松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆附属機関条例主義を考える③裁判例

2018-12-30 | 1.研究活動
 講学上の議論に過ぎなかった附属機関条例主義が、一躍、注目されるようになったのは、これが訴訟になったからである。

 住民参加条例や自治基本条例に反対する人たちが、反対の論拠として、138条の4をあげたからである。反対論の内容そのものは、見るべき主張はないが、地方自治法の明文規定を根拠とする手続きを問題とする主張だった。

 これら条例づくりをするときには、役所だけではやらない。市民や専門家に集まってもらって、市民サイドから検討してもらう。この市民の意見と行政側の意見をぶつけて、適切な条例案をつくるのである。

 市民が集まった委員会は、市民サイドとしての参考意見をもらうためのものなので、政策決定から見れば、政策形成(調査過程)の一環なので、この委員会は要綱で作るのが一般的だった。委員には、交通費や報酬を払う場合がある。これを取り上げて、「条例に基づかない附属機関について、地方自治法に違反し、その附属機関に係る委員報酬が違法な支出である」として訴訟になり、長の賠償責任を認めた判決が出された。

 ちなみに塩野教授は、この委員会について、「条例外審議会は行政機関ではなく、情報・政策立案への助言委託先とみるべきものと思われる。その意味では、これを自治法に反する違法な組織とみることはできないと考えられる」としている。助言委託先とは言いえて妙である。

 このテーマに関する判決は、10件以上あるが、平成25年の松江地裁判決を覗いて、これら懇話会は附属機関にあたると判決されている。
いずれも附属機関の意味を広義に捉えているのが特徴である。しかし、すでに見たように、二元代表制の意味、この規定の立法趣旨の曖昧さからいって、附属機関の意義を限定して考えるべきというのが、私のこれまでの議論である。

 ともかく、違法判決が続くなかで、実務的には、何らかの対応が必要になる(論理解釈や限定解釈ではリスクが大きすぎる)。そこで、全国で、附属機関の設置に関する条例が作られることになる。
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