考えてみればハリソン君に劇場で会ったことが一度もなかったなあと思い
インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国を観てまいりました。
いや、面白うございましたよ。
ジョーンズ先生、相変わらず古代遺跡を破壊しすぎでございます。
そして相変わらずの三枚目ヒーローっぷり、素敵でございました。
ただ「インディ・ジョーンズ」に別段思い入れのない人や、思い入れがあってもごく冷静に作品を鑑賞できるかたが御覧になっても「面白い!」と思えるかどうかは、ワタクシちょっと分かりません。
まあかく申すワタクシとて「インディ」シリーズにものすごく思い入れがあるってわけではございませんが、あのテーマ曲を聴いただけでワクワクして来るという手合いではございます。
のろと共に客席に座っていた皆様も同類でいらっしたらしく、映画が終わってもエンドロールが最後まで流れて場内が明るくなるまで、誰も席を立ちませんでした。蛇が出て来ただけでみんなワッと笑ったりしてね、なかなかいい雰囲気でございました。
そんなわけで若干の思い入れ補正も手伝ってはおりましょうが、とにかく最後までおおむね楽しく見ることができましたので、多少のツッコミどころには眼をつぶることにいたします。
何たって今回はね、悪役がよろしうございますよ。
アクション・エンターテイメントは悪役が命でございます。
「インディ」シリーズはのろの中で、悪役には大して魅力が無いのに好きな映画、という特異な場所を占めておりました。
が、本作の悪役はケイト・ブランシェット姐さん演ずるソ連軍のエージェントでございます。
魅力的でないわけがございません。

いや、こんな場面はありませんが。
背筋をぴりっと伸ばし、薄い唇の端をつり上げ余裕の表情で微笑むその姿の何と美しいことよ。ロシアなまりもきまっております。細身の剣を振るってのちゃんちゃんばらばらもカッコようございました。
特に断崖絶壁でのカーチェイスのシーンがよろしうございましたねえ。
インディ陣の車を崖っぷちへと激しく追いつめつつニヤッと笑って「さよなら、ドクトル・ジョーンズ」。
うひゃー 最高。
ワタクシとしてはもっともっと執拗に冷酷に主人公サイドをを苦しめていただきたかったのでございますが、そうしたらかくも美しく咲き誇る悪の華の前に老ハリソン君や若造シャイア・ラブーフはすっかり食われてしまっていたことでしょうから、まああのくらいのご活躍で丁度いいのかもしれません。
カッコいいといえばワタクシは全シリーズを通して、ジョーンズ先生が一番カッコよかったのは『魔宮の伝説』で、今にも閉じようとする壁の隙間から手を伸ばして帽子を回収したシーンだと思っております。あの、虫うじゃうじゃシーンの直後のとこでございますよ。腕しか写っておりませんがね。
帽子ってのは「なきゃ死ぬ」ってなものではございません。しかもあの宮殿、地下でございます。日よけは無用のはず。
にもかかわらず、わざわざ危険を冒して愛用の帽子を回収するジョーンズ先生。あのダンディズムには痺れました。
そう、インディ・ジョーンズといえば帽子と鞭でございます。
今回は鞭の方はあまり活躍いたしませんでしたが、帽子は相変わらずの名小道具ぶり。
最後のシーンの帽子づかいなどは、いよっ、ファンの心を分かってるねェ、とかけ声のひとつもかけたくなるニクい演出でございました。
そんなわけで、かのシリーズの続編としてなんと19年ぶりに制作された本作、のろには充分満足のいく作品でございました。
・・・・・
とは申せ
多少のツッコミどころには眼をつぶるものの、これだけはちょっといただけないというものが一点ございます。
原爆実験のシーンでございます。
ハリウッドの娯楽作品中で原爆が使われるのは、残念ながらそう珍しいことではございません。
本作で描かれているような原爆実験は実際に行われていたことでございますから、おそらく冷戦まっただ中という時代性を強調するイベントとして脚本に組み入れられたものと存じます。
その点、原水爆をただ単に超強力な兵器としてしか扱わない他の作品ほど不謹慎なものではないと申せましょう。
ずるずると溶けて行くマネキンの顔や一瞬にして燃え上がる犬のぬいぐるみの映像を挟んでいることにも、制作者の誠意を、まあ、感じないではございません。
しかしこのシーンでジョーンズ先生は完全に被爆しております。
数日で死に至らなかったとしても、白血病や癌を発症する高い可能性を否応無く背負い込んだはずでございますが、もちろんそうした危険性が映画の中で語られることはございません。
直後に「どっぷり放射能浴びてもしっかり洗っとけば大丈夫サ」と言いたげなシーンがございます。これはおそらく核の危険性に無頓着であった当時のアメリカを皮肉っているんだろうとは思いますけれども、それこそ「原爆=超スゲー強力な兵器」という程度の認識しかない人に対してこの皮肉が皮肉として機能するかどうかは、甚だ疑問でございます。
ハリウッドにおける安易な原爆づかいを鑑みるに、少なくともアメリカにおいては、この原爆実験シーンから皮肉を読み取る人は少数派なのであろうと思わざるをえません。
スピルバーグかルーカスが、例えばドキュメンタリー映画『ヒロシマナガサキ』を観た後でもなお、このシークエンスをあえて入れたであろうか?
