松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆協働と総合計画⑪とりあえずのまとめ(三浦半島)

2018-12-18 | 総合計画

 このテーマは、ここらで、ひと区切りつけておこう。

1.総合計画についてはいくつかの論点があるが、協働の観点について、真正面からほとんど論じられてこなかった。これは、協働の定義とも関係するが、協働が行政運営の基本理念だとすると、総合計画の内容が違ってくる。やや刺激的に言えば、協働が身についているかどうかは、総合計画の内容でわかることになる。

2.一般に協働を、「行政と市民が一緒にやる」ということと理解すると、総合計画の策定過程に関心が行くことになる。市民委員会を作り、最近では、中学生、高校生の意見を聞いたということで、協働でつくったということになる。内容は、もっぱら現状や課題、10年後のあるべきまちの姿等である。

3.協働とは、行政、議会、市民(自治会やNPOなども含む広い概念)が、それぞれ自分の得意分野で、まちづくりの主体として、存分に力を発揮することである。ここから考えると、策定過程だけでなく、内容に市民が公共主体として表れてくる。

4.策定過程で、市民に、まちの現状や課題、10年後のまちのあるべき姿を聞くのが一般的である。、
 ・これらを市民に聞いて、それを行政に届け、行政が計画の中に反映すれば、それは参加にとどまる。
 ・これら事項を活かして、総合計画の内容(市民の行動指針づくり)に反映すれのならば、協働のための調査と言える。
 なお、参加よりも協働のほうが、優れているといっているわけではない。局面が違うにすぎない。

5.協働を意識すれば、策定過程で、調査事項は次のようになる。
 ・公共の主体として、市民一人ひとりの行動の実際を聞く(本当に、リサイクルをやっているか)。
 ・市民が、まちにおいて、市民主体のどんな活動をやっているか(現状,課題、今後など)
 ・地区ごとに、その地区独自にどんな活動をやっているか等になる。
.つまり、総合計画が、行政計画か、公共計画家によって、策定過程の市民関与の内容が違ってくる。

6.総合計画の内容も大きく違ってくる。
 人口減少や高齢化が、枕詞ではなく、リアルな問題として、地方自治の前に現れている。従前の税金で、役所がまちをつくるというやり方では、この先の展望はない。今すぐ、できるだけ早く、まちづくり(市政経営)の方向転換が必要である。総合計画は、まちの重要かつ基本の計画である。ここから、変えて行かないでどうするというのが、普通のことだと思う。そこから総合計画は行政計画ではなく、公共計画であるべきという議論になる。

7.公共計画であるべきというのは、わかったが、総合計画にどのように記述するか、総合計画をどんな内容にするべきなのかは、未だ、これだというのがない。これは、そもそも、まちごとの事情が違うので、何が正解ということはできないからである。

8.現時点で、最もきれいなのは、行政が行う施策をまとめた行政施策編と地区が行う施策をまとめた地域施策編を並列させたものではないか。滝沢市の総合計画がその例である。

9.行政施策編+地域施策編は、地区としてのまとまりがあり、しかも地区ごとにその地区にふさわしい計画を作ろうという機運というか、計画、実施主体がないと作ることができない。

10.自治基本条例で目指したのは、こうした地区ごとの自治運営である。地区組織は、地域協議会、地域自治区、市民自治区など、いろいろな名で呼ばれるが、こうした市民組織を作ろうと模索してきた。
 背景として、自治体町内会が弱体化したからである。地方分権は、市役所まで来たが、その下部組織の地域団体は、相変わらず縦割りである。小さな組織を縦割りで林立させるのではなく、これを横割にし、みんなの力を糾合できるようにしようという試みである。

11.実際は、地区ごとに温度差が出る。みんなが力を合わせて、横断的な組織を作り、市民が主体的に取り組みを始めたところと、相変わらず、お役所任せ、役所におんぶにだっこの地区もある。大まかに言って、3分の1は積極的、3分の1は、様子見、残りの3分の1は、後ろ向きだろうか。

12.したがって、全地区、打ち揃って、地区計画を出せるのか、過大な要求ではないかというという現実的問題がある。しかし、自治の未来を考え、10年後の総合計画なので、抵抗を覚悟で、地区ごとの計画を作っていこうというトップの強いリーダーシップと企画担当部局の実践が必要になる。神奈川県大和市では、2005年の時点で、これを始めている。

13.決意のもとになるのが、自治基本条例である。条例づくりの過程において、これからは地区ごとの自治が必要であること、現状はまだまだであるが、こうしたまちづくりをやっていこうと、決意しなければ、なかなか、思い至らないし、やり遂げようという強い決意にはならない。自治基本条例があるかないかで、大きな違いが出る(もちろん、お飾り的に自治基本条例をつくった場合は、難しい)。

14.大和市も、私がいた横浜市も、地区ごとの行政を潰してきた経緯がある。横浜では、大区役所主義で、地区を潰し、区役所による一元的な市政運営を目指してきた。私も、当事者として、関わってきたので、よく分かる。これら自治体では、再度、学区校単位などの自治を再構築しないといけない。大和市では、市民自治区であるが、引っ越してきた住民でできているまちでは、地域意識はなく、この構築は容易ではないだろう。ましてや地区別の総合計画までは道が遠い。

15.地区別計画までは書ききれない場合は、公共主体としての市民の役割等の書きぶりは、いくつかある。もう少し、事例を集めれば、いくつかに類型化できるだろう。
 ・大和市では、まちづくりの評価指標は、市民から見たものになっている。市民が「感じる」指標である。まちづくりが市民に実感されるものになっているかという視点なので、とても良いと思う。
 ・大和市では、市民提案事業を総合計画に乗せている。アイディアとして面白いが、一緒にやる協働事業に絞っているので、限界がある。市民が、行政とは別に、独自に取り組んでいる事業を載せるといいと思うが、その発見や掲載基準が難しい(地区が選べばそれなりの理屈がたつ)。
 ・市民に期待するものという形で、総合計画に載せるパターンは、かなり多い。
 ・個々の市民について、「私たち市民は、このように取り組みます」と書く方式も、それなりに筋が通るが、市民といっても多種多様で、方向性や進むべき道は、人それぞれである。これを一つにはまとめるプロセスが難しいし、まとめるとお仕着せになる。これはやめた方がいいのではないかと思う。
 ・やはり地区ごとに、進むべき方向ややることをまとめるのが一番いいように思う。

16.まとめると、次のように、なるのだろうか
 ・基本構想は、主語は、「私たち」である。10年後、こんなまちになっている(したい)として、私たちでやることや書く。
 ・基本計画は、行政施策編とともに、地区ごとの地域篇をつくる。地区が残っているという強みを活かさないともったいない。
 ・実施計画は、行政施策編と地域篇とでは違うように思う。行政施策編は、これまでのように、指標付きである。地域篇は、地域の活動の紹介で、それと行政の施策をリンクさせたものになる。行政が後押しするぞというメッセージになるものでなければいけない。
 ・地区ごとの計画づくりは、何年もかかる。最低3年前から取り組む必要があるだろう。
 ・その前に、自治の基本をまち全体として確定、共有しなればいけない。それを自治基本条例という形で作らないとしたら、新たな共有化システム(協働ビジョンのようなもの)をつくるとこからと始めないといけない。自治の基本にわたるものなので、市民、議会も当事者である。総合計画策定の5年くらい前から始める必要があるだろう。
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