研修用のノートを基に、地方公務員法のサブノート(『一週間で学ぶ地方公務員法要点ノート』)を書いてみた。もともとは、電車のなかでも簡単に読めるような、電子版ならば使いやすいのではと考え、編集者もがんばってくれたが、企画にならず、むろん、私自身もその技術がないので、普通のサブノートとして、とりあえず、電子書籍、PODで出すことにした。
地方公務員法は、自分の考え方というよりは、公式的な見解を理解することが必要なので、その分、間違いがあってはならず、書くのには手間がかかった。根気のいる仕事だった。
それでも、私の本なので、それぞれの項目に私らしい設問を置いている。
Q.職場内で不倫しているとして懲戒処分の対象になるか。
Q.勤務時間中に庁内の売店にタバコを吸いに行く行為は職務専念義務違反か。水分補給のため、庁舎内の自販機の水を買いに行く行為ならどうか。
「はじめに」には概要、次のように書いた。
地方公務員法の最終条文は第65条であるが、改正で追加や削除があり、正味では104条の法律である。地方自治法に比べると小さな法律ではあるが、多くの行政実例等が蓄積しているので、実質的にはかなりのボリュームになる。その結果、地方公務員法の勉強は、思いのほかハードで、結局、この法律の全体像を体得できずに、挫折することも多い。
本書は、地方公務員法の全条文を取り上げ、要点・ポイントを凝縮して解説して、地方公務員法の全体と自治体職員が仕事をする上での覚えておくべき基本事項を容易に理解できるようしたものである。
公務員時代、自治体において初めて取り組む政策課題をいくつか担当したが、そこで学んだのは、公務員の仕事の基本は、まずは政策課題の全体像を把握し、その課題の論点・注意点を漏れなく拾い上げることだった。逆にいうと、論点・注意点の一つひとつの詳細をあらかじめ熟知している必要はなく、それはあとから時間をかけて、調べれていけばよい。
一番いけないのは、論点・注意点を見落としてしまうことである。気がついて手戻りになるだけでも時間・エネルギーのロスだし、ときには政策の正当性すら疑われてしまうことになる。
地方公務員法も同様で、自治体職員として覚えることがたくさんあるなかで、地方公務員法をめぐる行政実務等の詳細まで、事前に正確に覚えている必要はなく、あとで定評ある定本(『逐条地方公務員法』橋本勇・学陽書房)で調べることができる程度に理解していればよい。
以上のような観点から、これまで地方公務員法の研修を行ってきたが、本書は、その際のサブノートを基に、「使える地方公務員法の解説本」をめざしたものである。
受験勉強でも経験があると思うが、早くマスターするコツは繰り返しである。本書の「見出し・要点」だけなら、全編を1時間で読むことができる。
それを2回目、3回目と繰り返し、全体像をつかんだら、「覚えおく」も含め読み進んだらどうだろう。最初は1週間かかるかもしれないが、どんどんスピードアップしていく。
さらに、「応用問題」は、仲間同士の勉強や研修で使ってほしい。問題に基本にさかのぼって考えると、地方公務員法の各条文の本質が理解でき、しっかりと身につくようになる。
地方自治を取り巻く状況は、ますます厳しさを増しているなか、市民を支える自治体職員の奮闘がますます期待されている。大いにがんばってもらいたい。