松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆ふるさと納税⑩これまでの経緯の整理

2020-04-22 | 域外住民への関与
 地方税法の改正によって、返礼品は3割以下、地方の産物に限られるようになった。そこまでの経緯をまとめておこう。総務省が、国地方紛争処理委員会へ出している資料による。

1.見直しの着手
(1)平成28年まで 
・返礼品が徐々にエスカレート。当初は、会議等で注意喚起。
・28年になって、地方からの要望「自治体の自主性に任せているだけでの適正化は困難であり,国において,返礼品に対する一定の基準やルールを設けるべきとする都市が多い」(全国市長会)

(2) 平成29年度 地方団体間の返礼品競争の過熱を受けて
・平成29年4月1日,総務大臣通知(「ふるさと納税に係る返礼品の送付等について」(平成29年4 月1日付け総務大臣通知。総税市第28号。以下「平成29年通知」という。))
 「制度の趣旨に沿った責任と良識のある対応を要請した上で,返礼割合に関しては,「社会通念に照らし良識の範囲内のものとし,少なくとも,返礼品として3割を超える返礼割合のものを送付している地方団体においては,速やかに3割以下とすること。」と具体的な水準が示された。

・総務省は報告を求める(平成29年5月)
 ふるさと納税制度の健全な運用を進めるため,ふるさと納税制度の趣旨に反するような返礼品を提供している一部の地方団体に対し,個別に,返礼品の提供を見直し,今後の見直し方針等を報告するよう求めた・

・依然として続ける一部自治体
 平成29年度の後半になっても,依然として,一部の地方団体において,返礼割合が高い返礼品を始めとして,ふるさと納税の趣旨に反する返礼品が提供されている状況が見受けられた。カタログギフトや海外からの輸入品まで。

(3)平成30年度
・平成30年4月1日 ふるさと納税に係る返礼品の送付等に特化した総務大臣通知(「ふるさと納税に係る返礼品の送付等について」(平成30年4月1日付け総務大臣通知。総税市第37号。以下「平成30年通知」という。))

 返礼品の3割以下 「依然として,一部の団体において,返礼割合が高い返礼品をはじめとして,ふるさと納税の趣旨に反するような返礼品が送付されている状況が見受けられます。仮にこのような状況が続けば,ふるさと納税制度全体に対する国民の信頼を損なうこととなります。今後,制度を健全に発展させていくためにも,特に,返礼割合が3割を超えるものを返礼品としている団体においては,各地方団体が見直しを進めている状況の下で,他の地方団体に対して好ましくない影響を及ぼすことから,責任と良識のある対応を徹底するようお願いします。」

 地場産品 「地域資源を活用し,地域の活性化を図ることがふるさと納税の重要な役割でもあることを踏まえれば, 返礼品を送付する場合であっても,地方団体の区域内で生産されたものや提供されるサービスとすることが適切であることから,良識のある対応をお願いします。」

・見直す意向がない平成29年度受入額が10億円以上の市区町村の公表
 総務省は,平成30年7月,平成29年度実績に係るふるさと納税の現況調査結果を公表した際,平成29年通知を踏まえた市区町村の対応状況について,「返礼割合3割超の返礼品及び地場産品以外の返礼品をいずれも送付している市区町村で,平成30年8月までに見直す意向がなく,平成29年度受入額が10億円以上の市区町村」として泉佐野市を含む12地方団体の名称を公表する。

・相変わらず見直さない自治体
 平成30年9月1日現在の返礼品の見直し状況を調査して取りまとめたところ,全国的な見直しが進んでいる中で,一部の地方団体では,依然として趣旨に沿わない返礼品を提供し続けている実態が明らかとなった。

・趣旨に沿った返礼品とするように見直しを行った地方団体からの苦情
 ①不公平感を無くしてもらいたい,②公平な仕組みの下で,全地方団体がルールを遵守すれば,自身の地方団体に対する納税も増えるはずである,③返礼品によって寄附をどんどん集める一部自治体の極端なやり方により,制度が歪んでおり,きちんと是正して,適正な運用を図る必要がある。

