新潟久紀ブログ版retrospective

財政課8「県職員勤めで最大級の惨劇(その1)」編

●県職員勤めで最大級の惨劇(その1)

 財政課総務班への転入と同時に言い渡された2件の特命について、それぞれが一応の決着を見た12月以降は、私はプライベートでは絶好調であった。
 もともと私が配属されていた経理担当は、担当課分の予算の執行管理や決算の取りまとめなど極めて定型的で経常的な業務を行うもので、残業は少なく計画的に日程調整ができたので、着任早々、新潟では貴重な春先の気候の良い頃から、毎週末と言えるほど公営のコートを予約して妻や知人らとテニスに興じたり、子供を連れて屋内プールに通ったりしていた。旅費問題等調査班など前職までの残業漬けの日々を取り戻すかのような生活ぶりだった。なので、特命から解かれて以降に迎えた冬場はスキー三昧になり、週末に子供を連れて行ったり、平日でも近くの山に良い新雪が降ったと知れば、有給休暇を取得して、スキー板を車に積んで高速道路でスキー場に馳せ参じ、人気の少ないゲレンデを十分満喫していたものだ
 そんな出先機関なみの融通の利く生活が続く中で、"政策的に難易度の高い仕事で力を発揮したい"というかつての考え方が次第に鈍化していき、仕事そのものはあまり面白くなくとも、ワークライフバランスというか、むしろ、私生活充実の暮らしを続けていくのもアリかな…と本気で思えてきたものだ。企業局、農政企画課、人事課行革班、新行政推進室…と、各々の職場で"前代未聞"と呼ばれるような懸案に遭遇して、へたるほど苦労はさせられたが、後から思えばそれなりにやりがいや達成感があった日々。それは、役所勤めとしてはむしろ異例続きであり、かつて旧友に言われたように、今の暮らしこそが"役所勤めらしい"のかもしれない…と本気で思うようになっていた。出先機関に異動した時は"コペルニクス的転回"と思ったが、この度の気持ちを表すならば"パラダイムシフト"だ。
 まったりした生活に馴染みきっていた1月。係長から、臨時の大きなイベントが催されることとなり全庁的にスタッフの動員が行われるので、割当てへの対応として当班からは私が参加してくれないかとの打診があった。やはり暇そうにしていたので選ばれたのであろう。聞けば、毎年全国を巡回して開催している皇室関連のイベントが本県開催の順番となり、"かしこき辺りの方"がお見えになる予定になったのだという。いわゆる「行啓」だ。粗相があってはならないので、行程の微に入り細に亘り対応していく体制が組まれることとなり、その頭数の確保のために全庁からスタッフが集められるというのだ。
 仕事に余裕もあるし、目新しいことに少し飢えていた私は「わかりました」と即答。数日後に全庁からの動員者を集めた説明会に出席すると、私は、行啓の道中に参列して頂く県内在住のお偉方の面々を当日お招きし、待機、参列、解散までを誘導管理する「送迎班」のスタッフに割り当てられた。皇室のお方に直接お付きするということでないので大したことではなさそうだ。少し気を抜いて事務局担当の話しを聞いていたが、説明者は鬼気迫るような緊張感を示している。本県における行啓はとても久しぶりで、参考とできる前例情報が殆どないためらしい。事の性質上、宮内庁のリードで全国一律の方法で我々スタッフも指揮管理されるのだろうから、余り考え過ぎない方が良いのではと、緊張を滲ませ過ぎる事務局を気の毒に思ったものだ。しかし、いよいよジンクスが無くなるなあと思っていた、私の県庁勤めに付いて回ってきた"前代未聞"が、こんな所に待ち構えているとは…その時は知る由も無かったのだ。
 行啓の日程は4月下旬の金曜土曜の二日間。皇太子ご夫妻が新幹線で来県された時から、何カ所かの県内視察、宿泊、メイン行事、そして新幹線で離県されるまでが、行啓対応となる。皇太子殿下は即位されてから本県にお越しになるのは初めてであり、特に妃殿下は本県にゆかりのあり人気の高いお方。皇室や行啓を各地に見に行く"おっかけ"というものが結構な人数いるらしいが、それ以外にも県内住民が相当数、行事の場面場面で見物に集まってきそうだ。皇宮警察と県警が警護や治安にあたるが万が一ということに気を抜けないかもしれない。私が当日の管理を担当する「県内の偉い方々の参列」は、皇太子ご夫妻の歩く目の前に並ぶのだから。周辺に押し寄せるであろう県民等による大勢の衆目の下で、終始つつがなくお行儀良く事が運ばれなくてはならない。行程の各場面での入念なリハーサルを重ねていく度に、確かに緊張して臨まねばならない"現場"だなあとの意識が高まってきた。

(「財政課8「県職員勤めで最大級の惨劇(その1)」編」終わり。「財政課9「県職員勤めで最大級の惨劇(その2)」編」に続きます。)
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