1時間後、テレストリアルガード専門輸送機ペリカン号がテレストリアルガードの空港にタッチダウンしました。ペリカン号はスペースシャトルのような機体です。ペリカン号は滑走路を走ってきて、カマボコ型の格納庫の横に止まりました。それを3階建ての建物の3階から見ている3つの人影があります。上溝隊員、海老名隊員、そしてその後ろに立っている女神隊員です。女神隊員の頭部には、前髪のウィッグしかありません。ペリカン号の背は高く、3人が立ってる場所よりも高いようです。海老名隊員はそれを見上げて、
「いつ以来かなあ、ペリカン号がここに来るのは?」
それに上溝隊員が応えました。
「今年に入って初めてね」
女神隊員は黙ってその会話を聞いてました。
ペリカン号の前に入谷隊長、宮山隊員、番田隊員が立ちました。その側で香川隊長と橋本隊員が、2人のJ1の隊員(ペリカン号乗員)と軍隊式あいさつをしています。
それを遠くから見ている女神隊員。女神隊員は今あの場所にテレポーテーションして、巨大化して、あの3人を踏み潰したい気分になってます。もちろんそんなことはできません。そんなことしたらテレストリアルガードクビになる上に、集中攻撃を喰らってしまいます。もう痛い思いはまっぴら御免。女神隊員はまだ自分の命がかわいいのです。
「じゃあな!」
と言うと、入谷隊長、宮山隊員、番田隊員はペリカン号に向かって歩き始めました。
「ちょっと待ってくれ」
それを言ったのは香川隊長でした。香川隊長は入谷隊長の側に行き、横目でペリカン号の乗員2人を見ました。
「さっきの話の続きだが・・・ あの2人は謝罪派か? それとも暗殺派か?」
「さあな。忘れた」
「そっか」
3人は再び歩き始めました。香川隊長はその3人を見送りながら、ぽつりと言いました。
「もし謝罪派だったら、今のうち言っとく。すまないことをしたな」
ペリカン号が滑走路を走り始めました。そしてそのまま宙へ。海老名隊員が上溝隊員の目を見上げました。
「行きましょっか」
上溝隊員はうなずきました。2人は部屋を出て行きます。が、女神隊員はその場に立ったまま。海老名隊員は振り返り、
「女神さん、行きましょ」
女神隊員は黙って振り返りました。
廊下です。上溝隊員と海老名隊員が歩いてます。その少し後ろを女神隊員が歩いてます。と、海老名隊員はふと何かを感じました。で、立ち止まりました。その顔は青ざめてます。上溝隊員がそれに気づき、立ち止まりました。
「ん、どうしたの?」
「い、いや、なんでもないですよ」
上溝隊員は頭に?を浮かべましたが、再び歩き始めました。でも、海老名隊員はその場に突っ立ったままです。女神隊員も海老名隊員には何も気にも止めずに行ってしまいました。当の海老名隊員ですが、かなり深刻なことを考えてるようです。
それからどれくらい経ったのでしょうか? 女神隊員は自室でベッドの上で、体育座りで小さくなってました。頭には前髪のウィッグがありません。特徴的な単眼が丸見えです。何か思い詰めてます。と、突然ベッドから降り、立ち上がりました。そして一つ眼を閉じました。テレポーテーションをする気です。
が、ここで自動ドアが開きました。そこには海老名隊員が立ってました。
「女神さん、行ってはいけません!」
「あは、なんのこと?」
女神隊員はすっとぼけました。
「今あなたがしようとしてることを言ってもいいですか? ペリカン号のところまでテレポーテーションして、ペリカン号を思いっきり殴って壊して、またここにテレポーテーションして帰ってくる」
それはビンゴでした。「さすが千里眼の海老名さん」と女神隊員は頭の中で笑いました。が、すぐに真顔になり、
「海老名さん、行かせてください! 私、もう我慢できない!」
