松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆未完の論文・ごみの有料化(三浦半島)

2015-03-31 | 地方自治法と地方自治のはざまで

 パソコンのなかに未完の論文がいくつかある。ごみの有料化をめぐる議論はそのひとつである。

 1992年に横浜市の環境事業局計画課で、減量・リサイクルの条例をつくり、その一環として、ごみの有料化を研究したことがある。ただ、当時は、有料化している自治体はほとんどなかったし、私の関心の中心がドイツのデュアルシステムだったので、研究レベルにとどまっていた。その後、大学に移り、あらためて研究論文としてまとめようとしたものだと思う。

 一時、だいぶ調べたが、その後、本格的な研究はしていないので、私の知識は、時代遅れになってしまった。それに反して、ごみの有料化を実施する団体はどんどん増え、2013年9月現在で、1078団体、62%を越えている。

 ごみの有料化の方式には、①従量制(ごみ量に応じて料金が増えるもの)、②多量のみ有料(ある量までは無料だが、一定量を超えると有料になる)、③定額制(ごみ量に関係なく、料金が一定のもの)等があるが、その当時は、一定量は無料であるが、限度を超えると有料になる超過従量制が妥当だと考えていた。

 それは、はじめから有料にすると、地方自治法227条に抵触すると考えたからである。
 227条によれば、手数料は、「特定の者のためにする事務」に該当すれば取ることができる。ここに、特定の者のためにする事務とは、「一個人の要求に基づき主としてその者の利益のために行う事務(身分証明、印鑑証明、公簿閲覧等)の意であり、その事務は一個人の利益又は行為のため必要となったものであることを必要とし、もっぱら地方公共団体自身の行政上の必要のためにする事務については手数料を徴収できない」(自治省自治課長・昭和24年3月14日回答)とされている。ごみ処理は、常識的には、住民全体の利益のために行われていて、一私人の要求に基づき、主としてその者の利益のために行う事務をいうのには、無理があると考えたからである。

 それでも、当時は、廃棄物処理法6条の2の第6項に、「 市町村は、当該市町村が行う一般廃棄物の収集、運搬及び処分に関し、条例で定めるところにより、手数料を徴収することができる」という規定があった。これは、当時の厚生省が、ごみ処理事業は、住民みんなのために行われる場合が普通なので、地方自治法の規定だけでは手数料を徴収するのは難しいと考え、いわば地方自治法の特別法として、この規定を置いたのである。この立場によれば、手数料をとることは問題ない。

 ところが、平成11 年の地方分権一括法で、第6条の2第6項は削除されることになる。今度は、環境省の説明は、ごみ処理の手数料は、地方自治法の中で読めるので、手数料を取ることができるという廃棄物処理法の規定を削除したという。廃棄斑処理法第6条の2第6項は確認規定だったということになる。ここでまた手数料とは何かという問題に戻ることになる。

 私が超過従量制をよいと思うのは、無料の基本部分は、税金で行い、それを超える超過部分は、みんなのためのサービスというよりは、その人のためのサービスだから、手数料をとれると構成になるからである。しかし、結局、大方の支持するところにはならず、今では、単純従量制が主流となっている。

 最近、多くの自治体で戸別収集制が採用され始めているが、これがごみの有料化と関係するようだ。私が現役時代にも戸別収集はあったが、これはあくまでも高齢者や障がい者のための制度だった。

 戸別収集はメリットもあるが、コスト負担は膨大になる。財政が厳しいこの時代、戸別収集制を後押したのが、ごみの有料化だという。227条の手数料であるには、一私人の要求に基づき、主としてその者の利益のために行う事務であることが求められるが、受益者を特定するために、この戸別収集制をに切り替えたというのである。もし本当だとすると、本末転倒である。それとも、そんなおかしな理由からではなくきちんとした背景や理由があるのだろうか。以下は、今年度の授業の中で考えよう。

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