・制度見直しを発表
 同年9月11日の閣議後記者会見で,総務大臣は,「過度な返礼品を送付し,制度の趣旨を歪めているような団体については,ふるさと納税の対象外にすることもできるよう,制度の見直しを検討することといたしました。総務省において,見直し案を取りまとめ, 与党の税制調査会においてご議論いただきたいと思います。」と発表した。

・あわせて、再度、見直し依頼
 「貴職におかれては,今般,総務省が制度の見直しを検討せざるを得なくなった現状を認識していただき,貴団体の返礼品について,一日も早く,見直しを行っていただくようお願いします。」と要請するとともに,「貴団体における見直しの取組内容等については,平成3 0年11月1日時点で調査を実施する予定」であることを明記した通知(「ふるさと納税に係る返礼品の見直し要請等について」(平成30年9月11日付け総務省自治税務局市町村税課長通知。総税市第74号。以下「平成30年9月通知」という。))を発出した。

・同年10月,「ふるさと納税に係る返礼品の送付状況について」(平成30年10月16日付け総務省自治税務局市町村税課長通知。総税市第90号。)を送付し,平成30年11月1日時点の返礼品の送付状況を調査
 泉佐野市は回答を拒否したほか,全1,788団体のうち25団体(約1.4%)が,返礼割合3割を超える返礼品を提供しており,一部の地方団体(泉佐野市を含む。)が多額の寄附金を集める状況が続いていることが確認された。

・いよいよ見直しに着手
 30年11月20日に開催された地方財政審議会、寄附金の募集を適正に行う地方団体をふるさと納税の対象とするよう,与党税制調査会にふるさと納税制度の見直し案を諮ることとした。
 平成31年2月8 日に閣議決定され,第198回通常国会に提出された。地方税法改正法案

・地方税法等の一部を改正する法律」(平成31年法律第2号)
 同年3月2 7日に成立,同月29日に公布され(ふるさと納税制度の見直しに係る部分については,原則令和元年6月1日施行)

・改正案の提出、国会審議の間、泉佐野市は「100億円、閉店キャンペーン」
 「自制」を求めて総務省が出した通知には「強制力はなく、従うかどうかは各自治体の判断だ」として、国会で議論される最中に「閉店キャンペーン」と銘打って、返礼品に加えてAmazonのギフト券を贈る取り組みを展開。

(4)1年4ヶ月指定と不指定
 令和元年度における総務大臣による指定(令和元年5月14 日)において1年4ヶ月指定となった地方団体と不指定になった4団体(泉佐野市を含む。)
 不指定は、何度も注意されているのに、返礼割合3割超の返礼品や地場産品以外の金券類の提供等を行い続けた。これを許したら、示しがつかないというのが本音だろう。
 
(5)国地方紛争処理委員会
 最大の争点は、過度の返礼品競争を受け、改正地方税法に基づき同省が設定した基準の除外理由が妥当かどうか。「昨年11月から今年3月までの寄付募集について、他自治体に多大な影響を与えていない」との条件を設け、6月の新制度スタート前の運用が不適正なら除外することを示していた。
 委員会の答申は、泉佐野市はやりすぎだとしたうえで、しかし、指定の可否は、この基準ではなく、新制度スタート後に不適正な取り組みをしたかどうかで判断すべきある。別の基準でやるべきだ。
 閉店キャンペーンまでやられ、コケにされた国の気持ちは分かるが、ある意味、もっともな判断といえる。

(6)大阪高裁そして最高裁
 大阪高裁では、国の主張が認められたが、国地方紛争処理委員会の主張のほうが、一理あり、最高裁で、逆転されるのではないかといわれる。ただし、これは、これは、泉佐野市を不指定にした部分であって、返礼品競争を是認したわけではない。

(7)地方交付税の大幅減少
 国は、泉佐野市は、ふるさと納税の寄付金で、実質、不交付団体と同じだから、地方交付税を大幅に減らして配布した。これも訴訟になっている。
 地方交付税の寄付は、地方交付税の基準額に参入しないことがルールなので、国のやり方は、是認されないのではないか
この点については今後注視したい。
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