「おい、しっかりしろ! しっかりしろ!」
「うう・・・」
彼女は目を醒ましました。怪獣に変身してた女です。今は人間体になってます。女は身体のあちらこちらから出血してたようで、全身血だらけです。ただ、今は出血のほとんどは止まってるようです。女はガレキの中に倒れていました。自分が壊した街のガレキです。それを2人の捜索隊員が発見したところです。
「安心しろ。いますぐ病院に連れてってやるからな。しかし、変わった格好だなあ。劇団員か?」
女は一瞬何が起きてるのかわからないようですが、すぐに理解しました。そして手を差し伸べた男の手をパシリと叩きました。
「いらん!」
「えっ?」
2人の男はその行動に驚きました。女は立ち上がると、
「ほっといて!」
と言って、歩き出しました。2人の男は、
「お、おい!・・・」
が、2人は諦めて、
「しょうがないなあ・・・」
と言って、別の方向に去って行きました。女は重い足取りで歩いてます。かなりきつそうです。
「くそーっ、痛い、全身が焼けるように痛い・・・ こんなに痛めつけられたのは、いつ以来だ?・・・
どうやって帰ろう。ふふ、神の国を侵略した罰かな・・・」
女の耳にふと異音が聞こえてきました。女が顔を上げると、ヘリコプターが飛んできました。報道用ヘリコプターです。そのヘリコプターが女の頭上を通り過ぎて行きました。
「くそーっ、ヘリを飛ばすなと言ってんだろ! ぜんぜん心音が聞こえないじゃないか!」
突然の怒鳴り声。女ははっとしてその声の方向を見ました。すると数人の捜索隊員が集まってました。捜索隊員たちは何か機械を持ってます。女は思いました。
「この次元の世界には、微細な心音を聞ける魔法の機械がるのか?」
「いたぞーっ!」
女はその声の方向も見ました。ここにも数人の捜索隊員がいます。すでに穴が掘られてる状態です。その穴の中から死体が出てきたようです。
「だめだ、死んでる・・・」
捜索隊員が女性の死体を引きずり出しました。すると別の捜索隊員が叫びました。
「赤ん坊だ! 赤ん坊がいるぞ!」
その男は赤ん坊を抱き上げましたが、すぐ顔色を変えました。
「だめだ、こっちも死んでいる・・・」
「かわいそうに・・・」
「母親が身を挺して赤ん坊の命を守ろうとしたのに、その苦労は水の泡か・・・」
女はさらに進むと、不思議な光景を見ました。先ほどと同じユニホームの捜索隊員数人が、手を合せ、祈ってるのです。
その反対方向を見ると、女性とその幼い息子とさらに幼い女の子がいます。女性と幼い男の子は祈ってますが、幼い女の子は理解してないようです。母親と兄にしつこく訊いてます。
「ねぇ、お父さんは? お父さんは?」
それを見て女は愕然としてしまいました。女は今までいろんな次元の国を侵略してきました。そしてたくさんの町を破壊してきました。彼女にって町を破壊する行為は、最高の娯楽だったのです。しかし、自分が破壊した町がその後どうなったのか、一度も確認したことがありませんでした。初めて見たその光景は、あまりにも残酷でした。女は思いました。
「ひどい・・・ 私は今までこんなひどいことをしてきたの?・・・」
と、女はふらっとし、立っていられなくなり、その場にへたり込んでしまいました。
「あは、ついに天罰がきた。ここまでか・・・」
女は自分に駆け付ける2人の男を見ました。しかし、ここまで。女は気を失ってしまいました。
病院の1人用の病室です。
「ありがとうございました」
ベッドに寝かされてる隊長に、女神隊員は立って頭を深々と下げました。彼女の衣服は入院服で、頭にはウィッグなど単眼を隠すものはありません。自動翻訳機のヘッドセットがあるだけです。隊長は立ち上がることができないようで、そのまま首を横に倒し、女神隊員を見ました。
「よせよ。お前だって医者に寝てろと言われてるんだろ。自分の病室に帰って、すぐに横になれよ。これは命令だ」
「はい」
女神隊員は振り返り、出て行こうとしました。が、隊長が、
「あ」
と言うと、立ち止まり、振り返りました。
「はい?」
「その眼、隠しておけ。どこにカメラ持ってるやつがいるのか、わからんぞ」
「はい」
女神隊員は再び振り返り、出て行こうとしました。が、また隊長が、
「あ」
と言うと、また立ち止まり、また振り返りました。
「今度はなんですか?」
