二つの風景 宮嶋康彦

朝日新聞「こころの風景」
過去に最も印象に残った風景は?と聞かれ意外な景色が目の前を
よぎった。母と別れた港の風景、北朝鮮へ帰っていくクラスメ－トを
大勢で見送った日の情景、かねこ君が夏休みの沼に沈んだまま
戻らなかった水面も。
　私も同じような景色を時々思い出します。
　やはり北朝鮮へ帰っていく友人を汽車の線路沿いに並んで
　クラス全員で手を振ったこと。
　一緒に海水浴に行った職場の人が溺れて戻って来なかった海岸。
　喪失の記憶は人の心の深層にいつまでも残るものなのでしょう。