のどかなケイバ

一口馬主やってます

女神「前方の敵、後方の敵」1

2017-08-04 09:16:39 | 小説
 女神隊員はテレストリアルガード基地内にいるときは、ウィッグだけで特徴的な単眼を隠してましたが、ここ数日はフルフェイスのヘルメットをかぶってました。実はフルフェイスのヘルメットに新機能が付いたのです。それは翻訳機。これまでは言葉の翻訳機能が付いてましたが、新規に付いた翻訳機は文字の翻訳機です。このヘルメット越しに日本語や英語を読むと、女神隊員のよく知る文字に瞬時に翻訳されるのです。翻訳された文字はヘルメットのシールドの内側に映し出されるシステムになってました。
 この機能は女神隊員の世界を大きく広げました。もう毎日雑誌や新聞を読んでます。読んでる内容は自分の記事ばかり。ま、批判的な記事も散見されますが、そんなのは無視して、ただひたすら自分を肯定してる記事ばかりを読んでました。フルフェイスのヘルメットのせいで見えないのですが、そのときの女神隊員の顔は、かなりニコニコしてると思います。
 そのうち女神隊員はインターネットを見るようになり、ネット通販にも興味を持つようになりました。いつも使ってる白い帽子に飽きたのか、他の巨大なつばの帽子を探してるようです。
 しかし、せっかく見られるようになったネット通販サイトですが、女神隊員はそれを買うことができません。懲罰的意味合いをこめて、最初の6か月分の給料は、全部じょんのび家族に進呈することにしたからです。女神隊員は今更「あんな約束するんじゃなかった」と悔やんでました。
 ある日海老名隊員が後ろからそーっと女神隊員がやってるインターネットを見たら、そこはアニメのコスプレの衣装を販売するホームページでした。女神隊員が気になってる帽子は、こ○す○のめ○みんの帽子とす○○かのク○リの帽子でした。リアル中2で重度な中二病の海老名隊員は、なんかうれしくなっちゃいました。
 なお、テレストリアルガードは正式発表してないのですが、ネットの世界では女神隊員は宇宙難民船唯一の生き残りで、しかも単眼だということがなんとなくバレてるようです。

 その日はふつーの日でした。晴天の午前中。テレストリアルガードのオペレーションルームには上溝隊員がいます。一応レーダーのスコープを見てますが、今まで第一にこのスコープに未確認飛行物体が映ったことはありません。ちなみに、女神隊員が乗ってきた宇宙船の地球墜落時は、スペースステーションJ1からの通報で知りました。ま、そんなわけで、上溝隊員はのんびりと雑誌を読んでます。
 オペレーションルームの隣室のサブオペレーションルームには隊長、橋本隊員、倉見隊員、寒川隊員、女神隊員がいます。なお、オペレーションルームとサブオペレーションルームの間の扉は常時開いてるので、実質1つの部屋です。
 隊長はいつものように録画しておいた深夜アニメを見ています。橋本隊員はパチンコと競馬で泥沼にはまってしまった反省から、今は将棋に興味を移そうとしています。そんなわけで今は、本を片手に詰将棋をやってました。倉見隊員と寒川隊員はそれぞれのノートパソコンでインターネットです。女神隊員もヘルメットをかぶってインターネットをしてました。
 こんな怠惰な日常を破壊する事象が突然起きました。緊急アラームが鳴ったのです。上溝隊員は慌ててレーダースコープを見ました。それ以外の隊員は上溝隊員に注目しました。
「四次元レーダーに反応です! 今未確認飛行物体が大気圏内に突入しました!」
 これに隊長が応えました。
「他のレーダーは反応してないのか?」
「はい!」
 橋本隊員が隊長に話しかけました。
「四次元レーダーだけに反応してるってことは、認識ステルス機能がついた飛行物体?」
「ああ、そうだろうなあ・・・」
 隊長はちょっと考えましたが、すぐに命令です。
「よし、全員出動!」
「はい!」

