松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆附属機関条例主義を考える④政策法務の出番

2018-12-30 | 1.研究活動
 この問題が出たとき、とりわけ自治体職員の反応は興味深かった。ネットで調べたときに、感じた感想なので、そういうものとして、理解してほしい。

 これらの判決がでたとき、私は、裁判官は、地方自治が、全然わかっていないなあと思った。二元代表制の意義も十分に理解していないのではないか(国のシステムと混同しているのではないか)、むろん実務もよくわかっていないのではないかと、思った。

 人口減少が目の前に来ていて、高齢化もどんどん進んでいく。もう行政だけ、税金だけの行政では地方自治は立ち行かない。厳しい時代を乗り切るには、それまでサービスの享受者だった市民を自治の当事者にして、税金に加え、市民の知恵や知識を総動員して、困難に立ち向かうしかないであろう。「9人で野球をやろう」である。これまで野球をやってなかった人たちを当事者にするには、行政の政策決定の中に、どんどん巻き組んでいかなければならないが、その仕組みの一つが、要綱設置の懇話会等である。

 だから、懇話会設置のハードルをどんどん下げ、あるいはたくさんの機会を作るなど、ともかく市民に門戸を開かなければいけないときに、市民参加のハードルを上げるような判決は、地方自治の今が、まるでわかっていないと思ったからである。

 更に意外だったのは、自治体職員の人たちの反応である。このテーマそのものが、マニアックなものなので、ネット等で反応しているのは、法規担当やその経験者、あるいは法律に詳しい人達であるが、全体の印象としては、違法判決を是とする意見が多かったことである。

 政策法務の時代である。政策法務とは、政策を実現するために、法務を使うというのがその意義であるが、では政策目的はなにか。これはすでに述べたように、人口減少社会のなかで、みんなが幸せに暮らせる社会を作ることであるが、そのためには、行政だけ、税金だけの自治からの脱却である。このように自治体職員としての政策目的を見据えると、これら判決は、怒りこそすれ、是とするということにはならないと思うからである。

 話が逸れるが、自治体法務研究会というのがあって、かつては私も、顔を出していた。上に述べたような政策法務のダイナミックさに惹かれたためである。しかし、いつからか、法制執務の研究会のようになり、どんどん足が遠ざかっていってしまった。今は、どういう雰囲気になっているのだろう。

 ともかく、これら判決を是とする自治体職員(条例制定に関わる)の雰囲気が、附属機関の設立に関する条例を作るときに、微妙に影響してくることになる。
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