松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆地域要件を考える(三浦半島)

2015-03-30 | 地方自治法と地方自治のはざまで

 入札の際の地元優先(地域要件)は好ましいことか。

 地域要件とは、入札に際して、その自治体に本店または営業所があることを入札参加資格とするものである。経済の地域への囲い込み、地域経済の活性化が狙いで、地域業者を下請などで使うことで、地元産業の振興を図り、同時に地元住民の雇用を確保すること等によって、税収の増加等もねらっている。

 他方、地域要件の弊害も指摘されている。国会における議論であるが、「地元企業に仕事を下ろすというのは首長さんにしては大事なことであることは理解できますが、それが本当に一方で、いいものを安く調達するということを忘れて、もう地元要件オンリーと、ほかの業者は入ってくるなと、こういうことをやりますと、結局高い買い物になる。それから、おのずと人数が限定されますので、これは場合によっては談合をやってもいいというサインにもうなりかねない」(2009年6月2日参議院経済産業委員会での質疑)

 これに対して、判例の立場は、「地元の経済の活性化にも寄与することなどを考慮し,地元企業を優先する指名を行うことについては,その合理性を肯定することができる」としつつ、価格の有利性確保(競争性の低下防止)がないがしろにされることがあれば、裁量権の濫用に当たる可能性があることを示している(平成18年10月26日最高裁判所)。

 こうした判断の根拠が、地方自治法施行令167条の5の2である。ここでは、一般競争入札の参加者の資格について、「普通地方公共団体の長は、一般競争入札により契約を締結しようとする場合において、契約の性質又は目的により、当該入札を適正かつ合理的に行うため特に必要があると認めるときは、前条第一項の資格を有する者につき、更に、当該入札に参加する者の事業所の所在地又はその者の当該契約に係る工事等についての経験若しくは技術的適性の有無等に関する必要な資格を定め、当該資格を有する者により当該入札を行わせることができる」と、地元優先を法が認めている。

 むろん施行令では地元優先は限定的に考えられているが、実際の運用では、地域要件をつけるのがむしろ一般的になっている。むしろ地元企業に受注させるために、行き過ぎた地域要件の設定や過度の分割発注などが問題になっている。

 以上のような状況の中で、地域要件をどのように考えるか。その結論は容易ではないが、守るに過ぎるというのが感想である。地域要件に伴う業界保護によって、地域の業界は保護されるが、結果として「高かろう、悪かろう」になると、住民全体が損害を被ることになる。業界にとっても、結果として、業界の競争機会を減らし、不適格企業や非効率企業を温存させる結果となる。人口減少社会であるから、守りに入ったら、どんどんと縮小再生産の渦に巻き込まれてしまう。イノベーションには、適度の競争は不可欠だろう。

 自治体の規模が小さすぎる場合、この地域要件は、住民にとってさらにマイナスに働く。小さすぎて、適正な企業が乏しく、「高かろう、悪かろう」が酷くなるからである。合併は反面のデメリットもあるので、広域連合を地域の単位にすることもひとつの方法である。ヒントはむろんEUの取り組みである。

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