「社会的評価を低下させる」とは具体的にどのようなものを指すのか?どの程度低下させると名誉毀損となるのか示してほしい。
「社会的評価を低下させる」とは、個人や法人に対して他者が抱く評価や信用、信頼、尊敬といった社会的な位置付けが損なわれることを指します。これは、名誉毀損の判断基準において重要な要素です。
以下に具体例と、どの程度低下すると名誉毀損が成立するかの基準を示します。
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### **具体例:「社会的評価を低下させる」内容**
1. **犯罪歴の暴露**
- 根拠がないのに特定の人物を「犯罪者」と決めつける。
- 例: 「〇〇さんは窃盗で逮捕された」という虚偽の主張。
2. **不道徳な行為の指摘**
- 社会的に非難される行為をしたと指摘する。
- 例: 「不倫をしている」「詐欺をしている」という発言。
3. **職業的信用の毀損**
- 職業や仕事に直接影響を与える発言や情報。
- 例: 「この医者は誤診が多い」「この会社は違法行為をしている」。
4. **属性や偏見を利用した侮辱**
- 特定の偏見に基づいて人格を否定する。
- 例: 「あの人は暴力団関係者」「差別主義者だ」といった根拠のない表現。
5. **経済的信用の失墜**
- 法人や企業の経済的信用を失墜させる内容。
- 例: 「この企業は倒産寸前だ」といった発言。
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### **どの程度の低下で名誉毀損となるか?**
名誉毀損の成立には、次のような基準が考慮されます。
1. **社会的評価が客観的に低下するか**
- 被害者本人が不快に思うだけでは不十分で、発言や表現が一般的な第三者の目に触れた際、社会的に信用や評価が低下すると判断される必要があります。
2. **特定の属性や職業に関連する評価が低下するか**
- 例えば、医師としての信用を低下させる発言は、その医師の社会的評価を直接低下させるため、名誉毀損が成立しやすい。
3. **公然性**
- 発言が公然とされたかどうかも重要です。特定の相手に直接的に伝えただけでは名誉毀損に該当しない場合があります。
4. **内容が事実であるか否か**
- 発言や表現が真実でない場合は、名誉毀損が成立しやすくなります。ただし、真実でもその表現が公共性や公益性を欠く場合、名誉毀損が成立することがあります。
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### **名誉毀損が成立しない場合**
名誉毀損が成立しない例としては、以下のようなケースがあります。
1. **社会的評価に影響を与えない表現**
- 例: 「彼は怠け者だ」といった主観的評価は、社会的信用を大幅に低下させるとはいえないため、名誉毀損には該当しない場合があります。
2. **公共性・公益性が認められる場合**
- 公共の利益のために必要な情報発信が行われた場合、たとえ社会的評価を低下させるものであっても、名誉毀損が成立しない場合があります。
3. **意見や論評の範囲内**
- 批判や論評が許容される範囲内に収まる場合は、名誉毀損に該当しません。
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### **判例による基準**
- **最高裁判決(昭和31年6月22日)**
→「名誉毀損は、被害者の社会的評価を低下させる行為が、第三者によって知覚されることを要する」としています。
- **最高裁判決(昭和44年6月25日)**
→「社会的評価を低下させる表現であっても、表現内容に公共性があり、公益を図る目的がある場合は違法性が阻却される」としています。
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### **まとめ**
- **具体的な内容**: 「犯罪者」「不倫」「暴力団関係者」など、根拠のない表現で社会的評価を低下させる。
- **程度の基準**: 一般的な第三者がその発言によって評価を低下させると考える程度。
- **重要な要素**: 公然性、内容の真実性、公共性・公益性。
名誉毀損の成否は具体的な状況によりますが、基本的には「社会的信用や評判が客観的に低下する」と認められた場合に成立します。