松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆圏域行政を考える③自治体の現状

2020-05-17 | 域外住民への関与
 圏域行政は全体に評判が悪い。その内容は、おいおい見ていくが、最初に私の問題意識を書いておこう。

 それは、「市町村の現状が、酷い」というものである。地域の期待に十分応えきれなくなっているし、それがどんどん酷くなっていくという実感である。職員は、よく頑張っているが、個人の踏ん張りでは、乗り越えられない。このままでは、地方自治が内から壊れてしまうというのが、私の認識である。

 背景は、自治体の自主財源率である。経済的に自立してこそ、大人であるが、地方の財政状況は、どんどん酷くなっている。これは地方交付税の不交付団体が、1割もないという問題ではない。地方交付税は、自治体のお金なので、もらって悪いということはない。金持ちの自治体も貧乏な自治体もあり、それをみんなで融通しあって、同じような暮らしを維持しようという制度だからである。

 問題は、その原資で、これについてはすでに述べたように、将来世代に借金を負わせて、いまを暮らしている、この暮らしかたが問題である。家庭で考えたら、おかしいことが分かるだろう。子どもの借金を負わせて、今を楽しむ親は、最低だと思う。そこからどう脱却するか、示す責任がある。

 第二は、そうした事情で、各自治体の財政は苦しいから、結局、職員を減らし、バイトを入れて仕事をするやり方である。仕事は、どんどん増えているから、職員は、決まった最低限しかできない。ほかの仕事に関心を持つ余裕もないし、話し合う余裕もないから、その隙間をつかれて、おかしなことが起こる。

 その結果、結局、仕事ができる職員に、どんどんしわ寄せがきて、その職員も、そのうち馬鹿らしくなって、どんどんやめてしまう。私の知り合いでも、今年も、何人もやめた。

 小さな自治体では、もっと酷いことになる。一人で、中規模自治体の5係くらいを担当するから、どんな優秀な職員だって、とてもフォローできない。前例のままやるか、本を見ながらやるかであるが、これでは、とても仕事をしているとはいえない。これは職員が、悪いということではなくて、もともと無理である。

 私のゼミ生だったリサは、最初に、小さな自治体の総務課に配属され、一人で、法規もやり、研修もやり、施設管理もやりで、そんなことを教えてこなかったし、とてもできるわけがない。

 技術職や専門職に至っては、そもそも自治体にいないというのが現状である。これでどうやってフルセットで仕事をやっていくのだろうか。地域のニーズにこたえているといえるのだろうか。

(1)市町村道の安全を確保するための点検や補修計画の策定業務には、専門の知識を持つ土木技術職員が不可欠だが、土木技術職員はいますか。いない場合は、どうやっていますか。きちんとできていますか。
(2)保健師、栄養士、指導主事がいますか。いない場合は、きちんとできていますか。
(3)法務事務、訴訟事務をきちんとこなせる職員がいますか。担当者はいるでしょうが、きちんとできていますか。
(4)新型コロナウイルス対策で、医学、公衆衛生の専門知識から対応できる職員がいますか?
(5)バイトの職員が60万人もいるが、これは好ましい選択ですか。それともやむなくですか。住民サービスや職場の健全化など、問題はありませんか?

 実は、いないのだという市町村もあるのではないか
 市長会や町村会は、圏域に強く反対するが、団体自治も重要であるが、こうした身近な現状に、どう対応しようとするのか、その道すじを示してほしい。このように対応するので、だから圏域など考える必要がないと明確に言ってほしと思う。

 基本が整っていない状態で、これから何度もやってくるであろう難局に、対応できるはずもない。
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