 青空の下、カマボコ型の格納庫から2機のストーク号が出てきました。先頭のストーク号のコックピット。ここには隊長と寒川隊員、後部補助席には女神隊員が乗ってます。寒川隊員は後方を見て、
「あれ、橋本さんたちもストーク号ですか?」
 それに隊長が応えました。
「ヘロン号には四次元レーダーは装着してないからな」
「それでストーク号ですか」
 2機のストーク号が浮上。コックピット内の隊長の命令です。
「ジャンプ!」
 それに寒川隊員が応えました。
「了解!」
 もう1機のストーク号のコックピットの橋本隊員も応えました。
「了解!」
 2機のストーク号がふっと消えました。

 上空に2機のストーク号がこつ然と現れました。かなりの上空のようです。そのコックピット内です。寒川隊員の発言です。
「もうすぐ目の前を未確認飛行物体が通過します」
 隊長が応えました。
「よーし、ビーム砲砲塔を出せ!」
「はい!」
 ストーク号の上部から2基の砲塔が出現。もう1機のストーク号からも2基の砲塔が出ました。隊長はトリガーに手をかけました。自動照準装置がピーっと鳴りました。
「今だ!」
 隊長がトリガーを引くと、2基のビーム砲からビームが発射。それが上空に向かって放たれましたが、特に変化はなく、素通りしていきました。隊長はちょっと悔しそうです。
「ちっ! はずしたか・・・」
 が、もう1機のストーク号が放ったビーム砲がヒットしたようです。空中で火花が散ったのです。隊長は思わず感嘆の声を挙げました。
「よーし、ナイス!」
 トリガーを握ってる倉見隊員です。
「ふっ、これくらい簡単ですよ」
 寒川隊員はレーダースコープを見て、
「でも、まだ飛んでます!」
「ち、致命傷じゃなかったか・・・ よし、追いかけるぞ!」
 寒川隊員と橋本隊員がそれに応えました。
「了解!」
 2機のストーク号が見えない敵を追って、降下していきます。再びコックピット内の隊長と寒川隊員の会話です。
「くそーっ、この角度でビーム砲を撃ったら、地上に被害が出てしまうなぁ・・・」
「しかし、やつら、なんなんでしょうねぇ?・・・ ユミル星人は認識ステルス機能は持ってないはずだし・・・ もしや、ヴィーヴル?」
「うちらの窮地を救ってくれた軍隊をあまり悪く言いたくはないが・・・ この技術、宇宙ではどれくらい広がってるんだ?」
 と、ここで無線が鳴りました。上溝隊員です。
「隊長、ストーク号の後ろに国籍不明機が1機あります」
「何?」
「どうやら宇宙から未確認飛行物体を追い駆けてきたようです。地球上の飛行物体のようですが、どの国に所属する飛行物体なのかまでは不明です!」
 寒川隊員が隊長に話しかけました。
「どの国の飛行物体なんでしょうか?・・・」
 隊長はそれには応えませんでした。何か考えてるようです。

 一方こちらは見えない宇宙船のコックピットです。円卓のようなコンソールに4人が十字に座ってます。どこから来た宇宙人なのかは不明ですが、かなり地球人に姿形が酷似した宇宙人です。全身黒っぽい金属色の服を着ています。とりあえず4人をA・B・C・Dとしましょう。まずBがAに話かけました。
「ダメです。ついてきます!」
「くそーっ、やつら、オレたちの認識ステルス機能を見破る機能を持ってるのか?」
 今度はCの発言。
「まもなく地上です」
 頭上のスクリーンの映像には、広い原野が続いてます。中には道路もあり、家が点々と建ってます。再びAの発言。
「くそーっ、山か谷はないのか?」
 ここでDが立ち上がりました。
「自分が行きます!」
「いいのか?」
「はい!」
 Aはちょっと考え、それから発言しました。
「じゃ、頼む」