松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆会派制を考える(三浦半島)

2014-08-11 | 地方自治法と地方自治のはざまで

 議会について、考える機会はさほど多くはないが、新城市議会における論議をきっかけに、いくつか考えることになった。今回は、「会派」である。

 議会は、政策提案を行うようになるべきだというのは大きな方向性であるが、その手段として、議会基本条例などで、会派制を採用する議会も多い。他方、議会・議員を政策集団とするために、会派制を解消する議会もある。どのように考えるべきか。 

 会派制を採用する論理としては、個々の議員ではなく、政策集団となることで、課題の調査、研究、検討を深く行うことができ、執行部に対して、きちんとした政策提案できるようになるというものである。

  他方、会派制を取りやめる側の論理としては、地方議会においては、議員一人ひとりの考え方や思いを積極的に発現させた方が、きちんとした政策提案できるきようになり、そのために、議会運営委員会や常任委員会の機能を充実強化するということになる。

  議会については、議員の思いと住民の思いに乖離がある。議員のほうは、それなりに一生懸命やっていると考えているが、他方、住民は、議員は何をやっているのか分からないと思っているのである。その原因のひとつが、議員はちっとも政策提案していないという住民の不満である。執行部に追従する意見、実現可能性のない「政策」提案、支持者向けの演説ばかり見せられて、要するに、住民がシラケてしまっているのである。

  会派制の採用は、その答えのひとつであるが、会派制は手段であるので、本来の趣旨・目的である、政策論議を深めるためという基本部分が曖昧だと、手段が独り歩きしてしまうことになる。会派が、各委員会委員の割り当てや、代表質問の時間の配分に使われたり、議長選出の母体として使われたりもする。

 会派制の問題点のひとつは、議会のなかで、会派間対立が起こることである。もし日本の地方自治が議院内閣制を採用していたら、この議会内の会派対立は、別におかしなことではない。議院内閣制は、議会の多数会派(与党)が、執行部の代表者(首相)を選ぶ制度であるから、多数をとるために、議会内で政策競争が起こり、会派間対立が起こるからである。

  他方、よいか悪いかは別として、日本の地方自治制度は、二元代表制を採用している。これは首長と議員の双方が、住民によって選ばれる制度であって、議会が首長を選ぶものではないので、地方議会には、首長を選ぶための仕組みである与党野党を議会内につくる必然性はない。二元代表制では、政策競争は、首長と議会・議員の間で起こるので、首長との論議も会派が前面にでるのではなく、首長対議会の論議になるようにしていくのが本来の姿ということになろう。

 そうはいっても、あるべき論だけでは、うまくいかないので、首長と議会の間で政策競争が起こるような仕組みづくりが必要になる。新城市で行おうとしているのは、議会運営委員会や常任委員会を機能強化することで、議会・議員の力をつけようということであるが、一筋縄ではいかず、模索し、苦闘しているということなのだと思う。

 私は議員ではないので、実感としてよく分からないが、会派制は、議員としての活動において邪魔くさくないのだろうか。
 地方の政策課題は、国の政策課題と違って、きわめて日常的なものである。今日では、どの町でも、市政の最重要課題は、防災である。大災害の発生から、住民の命をどのように守るかである。次いで、子どもの安全、高齢化問題も市政の重要課題である。地域では、集団的自衛権も国境紛争も、リアルな政策課題ではない。

 では、防災などは、会派によって違いが出るのだろうか。防災、子どもの安全、高齢化問題など地域の諸課題に対する考え方がすべて一致するメンバーが集まる会派などはできるのだろうか。会派のために、自分の意見を我慢して、せっかくの議員一人ひとりの知見を活かせないという場面が出てくると、もったいないと思う。

 ただ、仲間を募って、政策課題を勉強することは大いに結構である。それを会派として固定し、そこにいろいろな制度を積み上げるから、おかしなものになってしまうのだろう。テーマごとにもっとフレキシブルに、名称も会派などと格好をつけず、政策研究会と言えば、本来の趣旨に合致するようのではないか。

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