証明にするのです。「納税者は不正を認め、始末書を書いた」ということにしたいのです。
つまり、この始末書のために、納税者は逆に重加算税を課せられる羽目になってしまうのです。税務署の調査官というのは、税務調査で重加算税を取ることがもっとも大きい手柄です。だから、なるべく重加算税を取りたいのです。そして明確な不正ではないものでも、始末書を出させて、不正の扱いにしてしまうのです。この巧妙なトリックは、税務署の常套手段であり、官庁の常套手段でもあります。
日本の官庁では、よく「一筆書いてください」などということを行います。それは処分を軽くするモノではありません。どんな処分をしても、あとで市民に文句を言わせないためなのです。くれぐれも始末書を書いたら、穏便に済ませてもらえるなどと思わないことです。また税務署が「始末書を書け」といってきたときは、税務署の方が分が悪いときだということを覚えておきましょう。
「税金の払い過ぎ」は黙殺する
税務署の調査官が違法に近い方法で税務調査をしている、ということのわかりやすい例を一つご紹介しましょう。
それは、納税者が税金を「払い過ぎた」ときの対処方法です。税務調査というのは、本来の目的な適正な申告をしているかどうかのチェックです。申告に誤りがあればそれを是正するのが目的であって、追徴税を稼ぐことではありません。
申告の誤りには二種類あります。申告納税額が少なすぎる場合と、申告納税額が多すぎる場合です。税務調査をしたとき発覚するのは、申告納税額が少なすぎる場合ばかりではありません。たまに多すぎる場合もあります。申告額が多すぎたとき、調査官はどうすると思いますか?なんと黙殺するのです。
これって、実は限りなく違法に近いんですよ。税法では、「税務調査では過少申告のときだけ指導しろ」などとはまったく書いてありません。法律的には、過少であろうと過大であろうと、間違いが見つかった場合は正さなくてはならない、となっています。つまり、過大申告だった場合は、本来は税金を返さなくてはならないはずなのです。それは追徴税を課すことと同じように、大事な税務署の仕事なのです。
しかし、税務署の中で、これをおかしいと思っている人はほとんどいません。税務署の中では、「健全な税務行政」などは仕事の目的ではなく、ただ追徴税を取れればいいと思っているのです。
このように非常に偏重的な考えが、国税の中を支配しているのですが、彼らはそれが偏った考えだとは全然思っていないのです。かくいう私も、国税をやめるまでは、そういうことにあまり疑問を持ったことはありません。税金を多く取ることが自分の仕事だと信じていました。国税をやめてはじめて、非常に偏った価値観を持った組織だったんだ、と気づいたんです。(メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』より一部抜粋)
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