松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆指定地域共同活動団体の条例化を考える⑤団体間の調整

2024-08-18 | 指定地域共同活動団体
 特定地域共同活動との関連性が高い活動との間の調整の実施に関する規定も条例に書きこまれるだろう。

第9条 特定地域共同活動と関連性が高い活動との調整
仮案1 
 市長は、指定地域共同活動団体による特定地域共同活動を他の関連性の高い地域的な共同活動と連携して効率的かつ効果的に行うため、両者の調整を行うための仕組みづくりや担い手づくり等を行うものとする。

1.260条の49第5項の調整規定
 指定地域共同活動団体は、特定地域共同活動を他の地域的な共同活動を行う団体と連携して効率的かつ効果的に行うため、当該特定地域共同活動と他の地域的な共同活動を行う団体が行う当該特定地域共同活動と関連性が高い活動との間の調整を行うよう市町村長に求めることができる。この場合において、市町村長は、必要があると認めるときは、当該調整を図るために必要な措置を講じなければならない(5項)。
 この規定を受けた条文となる。

2.問題意識
 260条の49第5項は、唐突な規定である。もしこの規定が、特定地域共同活動と他の地域的な共同活動を行う団体が行う当該特定地域共同活動と関連性が高い活動との間の調整を自治体職員が直接行うことを求めるものだとすると、これは書きすぎである。
 したがって、それはあくまでも一例と考えて、自治体にとって、より現実的で実効性がある「調整」の内容を条例に書き直す必要がある。その意味で調整に関する規定は、この条例には不可欠な規定と言えるだろう。

3,なぜ唐突なのか
①自治体職員が、直接、団体間の間に立って、調整ができる場合もあるかもしれない。しかし、多くの場合、多くの場合、自治体職員にはその知識も経験も乏しい場合が多い。人手が足りないなかで、一件一件、手間もかかるため、手が回らないであろう。自治の現場を踏まえて、つくられた規定と言えるのか、はなはだ疑問である。
②この規定がつくられた過程も唐突である。4に述べる。

4.この規定ができるまで
(1)第33次地方制度調査会第18回専門小委員会
 これまで小委員会では、「NPOと地縁団体との連携はなかなか解決が進まない難しい課題。行政がNPOを手足のように使おうとするケースなど、行政 や行政に近い地縁団体とNPOが折り合いをつけた形で活動することが難しい現状があり、各関係を解きほぐせるように考えていく 必要があるのではないか」という意見が出されていた。

(2)第33次地方制度調査会第18回専門小委員会補足説明資料
(1)の問題意識を受けて、「市町村は、当該指定を受けた団体の活動を支援するほか、当該団体の求めに応じて、当該団体が他の団体と連携して活動する ために必要な調整を行う。という制度イメージとしている」という説明資料が出された。

(植田住民制度課長)
 「それから、NPOと地縁団体との連携はなかなか解決が進まない難しい課題だと、こういったことを調整したり情報共有を支援することで進めるという意味で、各関係を解きほぐせるというようなことを制度化していくのはあり得る考え方ではないかというような御意見。
 また、公共私の連携につながる一つの制度的な選択として、こういったことを整備していくのは重要だけれども、一方で、自治体の主体性を尊重しつつ、そのニーズですとか、問題解決につながっているかを見極める必要があるのではないかというような御意見等がございました。
 このようなことを基に制度化を考えるとすると、次のようなことが考えられるのではないかというのでイメージを入れさせていただいております。特に団体の申し出によって市町村が指定することができるというようなものの考え方があるのかなということ、これに伴う法的効果としては、指定を受けた団体の活動を支援していくということですとか、団体間の必要な調整を行うようなことが考えられるかなと思っております。
 また、自主性を重んじるという必要がありますことから、その要件ですとか支援の具体的な方法、これは地域の事情に応じて市町村が定めるということかなと考えております」。

 ちなみに、この18回小委員会では、この点に関する疑問等の議論は行われていない。不思議である。この調整規定に関して、調整の内容、調整の可能性等については、審議会では議論が十分行われていないことになる。

 ただ、行政と市民活動団体等とのかかわりに関する基本については、要件や支援の具体的な方法は、地域の実情に応じた対応が必要ではないかという立場から、「さらに言えば、地方公共団体自体が連携・協力しやすい組織ではありません。市民活動の立場から言えば、担当者がすぐ変わってしまう、首長さんが変わってしまうと全く対応が変わってしまうことが市町村との連携のしにくさというところで必ず上がってくるところでございます。今、現場で行われているのは、そうした相互の特性の違いを超えて、そのときにうまくいくことを想定しているのであって、それを制度的にこういう制度ならいいと思いますということをつくって支援すること自体に難しさがあると思っています」(土田委員)という意見が出されているが、委員会全体としては、デジタル・トランスフォーメーション等の議論が中心で、公共私の議論は少なく、さらには、行政は抑制的であるべきという議論は、空中戦になってしまい、作業をつめる議論にはならなかった。

(3)答申では
「プラットフォームの多くは、活動資金、担い手となる人材や運営ノウハウ、他団体との連携などに課題を抱えており、継続的な活動を行っていく上での障壁となっている。これらの課題を解決していくためには、自主的な取組を行えるような環境を構築することに主眼を置きつつも、活動資金の助成、活動拠点や情報共有の場の提供、他団体との連絡・調整など、必要に応じ、市町村が支援を行っていくことが考えられる。」という表現にとどまっている。
 ここでは一般的な表現で、特に異論が出る内容ではないので、議論になりにくかったのは理解できる。

(4)改正法では
 ところが、改正法では、指定地域共同活動団体は、市長村長に調整を求めることができる+市長村長は必要な措置を講じなければならないと踏み込んだ規定になっている。(3)からはずいぶん飛躍した条文になっている。

 むろん、当局は、答申そのまま改正案をつくる必要はないが、審議会における議論を求めるべきだったろう。

5.条例では「調整」をどのように解釈して記述するのか
 こうした経緯を受けて条例ではどのように書くべきか。
 改正法からは、市町村が、指定地域共同活動団体とその他団体との間に立って、具体的な仲介的の役を果たすべきように読むことができる。そういったことが可能で有効な場合もあるかもしれないが、もし、その役割を自治体職員に強いても無理であったり、妥当でない場合も多い。ならば、自治の現場で、実際的で実効的なものに趣旨解釈して、条例に記述する必要がある。

* ちなみに国も「また、自主性を重んじるという必要がありますことから、その要件ですとか支援の具体的な方法、これは地域の事情に応じて市町村が定めるということかなと考えております」(前述)としている。

 ①調整の内容は、具体的な仲介から、それを後押しする仕組みづくりが各種事業の展開まで広範囲に及ぶ。
  ・調整のための相談窓口の設置
  ・相談調整円卓会議の設置、運営
  ・指定地域共同活動団体とNPO等のマッチング事業
  ・協働コーディネーターの育成
 ②自治体職員の役割は、プレーヤーからコーディネーター・ファシリテーまで広がる。
 自治体職員は、「プレイヤー」とし ての役割として団体間を調整する場合もあるが、指定地域共同活動団体と関連団体の活動を つなぐ「コーディネーター」、連携をサポートする「ファシリテーター」としての役割も重要になる。
 
 ここはもう少し考えてみよう。
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