松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆ふるさと納税を考える①

2020-04-19 | 域外住民への関与
 域外住民への関与施策として、ふるさと納税を考えよう。

 横浜市では、税では仕事をしたことがないし、美田は残さずというと格好いいが、要するに、金は使ってなんぼを身上とする父親に育てられたので、税は苦手分野である。毎年の確定申告も苦労する。しかし、「収入以上の税金はとられない」と誰かが教えてくれたので、気が楽になる。

 さて、ふるさと納税であるが、まず全体的な印象は、「ひどい」制度である。

 もともとは、「今は都会に住んでいても、自分を育んでくれた「ふるさと」に、自分の意思で、いくらかでも納税できる制度があっても良いのではないか」という発想から始まったものである。

 総務省は、ふるさと納税には三つの大きな意義があるとしている。
 第一に、納税者が寄附先を選択する制度であり、選択するからこそ、その使われ方を考えるきっかけとなる制度であること。
それは、税に対する意識が高まり、納税の大切さを自分ごととしてとらえる貴重な機会になります。

 第二に、生まれ故郷はもちろん、お世話になった地域に、これから応援したい地域へも力になれる制度であること。それは、人を育て、自然を守る、地方の環境を育む支援になります。

 第三に、自治体が国民に取組をアピールすることでふるさと納税を呼びかけ、自治体間の競争が進むこと。それは、選んでもらうに相応しい、地域のあり方をあらためて考えるきっかけへとつながります。

 ここまでは、立派である。ところが、現実は、どれだけの人が、①税を考え、②ふるさとへの応援、③地域のあり方を考えて、寄付しているのだろうか。多くは、返礼品のカタログショッピングになってしまっている。感謝や助け合いの気持ちを醸成し、寄付文化を育てるといった、本来の趣旨は、すっかり忘れられ、どれがお得なのかに始終するようになった。

 500億円を集めた泉佐野市などは、地域に縁がない、アマゾンギフト券まで売り出したいう。地域に縁がないと言ったが、もしかして、地元からブラジル移民にたくさん行き、アマゾンにも入植したので、地元と縁があるという議論かもしれないが。

 こうしたふるさと納税を論じるのは、一筋縄ではいかない。そもそも誰が悪いのかだって、はっきしない。甘い制度設計をした総務省にも責任の一端はあるし、悪乗りする地方自治体はどうかと思うし、アマゾンの券に群がる国民も、「あへぇ」である。気がついたら、オリエント急行殺人事件のような世界である。

 得をするのは、寄付者と寄付先の自治体で、損をするのは、寄付者の住む自治体と国であるが、個人住民税を失った寄付者の住む自治体も、地方交付税(寄付者の所得税や消費税も含む国民全体の税金)で75%は補填されるので、大きな目で見ると、国民全体のお金をぐるぐる回している。回す手間だけでも、結局、みんなで損をしているのだろう。

 ともかく、少しずつ勉強しながら、ふるさと納税の難問に挑戦してみよう。
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