世の中の家庭は貯金や借金がいくらくらいあるのか。老後の不安も相まって多くの人の気になる話題だ。
総務省の家計調査(貯蓄・負債編)から世帯ごとに貯金や借金の額を年収と比べてみると、貯金・借金が多い地域と少ない地域でいずれも3倍近い開きがある。
住民の気質や地域の環境が影響しているようだ。
*近畿2府4県で6県の内、5県(京都、奈良、滋賀、和歌山、兵庫)がベスト10に入っており、大阪は47位となっている。
滋賀は昔は農業県だったが戦後の高度成長期以降に琵琶湖周辺に全国1位の生産工場立地県となっており、農業と給与収入及び田地やアパートなどの賃貸収入のダブルインカムも利いているのではいるのではないか。(ブログ筆者の個人的印象)
まず貯蓄を取り上げる。
家計調査によると、世帯主が勤めに出ている2人以上世帯の2021年の貯蓄額は全国平均で1454万円。平均年収(749万円)の1.94倍だ。世帯主が社長や取締役など会社役員の世帯は含まない。年収比を県庁所在地別に見てみると平均を上回ったのは16都市で、最高は「京都市」の3.10倍だった。
京都市で多い理由について、日本FP協会の京都支部長も務めるファイナンシャルプランナーの常住良樹氏は「老舗企業の多さ」に注目する。任天堂やロームなど歴史の長い大手企業が多く、帝国データバンクの都道府県別調査によると京都府は業歴100年以上の企業の割合が5.2%と最も高い。
常住氏は「創業者一族の関係者で資産の生前贈与を受けている人も目立つ。大学や大学院卒業者の割合が高く、教育に資金を回せるだけの生活の余裕があることの表れではないか」と話す。
京都市の平均年収は712万円と、岐阜市の801万円、東京都区部の978万円、千葉市の795万円などと比べると必ずしも多くない。日本の中心都市として長く繁栄した歴史の遺産を受け継いでいると言えそうだ。
2位は「奈良市」で2.53倍だった。奈良県を地盤とする南都銀行系のシンクタンク、南都経済研究所(奈良市)の秋山利隆・主任研究員は「家計の状況を頭に入れて、着実に貯蓄をする堅実な人が多い」ことが要因とみる。食料や住宅の物価が比較的安い一方、大阪など奈良県外の大手・中堅企業で働いて一定の収入を得ていることも影響している。
年収は799万円と6番目の高さで、国勢調査では奈良県外へ通勤・通学している人の割合が奈良県は14.7%で、埼玉県、千葉県に次いで高い。
3位の「大津市」も堅実な県民性が表れた形だ。各都道府県に住む20~59歳を対象にしたソニー生命の21年調査によると「自分は家計管理が得意だ」「自分は貯蓄上手だと思う」と回答した割合は滋賀県はいずれも3割を超えて都道府県別で最も高い。「岐阜市」は高い年収(801万円で4位)と物価の安さが貯蓄を後押ししている。
一方で年収では937万円と東京都区部に続いて全国2位だが、年収比の貯蓄額割合では19位の「さいたま市」は負債額が最も多い。負債のうち住宅・土地が97%を占めており、住宅取得のために貯蓄が抑えられている。
上位は三大都市圏や周辺地域が占めたが、「大阪市」は全体的に物価が高い一方、年収が670万円と比較的低く、貯蓄の年収比は1.18倍と47都市で最も低かった。次いで低い「那覇市」も年収が579万円と最も少なかった。
<日経新聞より>