松下啓一 自治・政策・まちづくり

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論点10.取り組むべきは、「出生意欲の低下」対策ではないか

2025-01-21 | 地方消滅

出生数減少の要因は、①人口の減少、②婚姻率の低下、③有配偶出生率の低下が絡み合っている。
合計特殊出生率は、②有配偶率と③有配偶者出生率を掛け合わせたものである。未婚率が高ければ合計特殊出生率は下がり、有配偶者出生率が下がれば、合計特殊出生率もさがる。日本は、①,②,③の3つが下がっている。

一番大きな要因は、人口の減少である。おおもとの若い男女が減ったら、いくら②×③の合計特殊出生率が上がっても全体の数は少なくなる。しかし、明日から人口が増えても、効果が出るのは早くて20年後である。即効的な政策は移民くらいしかない。

未婚率であるが、50歳時の未婚割合は、1980年に男性2.60%、女性4.45%であったが、2020年には男性28.25%、女性17.81%に上昇している。この傾向が続けば、いずれ、男性で3割近く、女性で2割近くになると推計されている。

有配偶者出生率も下がっている。夫婦の完結出生児数は、1970年代から2002年まで2.2人前後で安定的に推移していたが、2005年から 減少傾向となり、2021年には過去最低である1.90人になった。有配偶出生率の低下は、若い世代における出生意欲の低下を反映している。

ここから出てくるのは、当面の政策は、「結婚の希望の実現」と「希望どおりの人数の出産・子育ての実現」である。これが20年後には、結婚適齢期若者の増加につながっていく。

しかし、今、自治体や国が力を入れているのは、「子育てしやすい環境の整備」に重点を置いた施策である。それも重要であるが、国や自治体が取り組むべきは、「出生意欲の低下」対策で、「若い世代が結婚し、子を産み・育てたいと思えるまちを作る」ことであるはずである。

その目標がきちんと定まれば、それに向けて、国ができること、自治体ができることがあるだろう。結婚の奨励のようなことは、国はやりにくいだろう(戦争前の産めや増やせの記憶)が、しかし、地方ならば、結婚しろと言う政策はできないが、結婚したい人に寄り添う政策はできるだろう。

他方、結婚制度や経済的障壁の除去などは、国でなければできないが、国がやるべきことも山ほどある。

『地方消滅』で弱いのは対案・対策である。ここで提言すべきは、
(1)少子化対策の方向性を示す
  「子育てしやすい環境の整備」→「若い世代が結婚し、子を産み・育てたいと思えるまちを作る」への重点の転換
(2)国がすべきこと、地方がすべきことの明示。その連携。
(3)それぞれの実践的で効果的な施策
の提言ではなかったのか。

 

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