と大声で訴えました。
「そんなことしてもバレますよ。地球の観測機器は女神さんの想像をはるかに超えてますから!」
「もしバレたら、巨大化して、できるだけたくさん壊して死ぬ! もうその覚悟はできてるから!」
2人の間に微妙な時間が流れました。その静寂を破ったのは海老名隊員でした。海老名隊員はゆっくりとしゃべり始めました。
「・・・女神さん、もうちょっと待ってください。隊長はあの3人を殺す気なんです」
それを聞いて女神隊員は驚きました。
「だから、女神さんは何もしないでださい・・・」
と言うと、海老名隊員の両目から涙が流れてきました。女神隊員はそれを見て驚きました。
「え?」
海老名隊員は泣きだしてしまいました。
「隊長は自分の命と引き換えに、あの3人を殺す気なんです!」
ここはサブオペレーションルームです。隊長はイスに座って目の前の壁の大きな穴を見てます。で、なんとなく苦笑してしまいました。そしてオペレーションルームの上溝隊員に話しかけました。
「上溝隊員」
上溝隊員は振り返り、
「はい」
「すまないが、大事な連絡をしなくっちゃいけないんだ。10分ばかし退席してくれないか」
「あ、はい・・・」
上溝隊員は立って、自動ドアから出ていきました。隊長はそれを見て、次に壁に開いた巨大な穴を見ました。人1人楽々通れる空間。剥き出しになった鉄筋は切断され、切断面にはビニールテープが巻かれてます。
「ふっ、こうなるとドアの鍵も意味がなくなるな」
隊長は巾着のような小さな布製の小袋を取り出し、それをテーブルの上でひっくり返しました。すると小さな石ころが飛び出し、テーブルの上を転がりました。そう、あの小石です。隊長はその小石を握ると、その拳を胸に置きました。そしてそのまま瞑想にふけりました。
ここは地球はるか上空、ペリカン号が飛んでます。そのコックピットです。メインの席は横に2座席で、先ほどの2人が操縦してます。その1人が発言しました。
「まもなく大気圏を脱出します」
その後方では入谷隊長、宮山隊員、番田隊員が補助席に座ってます。このうち、宮山隊員と番田隊員が会話してます。まずは番田隊員の発言から。
「あ~あ、オレたち、クビかなあ・・・」
それに宮山隊員が応えました。
「いや~ まだチャンスはあるさ」
「そりゃ、お前にはまだチャンスがあるだろうよ。なんてったって元総理大臣の孫だし」
「あは、次の仕事が見つかったら、紹介してやるよ」
「そうしてもらえるとうれしいなあ」
2人は笑顔です。と、ここで2人は入谷隊員の異変に気づきました。
「ん、隊長?」
隊長の顔は恐怖に引きつってます。
「ああ・・・」
それを見て宮山隊員が、
「どうしたんですか?」
「お、お前、あれが見えないのか?」
隊長はまっすぐ前を見て、そう言いました。宮山隊員もまっすぐ前を見ましたが、何もありません。
「ええ? 別に何もありませんけど?」
しかし、隊長の眼には見えてました。真っ黒いマントを着て、そのマントと一体になったフードをかぶってる男。その手には死神の鎌が握られてます。フロントガラスの外側にそいつは立ってるのです。隊長は震えてます。
「な、なんなんだ、こいつは?」
今度は番田隊員が話しかけました。
「隊長、何もいませんって!」
怪物はフードを取りました。その顔は一つ眼のガイコツでした。隊長はついに悲鳴をあげました。
「うぎゃーっ!」
隊長はレーザーガンを取り出しました。それを見て宮山隊員と番田隊員が慌てました。
「隊長、辞めてください!」
2人は力ずくでレーザーガンを取り上げようとしましたが、入谷隊長はレーザーガンを離しません。と、怪物はいつの間にかフロントガラスの内側に立ってました。入谷隊長のすぐ目の前です。怪物は鎌を大きく振り上げました。
