松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆ゴミ箱モデル(三浦半島)

2014-08-13 | 1.研究活動

  海外へ調査に行こうと考えたが中止になり、まとまった時間ができたので、資料をつくっている。そのひとつが、「新しい政策立案」。9月に行う「政策の立案研修」のレジュメづくりを兼ねている。

  政策科学に、政策決定論というのがある。どのようにして政策が決まっていくかを理論化したものである。

 理想形は、合理性モデルである。政府は、明確な目標や価値を実現するためにもっとも合理的な選択をするというものである。政策は、①決定の枠組みと評価基準を決める、②すべての選択肢を出す、③選択肢を評価する、④最も好ましい選択肢を選ぶ、という規範的な手続きで行われるというものである。

 それとの対局にあるのが、ゴミ箱モデルである。組織における意思決定は、政策の選択機会(ゴミ箱)に、さまざまな課題,解決策,参加者が投げ込まれる。これら諸要素が偶発的に結びついて決定されるというものである。

 ゴミ箱モデルは、体験的によく分かる。また、その前提が面白い。①構成メンバーは、他者との対立を回避するために、自身の選好を曖昧なままにして行動する(不明確な選好(problematic preference))、②構成メンバー達は組織的な問題解決を可能にする情報や知識を有していない(明らかでない技術(unclear technology))、③問題によって意思決定に関わる構成メンバーが異なる(流動的な参加(fluid participation))である。

 要するに、参加者が、合理的に問題を考え、適切な種々選択をして、決定するとは限らないということである。それゆえ、がんばってよく勉強すれば、役職者でなくても、政策提案できるということである。まっとうなことを言えば、全体の意見になっていく。

 水平的な関係である市民間での議論では、このゴミ箱モデルが、かなりストレートに適用される。それゆえ、ゴミ箱モデルを前提に、より合理的な結論に到達するために、それをサポートするファシリテーター(リーダー)の役割が必要になる。一人ひとりの思いを引き出したり、本来持っている知識や知見をうまく活用できるように、基礎的な知識や情報を提供するなどが、ポイントになるだろう。

 行政職員の場合は、問題が選択機会に投入される前に決定されてしまったという場面に総合する場合もあるだろう(首長のマニフェスト、議会で答弁してしまったなど)。「見過ごしによる決定」である。これを担当する自治体職員にとっては、ご苦労なことであるが、実際は、苦労ばかりではなく、やることが決まっていて、むしろ楽だという本音もある。

 実務では、「やり過ごしによる決定」というものもある。本当なら正面きって解決しなくてはならない問題があるが、解決するためのエネルギーがあまりにも大きいので、解決はやりすごし、決定だけを行うものである。「とりあえず」決定であるが、問題をやり過ごしているうちに問題のほうが出て行ってしまうことになる。みんながヒートアップして、冷静な議論ができないと思う時は、この手法を採用する。 

 政策決定は、多くは、時間との勝負になるが、この「時間がない」が、政策決定論における重要な要件ではないかと、ひそかに思っている。ただ、この点に言及した政策決定論はないようで、私も、これをテキストに書く勇気は、ない。

 連れ合いとラインを始めたので、原稿を書きながらのスタンプ合戦となっている。

 

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