松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆協働指針市民検討会議(葉山町)

2017-01-26 | 1.研究活動
 葉山町協働指針の市民検討会議の最終回があった。

 最後に、各委員さんから、自由に発言してもらった。これがなかなか良かった。
 自治会の代表の方から、「協働というが、行政がお金がないからだ」ということを率直に語ってもらった方がいいのではないかという意見があった。その意見を聞きながら、考えたことを最後のコメントで話をした。

 一面では、お金がないから協働を言い出したというのは間違いだと思う。これまでだって、行政がやってこなかった(お金を出してこなかった)のではないかという公益活動がたくさんある。

 たとえば、地域の見回りである。毎晩、当番を決めて、火の用心の見回りをすることは、別に行政はやってきたわけではない(消防として、一般的な防火活動をやっているだけである)。これでも地域の住民が自分たちでやってきた。

 ところが、その担い手が減ってきた。自治会の組織率も下がってきたし、そこそこ組織率は維持していても、実態は空洞化してきた。高齢化で動ける実働部隊が、少なくなってきたのである。それをどう補うかが本来の論点であったはずである。

 行政に相談すると、もともと行政は、やってきていなかったので、協働の時代だし、対応できるお金もないから、自ら対応してほしいと答えることになる。そこから、行政はお金がないから、協働と言って、住民に押し付けるだという話になる。しかし、もともとは住民自身でやってきたことである。考えるべきは、力が弱ってきた地域の力をどのように回復していくか、具体的には、自治会の組織率を高め、地域のために活動する人を増やすには、どうしたらよいかを考えることである。これが協働である。

 自分たちでやらず、行政に任せるというのも一つの選択であるが、その場合は、さらに税金で出すなどの負担が必要で、こちらの覚悟も容易ではないだろう。

 他方、一面では、お金がないから、協働を言い出したというのは正しいと思う。これまで行政がやってきた(お金を出してきた)活動がある。

 例えば、歩道脇の植込みの草刈りである。これまで、年4回やってきたが、予算が取れず、年3回しかできなくなった。

 この状況の中で、いくつかの選択が出てくる。
 ①仕方ない、3回で我慢する(町は汚くなるが)
 ②ほかの予算を回して、従来通り4回とする。この場合、他のサービスを減らすことになる。ある福祉サービスも予算減で4回が3回になっていたが、これを2回にして、その分を回すという選択である。
 ③税金を増やしてもいいから4回を維持するという選択もある。

 その選択の一つが、④1回は自分たちでやるという選択である。これが協働である。そのために、シルバー人材のような組織を活用する、NPOがいればそれに育てゆだねる、地域コミュニティの有償事業として育てていくなど、受け皿づくりを行うのが、協働政策である。

 こうした選択が、道路の草刈り以外でも、福祉やまちづくり、などあらゆる分野、全事業で起こっている。4回を3回に減らし、汚い町になってよいという選択はなく、あるいは1回分の税金を増やしてもよいという選択もないだろうから、④の自分たちの町は自分たちで守るという選択である。協働である。

 ④のような選択ができるには、
 ①こうしたことを自分事として考える機会を作ることである。他人事、誰かやってくれるのではないかと考える人ばかりでは、1回は、自分たちで何とかしようという声にもならないし、そのために知恵を出そうということにもならない。
 ②一生懸命やった人が、馬鹿を見る仕組みでは、協働の仕組みは成り立たない。町のために活動した人が評価される仕組みが必要である。これが協働政策の柱になるだろう。
 ③こうした取り組みの到達点の一つが、こうしたことを地域で決定する仕組みである。地域ごとに事情が違うから、うちは年4回の掃除を選択する、うちは年4回の福祉サービスを選択するなど、選択の違いが出てくる。この選択ができる仕組みづくりが、協働政策の到達点の一つである。

 こうしたまちのことを自分ごとにする仕組みの一つが、市民を当事者にするシステムづくりである。簡単に言うと、決める立場に置くということである。無作為で検討委員会の委員に充てるというのも方法である。地域ごとに順番に、1年交代(2年でもよい)の公務員にするという方法もあるのではないか。この地域輪番公務員制度は、そう近くないうちに、現実のことになるように思う。
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