「テレビつけてってくれ」
「はい」
女神隊員はテレビのメインスイッチに手を掛けました。するとテレビがつきました。
「ありがと」
「もう用事はないですか?」
「ないよ」
「それじゃ」
女神隊員はドアを開け、出て行きました。隊長はぽつりと言いました。
「ちゃんと寝てろよ。脳震とうと言っても、後遺症が出る場合があるからな。しかし、あいつが脳震とうで、助けに行ったオレがひざとろっ骨の骨折て、なんかバランスが悪くないか? ちっ、しゃべるだけで痛いや・・・」
隊長はテレビを見始めました。テレビの中では廃墟となった渋谷スクランブル交差点が映ってます。今レポーターがしゃべってるところです。
「今日渋谷に出現し消滅した怪獣ですが、現在自衛隊とテレストリアルガードが捜索してますが、いまだに発見にいたってません。どこに行ったのか、まったくの謎です。
死者の数ですが、すでに800人を越えてます。行方不明者はまだ200人以上いる模様です。今必死の救出活動が行われてるところです」
「死者1000人以上か・・・」
夜になり、朝になりました。女神隊員は病室の中でテレストリアルガードの隊員服に着替えてる途中です。実は女神隊員はドクターストップがかかってるのですが、もう出動する気でいます。しかし、ここでいきなりドアがノックされました。
「へっ?」
女神隊員はちょうどヘルメットをかぶってるところでした。
「ど、どうぞ!」
ドアが開き、看護師さんが入ってきました。女神隊員は勝手にテレストリアルガードの隊員服を着てるので、これは怒られるなと覚悟したのですが、
「ちょうどよかった!」
看護師さんは女神隊員の手首を握りました。
「ちょっと来てください!」
「へ?」
女神隊員は看護師さんに手を引かれてエレベーターに乗り、1階へ。そしてエントランスへ。エントランスの外には人だかりができてます。女神隊員はそれを見てびっくり。
「な、何、これ?」
「すみません。みなさんにあいさつしてください。さっきから玄関が使えないんですよ」
「あ、はい」
女神隊員はとりあえずエントランスの外に出ました。人だかりは100人くらいの小学生でした。その小学生たちが一斉に「うわーっ!」と声を上げました。女神隊員はちょっとびっくりです。
「ええ?・・・」
女神隊員の最も近くにいる小学生の男の子が、声をかけました。
「ヘルメットレディさん、もうお身体は大丈夫なんですか?」
「う、うん、大丈夫。見ての通り」
「よかった」
子どもたちはわーいと叫びました。それを子どもたちのさらに外側にいるカメラマンたちが撮影してます。
「ヘルメットレディさん、これ」
別の小学生の女の子が、女神隊員に箱を渡しました。縦30cm、幅45cm、高さ10cmくらいの紙製の箱です。女神隊員はそれを受け取りました。が、何がなんだかわからず、頭に?を浮かべてます。するとそれを渡した女の子が、
「箱を開けてみて」
女神隊員が箱を開けてみると、中身は千羽鶴でした。と言っても、実際は百羽鶴ぐらい。おまけに、地球にやってきたばかりの女神隊員はその意味がわかりません。とりあえず女の子にこう言いました。
「ありがと」
女の子は満面の笑みを浮かべました。女神隊員はふと海老名隊員に言い放った緊迫のセリフを思い出しました。
「もしバレたら、巨大化して、できるだけたくさん壊して死ぬ! もうその覚悟はできてるから!」
そして思いました。
「あのとき、暴走しなくってよかったあ・・・」
もう登校の時間は過ぎてます。子どもたちは三々五々消えていきます。
「それじゃ、またね~」
小学生たちが女神隊員に手を振って去って行きます。その小学生に女神隊員は手を振って応えました。
「ありがとう、またね!」
小学生たちが去って行きました。が、カメラマンたちの撮影は続いてます。
「ヘルメットレディさん、身体の具合は?」
「ヘルメットレディさん、ヘルメット取って、顔を見せてください!」
なんて声も響いてきました。女神隊員は慌てます。
「ええ・・・」
女神隊員は逃げるように慌てて振り返りました。するとそこには、2人の男性医師が立ってました。
「困りますねぇ、あなたは今重度の脳震とうで入院中なんですよ」
「おとなしく病室に戻ってください」
2人の男性医師に言われ、女神隊員は恐縮しました。
