松下啓一 自治・政策・まちづくり

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論点4.人口を増やそうとしたら、自治体は何ができるのだろう(1)

2025-01-06 | 地方消滅

 日本全体では、有配偶者出生率は大きく変わらない。少子化は日本全体の問題であるにもかかわらず、消滅可能性都市の問題提起は、それを自治体に競わせることになった。その結果、子どもを産める若者の奪い合いという自治体間競争が起こり、無理な囲い込み政策がとられるようになった。

1.人口を増やそうとしたら、自治体は何ができるのだろうか。

 これについては、以前、自治体職員の研究会をやった(公益財団法人 神奈川県市町村振興協会市町村研修センター『平成27年度政策形成実践研究報告書 人口減少社会への順応-フルセット行政からの脱却-』2016年)

 その回答は、人口増加自治体の要因は、種々の要素が絡むが、結局、僥倖ではないかというものである。

 人口が増えた自治体の要因は、次の3つに大別できる。

①産業の集積(産業誘致や工場立地、大学や研究機関の集積により、就業機会等が増加したことに伴い人口が流入しているケース。茨城県つくば市、茨城県神栖市など)

②住環境の整備(産業集積地等が近隣にある地域において、土地区画整理等により住環境の整備が進んだことに伴い人口が流入しているケース。岐阜県美濃加茂市、愛知県長久手市など)

③交通環境の充実(鉄道や道路など、交通機関の整備により、大都市や地方中核都市へのアクセスが向上したことに伴い人口が流入しているケース(千葉県流山市、埼玉県伊奈町など)

 要するに自治体の自助努力というよりも僥倖とも言える言える要素も強い。人口を増やした街として、流山市などは有名であるが、この僥倖をうまくとらえた(「母になるなら流山」「都心から一番近い森のまち」などのキャッチフレーズ)ものと言える。

2.人口減少順応施策の可能性

 1を受けて、『現代自治体論: 励ます地方自治の展開・地方自治法を越えて 単行本 – 2018/5/1』では次のように書いた。

 自治体の政策として、長期的な視点において自然減に歯止めをかけることや短期・中期的な視点において社会減の克服を目指すことは、重要な目標であり、そのための施策を展開していく必要があることは間違いない。

 それでも、相当の期間において日本全体の人口が減少していくことが確実視されている状況においては、もうひとつの人口政策として、人口減少を受け入れ、それに順応するための施策を優先的かつ戦略的に取り組むことも重要である。

 人口増加は、あくまでも豊かで住みやすいまちを創るための条件の一つにすぎないと考えると、人口が減少する中においても、住民サービスの質を維持し、さらには質的向上を目指す施策もありうるからである。

 次章以下に述べる「励ます地方自治」は、人口減少順応時代を乗り切る基本理念になると思われる。

 これは増田レポートの「調整的政策」である。「人口減少にともなう経済・雇用規 模の縮小や社会保障負担の増大などの マイナスの影響を最小限に食い止め る」政策である。
 ただ私の場合は、守りの政策というよりも、これを奇貨として、より豊かさを目指すものである。

 

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