松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆人口減少を受容した自治運営(本郷台)

2015-09-03 | 1.研究活動

 神奈川県下自治体職員との共同研究である。回数は5回目になった。神奈川県西部や三浦半島地区は、県央地区や横浜・川崎地区への人口の供給源という一方向になっていて、逆にいえば、これら地区に人が入ってくるという社会増は大きく望めない。自然増も、若い人が出てしまうので、これも大きく期待できない。研究テーマは、人口減少を避けることができないものであると受容したうえで、そのなかでも持続可能な自治体をつくるにはどうしたらよいかを考えている。

 これにも、いくつかの方向性があるだろう。ひとつは、人口減少で税収減になっても、つまり貧しくたって、幸せな暮らしをつくるにはという方向である。家庭で言えば、お金がなくたって、家族団らん、みんな仲良く、笑い声がいつも絶えない家庭である。そうしたまちをつくっていくにはを考える方向である。興味深いが、この研究会では、この点についは特に論じていない。

 この研究会で考えているのは、税収等が減る中でも、無駄をなくし、一定のサービスを維持する方法である。そのための手段が、共同処理で、特に新たな制度である連携協約を使って、できることがあるのではないか考えている。

 官官で協力できるケースとして
 ①スケールメリットを生かせる事務、例えば、一自治体ではボリュームが少なくて、委託ができないが、官官連携することで、ボリュームをつくり、それをまとめて委託するなどケースである。
 ②専門性が高い業務の場合、一自治体ではそこまでの人を用意できないので、共同処理することで、人材不足を補うといった場合が考えられる。法規担当の仕事も、これに入るだろう。特に訴訟関係の法務は、法務の総合力がないと対応できないだろう。この力をいくつかの自治体で養い(具体的には、資源、能力を中核的な都市に集中し)、共同利用することも考えられるだろう。水平関係だけではなく、県に委ねるという方法もある。県はどんどん事務を市町村におろしているが、逆に引き受けるケースである。研究会では、県の役割についても、議論の対象になっている。
 ③稀な事案、季節性があって、その時だけ人がほしいというケースもある。いっときのために、人を用意できないので、いわば人のやりくりをして、その事務処理に備えるといったケースが考えられる。②と③は、小さな自治体がフルセットで機能をすべて持つことの困難性である。
 ④人の行動が自治体の範囲を超え、属地性の原則では処理できないもの。たとえば、通勤で通う小田原市に、送り出す自治体と共同で保育所をつくるといったケースである。

 今後、一方では、地方自治は、ますます、地域性を強めていくことになる。地域住民との協働や地域ごとのまちづくりを進めていかなければいけなくなる。他方、地域(自治体)の範囲を超えた対応も問われてくる。ここでも、二項対立、AとBのどちらが善かといった単純な選択はあり得ない。それぞれに価値があるので、それぞれのよさを引き出す粘り強い自治経営の理念と手腕が問われてくる。

 地方自治は民主主義の学校であるといわれ、民主主義とは、価値の相対性であるとされるが、なるほど地方自治のあちこちで、こうした民主主義の原点にさかのぼる必要性が問われるようになったと理解すると、地方自治で起こっている様々な事象の意味や解決の方向性が理解できるようになるだろう。

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