松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆圏域行政を考える④なぜ広域行政の仕組みはうまくいかないのか

2020-05-18 | 域外住民への関与
 圏域行政は、事業の内容が単独の市町村では実施できなかったり、あるには非効率な場合、範囲を広げ、連携することで、住民にとって利便性を高める制度として、考えられている。

 地域住民の日常生活圏の実態に合わせて事務を行い、その共同処理に適した事務の発見、開発していけば、新たな自治体改革、住民ニーズを汲み上げる仕組みと出来るだろう。

 ただ、これまでの広域行政の仕組みは、上手く言ってこなかった。

(1)広域連合などでも、構成団体の集合という性格が足かせとなって、合意形成や連絡調整に手間がかかり、非効率で前向きのことができないということになった。これを広域組織の自己責任と努力に委ねるのは、無理がある。

(2)財政面では、構成団体からの負担金や職員人件費に大きく依存するので、出資自治体は、カネを出したので、意見を言うことになり、それが(1)になっていく。

(3)寄せ集めではなくて、リーダーシップが取れるように、広域組織長を住民からの直接選挙でえらび、人も自治体からの出向者ではなくて、プロパー人材を広く採用し、それらのための独自財源を担保するというのは、分かりやすい話であるが、住民にとってみれば、よくわからない広域組織長の選挙といっても、関心が盛り上がらないだろうし、市町村と都道府県の間に第3の自治体をつくるという話は、そもそも乗れないだろう。

 既存の市町村制度を前提に、共同処理するという枠組みは、どんなものをつくっても、中途半端になるというのが、総務省の問題意識だろう。

 逆に言うと、すでにいくつかの共同処理の方式があるから、屋上屋を重ねるという批判については、既存の仕組みでうまくできていますか?という問いかけとして戻ってくることになる。

 新しい方式にも問題がある。それも分かる。現状の課題は依然として残ったままである。だから新しい方式は問題だといっても、現状の解決にならない。返す刀で、こうすれば、現状の課題を克服できるという提案、ヒントでもよいのでしてほしと思う。

 私のアイディアの一つは、広域組織に、住民自治を取り入れると、びしっとして、議論が活発化するのではないかというものであるが。そうした機能も多少は期待できるが、メインにはならない。

 私の本筋は、都道府県の基礎自治体化である。これは、神奈川県の研究会で、提案したもので、フルセットが困難な自治体は、神奈川県とセットになって、市町村の事務を行うというものであるが、その手法として事務の代替執行を使うものである。

 今回の地方制度審議会で、圏域行政の立法化が、デッドロックに乗り上げたとの報道があったが、いよいよ、この都道府県の半分を基礎自治体とするこの構想の出番なのかもしれない。
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