「やめろーっ!」
そう言うと、隊長はレーザーガンを発射。その光線がフロントガラスを貫通。宮山隊員と番田隊員の顔が絶望的になりました。
「ああ・・・」
地球の縁で何かがピカーっと光りました。
「いつ以来かなあ、ペリカン号がここに来るのは?」
それに上溝隊員が応えました。
「今年に入って初めてね」
女神隊員は黙ってその会話を聞いてました。
ペリカン号の前に入谷隊長、宮山隊員、番田隊員が立ちました。その側で香川隊長と橋本隊員が、2人のJ1の隊員(ペリカン号乗員)と軍隊式あいさつをしています。
それを遠くから見ている女神隊員。女神隊員は今あの場所にテレポーテーションして、巨大化して、あの3人を踏み潰したい気分になってます。もちろんそんなことはできません。そんなことしたらテレストリアルガードクビになる上に、集中攻撃を喰らってしまいます。もう痛い思いはまっぴら御免。女神隊員はまだ自分の命がかわいいのです。
「じゃあな!」
と言うと、入谷隊長、宮山隊員、番田隊員はペリカン号に向かって歩き始めました。
「ちょっと待ってくれ」
それを言ったのは香川隊長でした。香川隊長は入谷隊長の側に行き、横目でペリカン号の乗員2人を見ました。
「さっきの話の続きだが・・・ あの2人は謝罪派か? それとも暗殺派か?」
「さあな。忘れた」
「そっか」
3人は再び歩き始めました。香川隊長はその3人を見送りながら、ぽつりと言いました。
「もし謝罪派だったら、今のうち言っとく。すまないことをしたな」
ペリカン号が滑走路を走り始めました。そしてそのまま宙へ。海老名隊員が上溝隊員の目を見上げました。
「行きましょっか」
上溝隊員はうなずきました。2人は部屋を出て行きます。が、女神隊員はその場に立ったまま。海老名隊員は振り返り、
「女神さん、行きましょ」
女神隊員は黙って振り返りました。
廊下です。上溝隊員と海老名隊員が歩いてます。その少し後ろを女神隊員が歩いてます。と、海老名隊員はふと何かを感じました。で、立ち止まりました。その顔は青ざめてます。上溝隊員がそれに気づき、立ち止まりました。
「ん、どうしたの?」
「い、いや、なんでもないですよ」
上溝隊員は頭に?を浮かべましたが、再び歩き始めました。でも、海老名隊員はその場に突っ立ったままです。女神隊員も海老名隊員には何も気にも止めずに行ってしまいました。当の海老名隊員ですが、かなり深刻なことを考えてるようです。
それからどれくらい経ったのでしょうか? 女神隊員は自室でベッドの上で、体育座りで小さくなってました。頭には前髪のウィッグがありません。特徴的な単眼が丸見えです。何か思い詰めてます。と、突然ベッドから降り、立ち上がりました。そして一つ眼を閉じました。テレポーテーションをする気です。
が、ここで自動ドアが開きました。そこには海老名隊員が立ってました。
「女神さん、行ってはいけません!」
「あは、なんのこと?」
女神隊員はすっとぼけました。
「今あなたがしようとしてることを言ってもいいですか? ペリカン号のところまでテレポーテーションして、ペリカン号を思いっきり殴って壊して、またここにテレポーテーションして帰ってくる」
それはビンゴでした。「さすが千里眼の海老名さん」と女神隊員は頭の中で笑いました。が、すぐに真顔になり、
「海老名さん、行かせてください! 私、もう我慢できない!」
と大声で訴えました。
「そんなことしてもバレますよ。地球の観測機器は女神さんの想像をはるかに超えてますから!」
「もしバレたら、巨大化して、できるだけたくさん壊して死ぬ! もうその覚悟はできてるから!」