「あは、すみません・・・」
「うう・・・」
彼女は目を醒ましました。怪獣に変身してた女です。今は人間体になってます。女は身体のあちらこちらから出血してたようで、全身血だらけです。ただ、今は出血のほとんどは止まってるようです。女はガレキの中に倒れていました。自分が壊した街のガレキです。それを2人の捜索隊員が発見したところです。
「安心しろ。いますぐ病院に連れてってやるからな。しかし、変わった格好だなあ。劇団員か?」
女は一瞬何が起きてるのかわからないようですが、すぐに理解しました。そして手を差し伸べた男の手をパシリと叩きました。
「いらん!」
「えっ?」
2人の男はその行動に驚きました。女は立ち上がると、
「ほっといて!」
と言って、歩き出しました。2人の男は、
「お、おい!・・・」
が、2人は諦めて、
「しょうがないなあ・・・」
と言って、別の方向に去って行きました。女は重い足取りで歩いてます。かなりきつそうです。
「くそーっ、痛い、全身が焼けるように痛い・・・ こんなに痛めつけられたのは、いつ以来だ?・・・
どうやって帰ろう。ふふ、神の国を侵略した罰かな・・・」
女の耳にふと異音が聞こえてきました。女が顔を上げると、ヘリコプターが飛んできました。報道用ヘリコプターです。そのヘリコプターが女の頭上を通り過ぎて行きました。
「くそーっ、ヘリを飛ばすなと言ってんだろ! ぜんぜん心音が聞こえないじゃないか!」
突然の怒鳴り声。女ははっとしてその声の方向を見ました。すると数人の捜索隊員が集まってました。捜索隊員たちは何か機械を持ってます。女は思いました。
「この次元の世界には、微細な心音を聞ける魔法の機械がるのか?」
「いたぞーっ!」
女はその声の方向も見ました。ここにも数人の捜索隊員がいます。すでに穴が掘られてる状態です。その穴の中から死体が出てきたようです。
「だめだ、死んでる・・・」
捜索隊員が女性の死体を引きずり出しました。すると別の捜索隊員が叫びました。
「赤ん坊だ! 赤ん坊がいるぞ!」
その男は赤ん坊を抱き上げましたが、すぐ顔色を変えました。
「だめだ、こっちも死んでいる・・・」
「かわいそうに・・・」
「母親が身を挺して赤ん坊の命を守ろうとしたのに、その苦労は水の泡か・・・」
女はさらに進むと、不思議な光景を見ました。先ほどと同じユニホームの捜索隊員数人が、手を合せ、祈ってるのです。
その反対方向を見ると、女性とその幼い息子とさらに幼い女の子がいます。女性と幼い男の子は祈ってますが、幼い女の子は理解してないようです。母親と兄にしつこく訊いてます。
「ねぇ、お父さんは? お父さんは?」
それを見て女は愕然としてしまいました。女は今までいろんな次元の国を侵略してきました。そしてたくさんの町を破壊してきました。彼女にって町を破壊する行為は、最高の娯楽だったのです。しかし、自分が破壊した町がその後どうなったのか、一度も確認したことがありませんでした。初めて見たその光景は、あまりにも残酷でした。女は思いました。
「ひどい・・・ 私は今までこんなひどいことをしてきたの?・・・」
と、女はふらっとし、立っていられなくなり、その場にへたり込んでしまいました。
「あは、ついに天罰がきた。ここまでか・・・」
女は自分に駆け付ける2人の男を見ました。しかし、ここまで。女は気を失ってしまいました。
病院の1人用の病室です。
「ありがとうございました」
ベッドに寝かされてる隊長に、女神隊員は立って頭を深々と下げました。彼女の衣服は入院服で、頭にはウィッグなど単眼を隠すものはありません。自動翻訳機のヘッドセットがあるだけです。隊長は立ち上がることができないようで、そのまま首を横に倒し、女神隊員を見ました。
「よせよ。お前だって医者に寝てろと言われてるんだろ。自分の病室に帰って、すぐに横になれよ。これは命令だ」
「はい」
女神隊員は振り返り、出て行こうとしました。が、隊長が、
「あ」
と言うと、立ち止まり、振り返りました。
「はい?」
「その眼、隠しておけ。どこにカメラ持ってるやつがいるのか、わからんぞ」
「はい」
女神隊員は再び振り返り、出て行こうとしました。が、また隊長が、
「あ」
と言うと、また立ち止まり、また振り返りました。
「今度はなんですか?」
