地方自治法研修の4回目が終わった。これで今年は終了。
何年も担当しているので、テキストがどんどん増えてくる。ついつい、地方自治法の条文の裏に書いていることや条文をめぐって起こったことを紹介するので、とても全部は終わらない。しかも、横浜市なので、さまざまな体験が思い出され、そこに話が入り込んでしまう。
今回、最後に触れたのが、補助の公益性である。地方自治法第232条の2では「公益上必要がある場合」において補助又は寄附をすることができることとなっている。そこで、雇用を増やし、税収を増やすために、ゴルフ場を誘致する、若者を増やすために大学を誘致する、そのために、固定資産税の分を奨励金として提供することが、公益性があるといえるかである。
行政実例では「公益上必要があるかどうかを一応認定するのは長及び議会であるが、この認定は全くの自由裁量行為ではないから、客観的にも公益上必要であると認められなければならない」(行政実例昭和28年6月29日自行行発第186号)。判例も基本的には同じである。
そして、公益上の必要の判断に裁量権の逸脱又は濫用があったかどうかは、「当該補助金交付の目的、趣旨、効用及び経緯、補助の対象となる事業の目的、性質及び状況、当該地方公共団体の財政の規模及び状況、議会の対応、地方財政に係る諸規範等の諸般の事情を総合的に考慮した上で検討することが必要である」と解される。
一見すると、客観的な基準のように見えるが、要するに、多くの人が、もっともだと思っているがどうである。ここでは、市民の視点の高さや視野の広さや問われてくる。時には、あの市長のやることだから公益性が乏しいが、同じことを我が市長がやれば、今度は、公益性があるといった判断も起こってくる。そんな視点からも、住民訴訟が起こされる。
地方自治法でいえば、公益性のリスクを恐れて、何もせずに抑制的に行動すれば、住民訴訟にならないで済むが、それでは、まちはじり貧に陥るだけである。評論家ならばそれでも良いが、住民の暮らしを守る政治家や実務家は、活路を開かなければならない。リスクを下げつつ、効果を高める知恵を絞ることになるが、そこが地方自治の面白いところだと思う。
ちなみに裁判例からみると、自治体の補助は、雇用確保や人口流出の防止、地域文化向上や地域社会の発展等、地域住民への貢献が果たされていれば認められるようだ。ということは、この点に具体的な成果を出すように、きちんと指標を立てて、常に心して補助金を支出した事業に取り組みことが必要ということである。
この研修は、夕方の6時半から始まるので、夕食は中途半端になる。本来、横浜なので、しゃれたレストランで海を見ながら、ディナーとしたいが、結局、毎回、研修センター近くの立ち食いソバやで、もりそばを食べることになった。お店のほうも、このところ、毎週水曜日、夕方同じ時間にきて、毎回同じように、もりそばとサツマイモのてんぷらを頼む、お客に気が付き始めたところで、今年の研修は終了となった。
また、いつもながら、研修所のメンバーには、お世話になった。感謝申し上げたい。