不法行為責任とは
不法行為責任とは、他人の権利や法的利益を侵害する行為を行い、これによって損害を生じさせた者が、その損害を賠償する責任を負うことを指します(民法709条)。要件としては以下が挙げられます:
- 故意または過失があること
- 他人の権利や利益を侵害したこと
- その結果、損害が発生したこと
- 行為と損害の間に因果関係があること
不法行為には、一般不法行為と特殊不法行為(例えば、使用者責任、共同不法行為など)があります。
不法行為責任に関する判例10件
-
最高裁判所昭和48年9月20日判決(プライバシー侵害事件)
- 他人の私生活に関する情報を無断で公表したことが、プライバシー権を侵害し、不法行為責任が認められた事案。
-
最高裁判所昭和44年6月25日判決(判例集:民集23巻7号1346頁)
- 共同不法行為に関する事案。複数人が共同して他人に損害を与えた場合、全員が連帯して損害賠償責任を負うとされた。
-
東京地裁平成16年12月24日判決(ライブドア事件)
- ネット掲示板への投稿が名誉毀損に該当し、不法行為責任が認められた事案。発信者情報開示請求の基準も示された。
-
最高裁判所昭和50年10月30日判決(環境侵害事案)
- 工場の操業により周囲住民の生活環境が著しく損なわれた事案で、工場主に対する不法行為責任が認められた。
-
最高裁判所平成19年10月19日判決(嫌がらせメール事件)
- 相手に対する執拗な嫌がらせメール送信が、精神的苦痛を与えたとして損害賠償責任が認められた事案。
-
大阪地裁平成7年11月30日判決(セクハラ事件)
- 企業内での上司による性的嫌がらせ行為が職場環境を著しく悪化させたとされ、企業も安全配慮義務違反で責任を負うとされた事例。
-
最高裁判所昭和57年3月30日判決(信書開封事件)
- 他人の手紙を無断で開封し、その内容を第三者に漏らしたことが、名誉感情を侵害したとして不法行為責任が認められた。
-
最高裁判所平成18年10月26日判決(過労死事案)
- 長時間労働を放置した結果、労働者が過労死した事案。会社の安全配慮義務違反が問われ、損害賠償が命じられた。
-
福岡高裁昭和61年12月18日判決(いじめによる自殺事案)
- 学校でのいじめが原因で生徒が自殺した事案。学校の教員や管理者の注意義務違反が認められた。
-
東京地裁平成30年4月18日判決(インターネット名誉毀損事件)
- ブログやSNSでの誹謗中傷が名誉毀損として認められ、発信者に賠償責任が課された事案。
これらの判例は、不法行為責任の適用範囲や解釈において重要な基準を示しています。特に名誉毀損やプライバシー侵害、職場環境における安全配慮義務違反など、現代社会における事例が含まれています。