1.多くの自治体で、公務員倫理に関する条例等がつくられている。形式は、条例のほか、規則、要綱などさまざまである。
2.背景となるのは、①当該自治体における汚職等の不祥事、②国家公務員倫理法の制定である。
国家公務員倫理法(平成11年法律129号)は、平成11年8月13日に公布され、平成12年4月1日に施行された。この法律は、国家公務員と利害関係者との癒着、不祥事を背景につくられたが、国家公務員を対象にして職員倫理の原則、国家公務員倫理規程の策定、贈与等の報告等を定めている。
地方公共団体についての規定もあり、「この法律の規定に基づく国及び行政執行法人の施策に準じて、地方公務員の職務に係る倫理の保持のために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。」(43条)としている。
余計と言えば余計な規定であるが、以降、職員倫理の原則、職員倫理規則の制定、贈与等の報告等を規定した職員倫理条例等を制定する自治体が増加していく。
3.この条例等でポイントとなるのが、倫理行動規準である。
どこの条例等もおおむね次の5本の柱で職員の行動基準を定めている。
第3条 職員は、公務員としての誇りを持ち、かつ、その使命及び責任を自覚し、次に掲げる事項をその職務に係る倫理の保持を図るために遵守すべき規準として行動しなければならない。
(1)職員は、市民全体の奉仕者であり、市民の一部に対してのみの奉仕者ではないことを自覚し、職務上知り得た情報について市民の一部に対してのみ有利な取扱いをする等市民に対し不当な差別的取扱いをしてはならず、法令を遵守するとともに、常に公正な職務の執行に当たらなければならないこと。
(2)職員は、常に公私の別を明らかにし、その職務や地位を自らや自らの属する組織のための私的利益のために用いてはならないこと。
(3)職員は、法令により与えられた権限の行使に当たっては、当該権限の行使の対象となる者からの贈与等を受けること等、市民の疑惑や不信を招くような行為をしてはならないこと。
(4)職員は、職務の遂行に当たっては、公共の利益の増進を目指し、全力を挙げてこれに取り組まなければならないこと。
(5)職員は、勤務時間外においても、自らの行動が公務の信用に影響を与えることを常に認識して行動しなければならないこと。
一見して分かるように、地方公務員法の服務規定をさらに詳細に、具体的に記載した条例等である。
4.この条例等の規制は公務員の私的行動に及んでいる
公務員とすると、公務の信用、公正な職務の執行に対する市民の疑惑や不信を招くおそれないように、要するに市民から疑念を持たれることがないような行動が求められる。
公務の信用とか、公正な職務への疑念は、市民が思うことであって、そう思われたら負けのような概念である。ならば、君子危うきに近寄らずで、市民との接触を避けた方が無難ということになってしまう。あらぬ疑いをもたれることがないように、公務員の行動を抑制的にしてしまう側面がある。
「高い倫理性に基づく行動」と言われるが、結局、市民から超然としていた方がいいということになる。