松下啓一 自治・政策・まちづくり

【連絡先】seisakumatsu@gmail.com 又は seisaku_matsu@hotmail.com

☆災害と励ます地方自治(三浦半島)

2016-04-21 | 1.研究活動

 熊本・大分で起こった地震はまだ先が見えない。たくさんの人がなくなり、数万の人が、家に帰れず、不安な毎日を送っている。

 熊本・大分には、知り合いが何人もいる。従弟が熊本の大学で教員をやっているし、大阪国際大学の同僚が2人、熊本大学にいる。研修でご一緒した人もいる(きっと被害にあったと思うが、ともなく命は無事なのはなによりである)。知り合いではないが、お子さんを亡くしたご両親をテレビで見たが、子を思う親の気持ちを思うと、他人ごとではない。

 前の地震が前震で、こちらが本震だといわれると、後から言わずに、最初に言ってよと言いたくなるし、テレビの地震の解説をする学者は、起こったことをただ説明しているだけで、これなら私だって言えると、連れ合いは怒っている。専門家は、しっかりしないといけない。

 こうした状況の中で、我が家でも、自分たちに何ができるのだろうか、そんな話が続いている。ボランティアに行っても足手まといになるだけなので、当面は、赤十字の寄付と、少し事態が落ち着いたら、被災地のふるさと納税も考えてみようとなった。ふるさと納税は、現状は、本来の趣旨を逸脱してのプレゼント目当てや、あるいはお金持ちの税金対策になっているので、私は、これまで一切手を出さなかったが、今回については、被災地の復興に役立つ方法の一つとして、考えてみようと思う。

 テレビ等は、救援物資はたくさんあるが、それが避難所に回ってこないといった報道になりやすい。たしかに、個々に見れば、ミスや不備もあるだろう。みんなの気持ちの持って行き場のない中で、行政の対応の不備を非難すれば、気持ちをすっきりするかもしれない。しかし、非難しても、それでは何の解決にならない。

 東北でも、そうだったが、評論家に言われるまでもなく、役所の人たちも、自らも被災者であるが、みんな不眠不休で頑張っているからである。まちのために、住民のために、奮闘している。

 どこの自治体でも、今は、職員は最低限の人数しかいない。財政難のなか、矛先は、職員に向かうからである。想像力のない人が、ほかの町ではこれだけ職員をカットしたという。その声に押されて、綱渡りのような人員体制になっている。まるでトヨタの工場で、ちょっとしたことがあると、すぐに全機能がマヒする。

 人件費削減のために、どこの自治体でも、2割や3割は、臨時職員・アルバイトが入っているが、この臨時の人たちは、今回の災害ではどうしているのだろうか。庁舎が崩壊しそうな宇土市役所では、自宅待機なのだろうか。おそらく臨時雇いと言っても、公務員なので、避難所やさまざまなところに出ているのだろう。ならば同一労働同一賃金はどうなったのか。弱いところにしわ寄せするシステムを続けていてよいのだろうか。

 あらためて平時を前提に組み立てられているシステムの脆弱性が明らかになった。災害でいえば、1995年の阪神淡路大震災、この前の東北の3.11、そして今回の九州の地震と、10年に1度は、大災害がやってくる。早晩、関東や中部地方にやってくる。あきらかに、これまでのシステムを組み立て直す時が来ている。

 今回も明らかになったのは、行政の力だけでは、とても対応できるものではないということである。市民,地域団体、NPO、企業のそれぞれが存分に力を出さないと、こうした未曽有の事態には対応できないということである。それには、これまで続いた行政依存、行政要求型の地方自治を転換し、自治の関係者が存分に力を発揮する「励ます地方自治」に転換していかなければ、対応できないというのが私の立場である。私の役割は、この点にあるのだろう。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ▽地域連携(相模女子大学) | トップ | ○空き家問題から自治体産業政... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

1.研究活動」カテゴリの最新記事