2人の間に微妙な時間が流れました。その静寂を破ったのは海老名隊員でした。海老名隊員はゆっくりとしゃべり始めました。
「・・・女神さん、もうちょっと待ってください。隊長はあの3人を殺す気なんです」
それを聞いて女神隊員は驚きました。
「だから、女神さんは何もしないでださい・・・」
と言うと、海老名隊員の両目から涙が流れてきました。女神隊員はそれを見て驚きました。
「え?」
海老名隊員は泣きだしてしまいました。
「隊長は自分の命と引き換えに、あの3人を殺す気なんです!」
ここはサブオペレーションルームです。隊長はイスに座って目の前の壁の大きな穴を見てます。で、なんとなく苦笑してしまいました。そしてオペレーションルームの上溝隊員に話しかけました。
「上溝隊員」
上溝隊員は振り返り、
「はい」
「すまないが、大事な連絡をしなくっちゃいけないんだ。10分ばかし退席してくれないか」
「あ、はい・・・」
上溝隊員は立って、自動ドアから出ていきました。隊長はそれを見て、次に壁に開いた巨大な穴を見ました。人1人楽々通れる空間。剥き出しになった鉄筋は切断され、切断面にはビニールテープが巻かれてます。
「ふっ、こうなるとドアの鍵も意味がなくなるな」
隊長は巾着のような小さな布製の小袋を取り出し、それをテーブルの上でひっくり返しました。すると小さな石ころが飛び出し、テーブルの上を転がりました。そう、あの小石です。隊長はその小石を握ると、その拳を胸に置きました。そしてそのまま瞑想にふけりました。
ここは地球はるか上空、ペリカン号が飛んでます。そのコックピットです。メインの席は横に2座席で、先ほどの2人が操縦してます。その1人が発言しました。
「まもなく大気圏を脱出します」
その後方では入谷隊長、宮山隊員、番田隊員が補助席に座ってます。このうち、宮山隊員と番田隊員が会話してます。まずは番田隊員の発言から。
「あ~あ、オレたち、クビかなあ・・・」
それに宮山隊員が応えました。
「いや~ まだチャンスはあるさ」
「そりゃ、お前にはまだチャンスがあるだろうよ。なんてったって元総理大臣の孫だし」
「あは、次の仕事が見つかったら、紹介してやるよ」
「そうしてもらえるとうれしいなあ」
2人は笑顔です。と、ここで2人は入谷隊員の異変に気づきました。
「ん、隊長?」
隊長の顔は恐怖に引きつってます。
「ああ・・・」
それを見て宮山隊員が、
「どうしたんですか?」
「お、お前、あれが見えないのか?」
隊長はまっすぐ前を見て、そう言いました。宮山隊員もまっすぐ前を見ましたが、何もありません。
「ええ? 別に何もありませんけど?」
しかし、隊長の眼には見えてました。真っ黒いマントを着て、そのマントと一体になったフードをかぶってる男。その手には死神の鎌が握られてます。フロントガラスの外側にそいつは立ってるのです。隊長は震えてます。
「な、なんなんだ、こいつは?」
今度は番田隊員が話しかけました。
「隊長、何もいませんって!」
怪物はフードを取りました。その顔は一つ眼のガイコツでした。隊長はついに悲鳴をあげました。
「うぎゃーっ!」
隊長はレーザーガンを取り出しました。それを見て宮山隊員と番田隊員が慌てました。
「隊長、辞めてください!」
2人は力ずくでレーザーガンを取り上げようとしましたが、入谷隊長はレーザーガンを離しません。と、怪物はいつの間にかフロントガラスの内側に立ってました。入谷隊長のすぐ目の前です。怪物は鎌を大きく振り上げました。
「やめろーっ!」
そう言うと、隊長はレーザーガンを発射。その光線がフロントガラスを貫通。宮山隊員と番田隊員の顔が絶望的になりました。
「ああ・・・」
地球の縁で何かがピカーっと光りました。