「テレビつけてってくれ」
「はい」
女神隊員はテレビのメインスイッチに手を掛けました。するとテレビがつきました。
「ありがと」
「もう用事はないですか?」
「ないよ」
「それじゃ」
女神隊員はドアを開け、出て行きました。隊長はぽつりと言いました。
「ちゃんと寝てろよ。脳震とうと言っても、後遺症が出る場合があるからな。しかし、あいつが脳震とうで、助けに行ったオレがひざとろっ骨の骨折て、なんかバランスが悪くないか? ちっ、しゃべるだけで痛いや・・・」
隊長はテレビを見始めました。テレビの中では廃墟となった渋谷スクランブル交差点が映ってます。今レポーターがしゃべってるところです。
「今日渋谷に出現し消滅した怪獣ですが、現在自衛隊とテレストリアルガードが捜索してますが、いまだに発見にいたってません。どこに行ったのか、まったくの謎です。
死者の数ですが、すでに800人を越えてます。行方不明者はまだ200人以上いる模様です。今必死の救出活動が行われてるところです」
「死者1000人以上か・・・」
夜になり、朝になりました。女神隊員は病室の中でテレストリアルガードの隊員服に着替えてる途中です。実は女神隊員はドクターストップがかかってるのですが、もう出動する気でいます。しかし、ここでいきなりドアがノックされました。
「へっ?」
女神隊員はちょうどヘルメットをかぶってるところでした。
「ど、どうぞ!」
ドアが開き、看護師さんが入ってきました。女神隊員は勝手にテレストリアルガードの隊員服を着てるので、これは怒られるなと覚悟したのですが、
「ちょうどよかった!」
看護師さんは女神隊員の手首を握りました。
「ちょっと来てください!」
「へ?」
女神隊員は看護師さんに手を引かれてエレベーターに乗り、1階へ。そしてエントランスへ。エントランスの外には人だかりができてます。女神隊員はそれを見てびっくり。
「な、何、これ?」
「すみません。みなさんにあいさつしてください。さっきから玄関が使えないんですよ」
「あ、はい」
女神隊員はとりあえずエントランスの外に出ました。人だかりは100人くらいの小学生でした。その小学生たちが一斉に「うわーっ!」と声を上げました。女神隊員はちょっとびっくりです。
「ええ?・・・」
女神隊員の最も近くにいる小学生の男の子が、声をかけました。
「ヘルメットレディさん、もうお身体は大丈夫なんですか?」
「う、うん、大丈夫。見ての通り」
「よかった」
子どもたちはわーいと叫びました。それを子どもたちのさらに外側にいるカメラマンたちが撮影してます。
「ヘルメットレディさん、これ」
別の小学生の女の子が、女神隊員に箱を渡しました。縦30cm、幅45cm、高さ10cmくらいの紙製の箱です。女神隊員はそれを受け取りました。が、何がなんだかわからず、頭に?を浮かべてます。するとそれを渡した女の子が、
「箱を開けてみて」
女神隊員が箱を開けてみると、中身は千羽鶴でした。と言っても、実際は百羽鶴ぐらい。おまけに、地球にやってきたばかりの女神隊員はその意味がわかりません。とりあえず女の子にこう言いました。
「ありがと」
女の子は満面の笑みを浮かべました。女神隊員はふと海老名隊員に言い放った緊迫のセリフを思い出しました。
「もしバレたら、巨大化して、できるだけたくさん壊して死ぬ! もうその覚悟はできてるから!」
そして思いました。
「あのとき、暴走しなくってよかったあ・・・」
もう登校の時間は過ぎてます。子どもたちは三々五々消えていきます。
「それじゃ、またね~」
小学生たちが女神隊員に手を振って去って行きます。その小学生に女神隊員は手を振って応えました。
「ありがとう、またね!」
小学生たちが去って行きました。が、カメラマンたちの撮影は続いてます。
「ヘルメットレディさん、身体の具合は?」
「ヘルメットレディさん、ヘルメット取って、顔を見せてください!」
なんて声も響いてきました。女神隊員は慌てます。
「ええ・・・」
女神隊員は逃げるように慌てて振り返りました。するとそこには、2人の男性医師が立ってました。
「困りますねぇ、あなたは今重度の脳震とうで入院中なんですよ」
「おとなしく病室に戻ってください」
2人の男性医師に言われ、女神隊員は恐縮しました。
「あは、すみません・・・」