松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆地方自治論4・伝来説と固有権説の距離(相模大野)

2014-05-07 | 1.研究活動
 今年度の地方自治論は、同時間帯に強力な授業(テレビ番組を見るという授業らしい)があった関係で受講者が思いのほか少ないので、典型的な地方自治論の授業を止めて、基本にさかのぼった授業をやっている。

 地方自治論の4回目は、伝来説と固有権説の距離を考えた。一般に思われているほど、両者には差がないという話なった。

 自治権の淵源は大別して伝来説と固有権説に分かれている。
 まず、歴史的に見えれば、固有権説が正しい。地方自治は、国家以前から存在し、とりわけアジアモンスーン地域に暮らし、稲作を行ってきた日本では、地方自治は、独自な形で強固に発達した(前回までの授業)。

 他方、近代の国民国家になって、自治権は国家主権のなかに包摂されることになる。主権は絶対権で、国内的にも統一的な統治権が求められる。この立場では、伝来説が妥当ということになる。

 しかし、伝来説で貫くと、不都合が起こる。小さいとはいえ、日本は、地域ごとに違いがある。北の稚内と沖縄の波照間島とでは、緯度だけでも25度の違いがある。都市公園の三種の神器は、砂場、ブランコ、滑り台であるが、大阪国際大学のゼミ生で宮古島から来ていた学生は、そんなものでは遊ばずに、海に飛び込むのが子どもの遊びと言っていた。

 ここから、この前行った宮古島の話となる。特に力を入れて話したのが、まもる君。交通安全の人形であるが、よく分からないという学生もいたので、スマホを出してもらって確認してもらった。私は、授業でも、自治体職員向けの研修でもスマホはどんどん使う。使えるものは何でも使えだからである。

 ここから、この日の授業は大きく脱線することになるが、ここでは省略しよう。ただ、学生が私のブログを見つけ、「マロンサンタ」の話になったことを報告しておこう。

 固有権説は、市民的な感じがするが、それは本当か。固有権説では、地方ごとの自主性を認めることになる。それは、経済力の差をそのまま許容することでもある。結局、東京の一人勝ちになる。豊かなところはどこまでも豊かに、貧しいところは貧しいままである。

 たしかに、東京はいろいろなものを産み出し、税金もたくさん払うが、それは東京だけの力なのか。地方は、税金は産まないが、人材を提供し、水や空気、森や林といった環境を提供している。両者がセットで、私たちの国である。

 地方自治の基本は助け合いである。地方交付税制度は、批判もあり、課題もあるが、日本に住む住民ならば、同じサービスを受けられるという安心感を生んでいる。それが私たちの社会の魅力であり、強さの源泉である。

 いずれにしても、伝来説や固有権説から単純に結論を導く発想は、あまりに単線的で、単純すぎるということだろう。

 関東地方で地震があった。わが研究室でも本が落下するという被害があった。学生に言ったら、いつでも地震直後のような乱雑さで、地震被害とは現認できないととのことであった。
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