松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆ふるさと納税⑫最高裁判決

2020-07-09 | 域外住民への関与
1.最高裁判決
 泉佐野市vs総務省は、国の敗訴になった。過去の行状を持ち出して、今の制度から排除するやり方は、それはルール違反だというものである。多くの解説が、法律の論理として、この判決を妥当だとしている。泉佐野市のやり方は、当不当から考えれば、ひどい(不当)だと思うが、そのときは、別に違法ではなかったので、合法・違法を争う法律論になれば、このような判決になる。

・最高裁判決の要旨を記録しておこう

 ①新ルールの改正以前は、返礼品の提供について、特に定める法令上の規制は存在せず、総務大臣により「技術的な助言」が発せられていたにとどまっていた。地方自治体は、国の助言等に従って事務を処理すべき法律上の義務がない。

・地方自治法247条3項には、「国又は都道府県の職員は、普通地方公共団体が国の行政機関又は都道府県の機関が行った助言等に従わなかつたことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない」と規定されている。

 ②法律の規定の趣旨からみると、地方自治体に不利益を与えるような基準を大臣の裁量に委ねるのは適当ではない。したがって、告示において、本件改正規定の施行前における寄附金の募集及び受領について定める部分を指定除外の要件としたことは、委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効というべきである。

 ・ふるさと納税の指定基準である告示2条3号には、「他の地方団体に比して著しく多額の第1号寄附金を受領した地方団体でないこと」を要件とした。

 ③アマゾンギフト券の交付は、社会通念上節度を欠いていたと評価されてもやむを得ないものである。法律施行前における泉佐野市の返礼品の提供の態様をもって、法律施行後においても同市が同様の態様により返礼品等の提供を継続するものと推認することはできない。

 ・ふるさと納税の指定基準である告示2条3号の趣旨は、以前に、羽目を外す度が過ぎることをしたから、これからも同じことをするだろう。だから排除していいという論理であるが、それはやはり無理がある。頭にきたから外した感じがミエミエで、明らかに無理筋である。

 ・総務省とすると、他の自治体の手前、無理筋であっても強引にやらざるを得なかったという理由もあるだろう。同時に、総務省が言えば、無理も通るだろという判断もあったと思う。ところが、それに逆らう自治体が現れて、更に頭に来て、意固地になったというのも半分以上あるだろう。

 裁判では、泉佐野市が「勝訴」した。アマゾン交換券が支持されたと思った人も多いだろう。
 ネットを見ると、さっそく泉佐野市特設サイト・応援キャンペーンみたいなものが始まった。泉佐野市=お得感のイメージがあるうちに、さらに一儲けしようということなのだろう。いやはやである。

2.住民概念の広がり
 ふるさと納税を巡っては、たくさんの論評があるので、そちらを参照してほしい。ここでの私の関心は、「住民概念の広がり」である。
住民の範囲は、広がってきている。

 ①これまでの住民は、住んでいるという=居住事実のある住民
 ②地域で勤務、勉強、活動しているという=活動住民
 ③介護や国保の関係で、療養先に自治体でなく以前の自治体が負担をする住民=政策型住民
 ④原発避難者のような=いずれ帰るという思いを持った住民
 ⑤本来のふるさと納税のように=想いを持った住民
 ⑥現行のふるさと納税のように=儲かるから住民

 人口減少時代において、①だけでは自治ができないからと、自治基本条例で②の住民をまちづくりの主体に据えた。②はともかく昼間は、その町にいる。

 ③から⑤は、まちには昼も夜も住んでないし、通ってもこないが(たまに訪ねることはあるかもしれないが、行動としては、旅行でどこかを訪ねると同じ)、それなりの理由(政策や想い)があって、そのまちとつながっている住民である。

 私が、なぜ住民を論じるか。それは、住民が、よいまちを作る基本要素だからである。そして、よいまちづくりには、住民の「想い」が重要であるというのが、最近の関心である。シビックプライドであるが、それが現行の④や⑤の住民である。

 ⑥は、儲けでつながっているから、金の切れ目は縁の切れ目になる。率がいいところがあれば、どこでも良いということである。これは、返礼品が、3割以内であっても同じことである。当てにならない住民である。

 ふるさと納税は、国全体で、体系的に考え、理論的に整理するわけではなく、場当たり的な政策になって来たと思う。体系的・理論的に考えることが不得手な政治の力の反映だと思うが、国の職員も本音では、「やってられない」と思っているのではないか(案外、裁判に負けて、一度チャラになったらいいと思っているかもしれない。

 ただ、人の税金で、ここまで「地元産業」のテコ入れが進み、一定の規模になった地域の産業・雇用は、簡単には、チャラにはできないし、急速な収縮できないであろう。目指すべきは、一気に廃止ではなく、人の税金に頼らない産業への自立・転換が、国や自治体の役割なのだろう。そうした道標を出すのが、これからの国の仕事だと思う。

 
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