「お母ちゃんも行く、お母ちゃんも乗せてくれ、一緒に行く、待ってくれ」
今日のような雲一つ無い空の元で行われた葬儀。今のように葬儀場でするのではなく、ほとんど家で行われていて、近所の人全部(大人も子供も)出てきて見送った。葬儀が終わり、家の横に止めてあった霊柩車が動き出した。
ふと、空を見上げると一つ白い雲が現れ霊柩車と一緒に流れ出した。
「あ、お兄ちゃんの雲が出てきた、お兄ちゃんは雲になって行くんやな」私は空を見上げながら呟いた。その時、お母さんの叫び声とともに、もうひとつ大きな雲が現れた。
「お母ちゃんも連れて行ってくれ」大きな雲は小さな雲を追いかけていた。
ゆらゆら走り出していく霊柩車をお母さんは、みんなが止めるのも聞かず走っていった。
「1人で行かせへん、お母ちゃんも一緒に行く」と泣き叫びながら--。
近所のお兄ちゃんが、薬を飲んで自殺をした。私が未だ、小学校の時だったと思う。傍で私の母は「この世の中で起こったことはこの世で収まるんや、あの世に持っていくことない、この世で解決するんや、死ぬことない、死ぬことないんや、親より早よ、死んだらあかん」と泣きながら言っていた。
近所のお兄ちゃん、何で死んだんやろう。一緒に棺に入って死ぬと言っているお母さんが、かわいそう、でも、子供が自殺してこんなにも親は悲しむのか、当たり前やと言われても当時の私は頭の中がパニックになって、母の手を、きつく握りしめたのを思い出す。そして今でも忘れはしない。
高校時代、自殺の話をする子がいた。どうしたら綺麗に死ねる、死んだ方が楽や、等々。みんな興味を持って聞いていた。私は、話の中に入らなかった。自殺したらどんなに親が悲しむか、この世で起こったことはと言った母の言葉が頭から離れないから。
小学生、中高校生、どうして急いで死ぬのか。死なずとも解決できると思う。
早まらないでと言いたい。お母さんを悲しめないで