”スローライフ滋賀” 

<キラリ近江びと> 東近江で弁当店と茶園営む阿野祐也さん(中日新聞より)

 祖父母が残してくれた東近江市箕川町の古民家で「弁当」を作り、東近江市役所の売店などで販売している。地元の銘茶「政所茶」の放棄された茶園の世話にも取り組む。
住民は15人、うち13人が65歳以上の町。「この地域がなくなったらさみしい。存続に少しでも貢献したい」と力を込める。

 祖父母宅は父の実家で、築200年を超えるとみられる。少年時代には盆と正月に訪れ、餅つきをしたり、近くの川でウナギを捕ったりしたのが思い出という。
 生まれ育ったのは旧八日市市。大学時代と卒業後の1年間は、大津市内にある個人経営の和食居酒屋で働いた。ある日、九州出身の店長が、同郷の客に気を利かせて郷土料理「だご汁」を出した。喜んだ客は、3日連続で来店してくれた。「全国各地の料理を学びたい」。店を辞め、まずは沖縄へ渡った。
 1年だけ働き、東北や中四国にも足を延ばすつもりだったが「のんびりした県民性が合っていた」。観光客向けの沖縄料理店と、地元客相手の居酒屋で料理の腕を磨き、気が付けば2年半が経過。自分の店を持ちたいと、地元に戻った。

 東近江市八日市地区の居酒屋で3年弱、調理場を切り盛りし、2019年末から独立準備を本格化。翌年3月ごろの開業を目指し、物件も決めたが、新型コロナウイルスが流行。やむなく断念した。む
 しばらくは貯金を取り崩して生活する時期もあったが、過疎化の進む東近江市箕川町への思いは消えなかった。町内の住民有志による宿泊施設開業を目指す動きも知り、「それなら食べ物屋も必要」と決心。祖父母宅の台所に調理器具を持ち込み、昨年末から弁当作りに励んでいる。

 知り合いのつてで、東近江市役所内の売店と、東近江市内の道の駅「奥永源寺渓流の里」に、一日平均20個ほどを出荷。毎朝06:00には起床し、東近江市内産米を湧き水で炊く。
 売店でのいち押しは、自分で取った出汁(だし)で、土鍋で炊いた鶏飯と鯛飯。おかずも、だしベースの控えめな味付けで素材の良さを引き出す
時には、母の手料理の炒め物を再現して入れることも。「改善の余地がある」という天ぷらは、弁当に入れて時間がたつと水分を含むため、衣になる粉の配合で試行錯誤が続く。

 弁当の出荷後は翌日向けの仕込み作業に加え、父と協力して茶園の手入れにも励む。3月ごろから、放置されて雑草だらけになった茶園を開拓。「政所茶の良さを広めたい」と地域の伝統も受け継いでいる。
 弁当は居酒屋の料理と違い、食べる人の顔を見られない。やりがいは「同じ人から2回目の注文を受けた時に感じる」。今後は、企業や会合向けに仕出し弁当の販売を強化する考えだ。「派手さはないけど、しっかりおいしさのある弁当」を理想に掲げる。

 あの・ゆうや 1989年7月、東近江市布引台出身。彦根東高、滋賀大教育学部卒業。学生時代はサッカーとバンドに明け暮れた。
弁当店と茶園は、祖父母宅の屋号のカネカを名乗る。「カネカの味が一番楽しめる」と自負するのは仕出し弁当。注文は要相談。
問い合わせ: 阿野さん=090(9692)0955

<中日新聞より>

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