松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆どやばい村・出現(新城市)

2016-02-15 | 1.研究活動

 自治の先陣を切る新城市らしい新たな取り組みである。

 全国で自治基本条例がつくられたが、作りっぱなしの自治体も多い。取り組んでいるところも、せいぜい普及啓発事業程度にとどまっている。そのなかで、愛知県新城市は、自治基本条例の理念を政策レベルに落とし込み、事業化を始めている稀有な自治体のひとつである。奥三河らしい実直さの表れなのだろう。

 新城市の自治基本条例は、行政や議会の監視だけでなく、自治の当事者全員が、存分に力を発揮して、自治を推進していこうという条例である。新城市を取り巻く条件は厳しく、行政や議会を批判しているだけでは、とても危機を乗り切ることができない。

 新城市では、この自治基本条例を出発点に、さまざまな政策を展開している。いくつか紹介しよう。

 1.まず、市民まちづくり集会である。これは自治基本条例15条に規定されている。市民、議会、行政が一堂に会して、まちの課題や将来に関する情報を共有し、意見交換しようという仕組みである。多くの自治体では、市民が集まる仕組みを作ろうとすると議会が反対するが、新城市では、議会がそれを乗り越えた。ちなみに市民まちづくり集会は、全国初の試みである(焼津市がその跡を継ぎ、独自の発展をとげている。焼津市の試みも面白い)。

 2.若者政策である。自治の当事者のうち、若者は、これまでの自治体政策では出番がない。総合計画に出てくる若者は、せいぜい文化・スポーツの担い手である。そこで若者が、存分に知力を発揮できるようにするのが若者政策である。これも全国初の試みである。その政策メニューのひとつが、若者議会である。若者議会というと、議場に集まって、質問するイベントをイメージするが、そんなものではない。若者に政策提案権を与えて、それに予算をつけるシステムである。若者の出番と居場所づくりの政策である。

 3.女性議会も同じ仕組みである。新城のような地域では、まだまだ男性中心である。そこで、女性が存分に力を発揮する政策のひとつが、女性議会である。これも単なるイベントではなく、政策立案につなげるシステムである。ちなみにこれも全国初である。

 4.自治基本条例で地域自治区の制度を規定した。地域自治区も、地域が存分に力を発揮する仕組みである。全国で地域自治区がつくられているが、おおくは政策理念が明確でないために迷走するが、新城市では、自治基本条例の理念(自治の当事者が存分に力を発揮する)から組み立てているので、ブレがないのが特徴である。所長の市民任用までやっている。

 5.地域産業総合振興条例を作ったが、これは地域産業に存分に力を発揮してもらうための条例である。産業振興は、容易ではないが、理念が明確なので、今後、知恵が出てくるだろう。

 自治基本条例の理念(みんなが自治の当事者であり、それぞれが存分に力を発揮する)から、政策が体系的に組み立てられている点が特徴である。

 さて、どやばい村であるが、まず「やばい」の意味である。私たち世代にとっては、やばいは「あぶない」であるが、若い世代にとっては、「すごい」である。程度の大きさを表す言葉として使われるが、「ずこくいい」と肯定的に使われることも多い。

 このどやばい村は、若者政策のメニューのひとつである。とにかく、このポスターには驚かされた。とても行政(大人)ではつくれないポスターだからである。当然、賛否があるだろうが、こうしたチャレンジ性を認める許容性、寛容性が、今日の自治にとっては大事である。監視型自治経営の度が過ぎて、だれもチャレンジしなくなった(日本の停滞の一因である)。それを破るのは、若者なのだろう。ちなみに、ゼミで、どやばい村を紹介したところ、行きたいという学生が何人かいて、さすが若者の感性は、するどい。

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