娯楽作品は理屈抜きに楽しむのが鉄則とは申せ、ジョーンズ先生の頭上に高々とそびえるキノコ雲を見て、こう考えずにはいられないのでございました。
インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国を観てまいりました。
いや、面白うございましたよ。
ジョーンズ先生、相変わらず古代遺跡を破壊しすぎでございます。
そして相変わらずの三枚目ヒーローっぷり、素敵でございました。
ただ「インディ・ジョーンズ」に別段思い入れのない人や、思い入れがあってもごく冷静に作品を鑑賞できるかたが御覧になっても「面白い!」と思えるかどうかは、ワタクシちょっと分かりません。
まあかく申すワタクシとて「インディ」シリーズにものすごく思い入れがあるってわけではございませんが、あのテーマ曲を聴いただけでワクワクして来るという手合いではございます。
のろと共に客席に座っていた皆様も同類でいらっしたらしく、映画が終わってもエンドロールが最後まで流れて場内が明るくなるまで、誰も席を立ちませんでした。蛇が出て来ただけでみんなワッと笑ったりしてね、なかなかいい雰囲気でございました。
そんなわけで若干の思い入れ補正も手伝ってはおりましょうが、とにかく最後までおおむね楽しく見ることができましたので、多少のツッコミどころには眼をつぶることにいたします。
何たって今回はね、悪役がよろしうございますよ。
アクション・エンターテイメントは悪役が命でございます。
「インディ」シリーズはのろの中で、悪役には大して魅力が無いのに好きな映画、という特異な場所を占めておりました。
が、本作の悪役はケイト・ブランシェット姐さん演ずるソ連軍のエージェントでございます。
魅力的でないわけがございません。

いや、こんな場面はありませんが。
背筋をぴりっと伸ばし、薄い唇の端をつり上げ余裕の表情で微笑むその姿の何と美しいことよ。ロシアなまりもきまっております。細身の剣を振るってのちゃんちゃんばらばらもカッコようございました。
特に断崖絶壁でのカーチェイスのシーンがよろしうございましたねえ。
インディ陣の車を崖っぷちへと激しく追いつめつつニヤッと笑って「さよなら、ドクトル・ジョーンズ」。
うひゃー 最高。
ワタクシとしてはもっともっと執拗に冷酷に主人公サイドをを苦しめていただきたかったのでございますが、そうしたらかくも美しく咲き誇る悪の華の前に老ハリソン君や若造シャイア・ラブーフはすっかり食われてしまっていたことでしょうから、まああのくらいのご活躍で丁度いいのかもしれません。
カッコいいといえばワタクシは全シリーズを通して、ジョーンズ先生が一番カッコよかったのは『魔宮の伝説』で、今にも閉じようとする壁の隙間から手を伸ばして帽子を回収したシーンだと思っております。あの、虫うじゃうじゃシーンの直後のとこでございますよ。腕しか写っておりませんがね。
帽子ってのは「なきゃ死ぬ」ってなものではございません。しかもあの宮殿、地下でございます。日よけは無用のはず。
にもかかわらず、わざわざ危険を冒して愛用の帽子を回収するジョーンズ先生。あのダンディズムには痺れました。
そう、インディ・ジョーンズといえば帽子と鞭でございます。
今回は鞭の方はあまり活躍いたしませんでしたが、帽子は相変わらずの名小道具ぶり。
最後のシーンの帽子づかいなどは、いよっ、ファンの心を分かってるねェ、とかけ声のひとつもかけたくなるニクい演出でございました。
そんなわけで、かのシリーズの続編としてなんと19年ぶりに制作された本作、のろには充分満足のいく作品でございました。
・・・・・
とは申せ
多少のツッコミどころには眼をつぶるものの、これだけはちょっといただけないというものが一点ございます。
原爆実験のシーンでございます。
ハリウッドの娯楽作品中で原爆が使われるのは、残念ながらそう珍しいことではございません。
本作で描かれているような原爆実験は実際に行われていたことでございますから、おそらく冷戦まっただ中という時代性を強調するイベントとして脚本に組み入れられたものと存じます。
その点、原水爆をただ単に超強力な兵器としてしか扱わない他の作品ほど不謹慎なものではないと申せましょう。
ずるずると溶けて行くマネキンの顔や一瞬にして燃え上がる犬のぬいぐるみの映像を挟んでいることにも、制作者の誠意を、まあ、感じないではございません。
しかしこのシーンでジョーンズ先生は完全に被爆しております。
数日で死に至らなかったとしても、白血病や癌を発症する高い可能性を否応無く背負い込んだはずでございますが、もちろんそうした危険性が映画の中で語られることはございません。
直後に「どっぷり放射能浴びてもしっかり洗っとけば大丈夫サ」と言いたげなシーンがございます。これはおそらく核の危険性に無頓着であった当時のアメリカを皮肉っているんだろうとは思いますけれども、それこそ「原爆=超スゲー強力な兵器」という程度の認識しかない人に対してこの皮肉が皮肉として機能するかどうかは、甚だ疑問でございます。
ハリウッドにおける安易な原爆づかいを鑑みるに、少なくともアメリカにおいては、この原爆実験シーンから皮肉を読み取る人は少数派なのであろうと思わざるをえません。
スピルバーグかルーカスが、例えばドキュメンタリー映画『ヒロシマナガサキ』を観た後でもなお、このシークエンスをあえて入れたであろうか?
娯楽作品は理屈抜きに楽しむのが鉄則とは申せ、ジョーンズ先生の頭上に高々とそびえるキノコ雲を見て、こう考えずにはいられないのでございました。