「お、思ったんですけど……」
「?」
「あ、あの!」
「……」
「ちょっと!!」
ようやくこっちを見てくれた鬼男。イラッとしてしまう小頭である。今はあの扉の前から離れて、田舎のおじいちゃんの家も通り過ぎて街へと向かってる。田舎のおじいちゃんの家は一つ山を超えたような? そんな場所で周囲にある家も片手て数えられる程度だった。
山の下の方が町って感じで発展してるのだ。木々の間をピョンピョンと飛んだ山から観る海はやけにキラキラとしてた。けどそんなことじゃない……そんなことじゃない……と小頭は思ってた。だってずっと気にしてた事がある。それを聞いてほしいのに、鬼男の反応は上記の様な様子である。
反応が鈍いとは思ってたけど……でもこいつはこういう風なやつなのだ。それを小頭だってそろそろわかってきてた。寡黙だけど、どうやら小頭にはそれなりに優しいということだってわかってる。
なにせこの鬼がちょっとその力を誤ってしまえば小頭は「痛い!」という暇もなく、クシャっとされてしまうのだ。そのくらいの力はある。けど、できる限り優しく鬼男は小頭を扱ってる。それは、小頭だってよくわかってた。
だからこいつの性格をを考えるに、別に無視してるわけじゃないんだろう。ただ早く走ってるし、飛んでるしで、風の音が小頭の声を遮ってると思われる。しょうがないから、小頭はもっと大きな声をだすことにする。
「えっと! あの扉って中から出てこれないようにしたんだよね?」
すると数秒の後、鬼はコクリとうなづいた。やっぱりちゃんと聞こえたら反応は返してくれるのだ。
「それならさ! お兄ちゃんが向こう側に居た場合、こっちに戻ってこれないんじゃない?」
それが不安だった。もしも兄があの地獄の門の向こう側にいて、なんとか門までたどり着いたのに、こっちに来る事ができなかったら? それってとても困ることになるよね?
「それは……大丈夫だ」
なぜかそんなに声を張り上げても居ないのに、鬼男の声は小頭にははっきりと聞こえる。それをずるいと思ってしまう小頭。だって自分はこんなに必死に声を張り上げてるのに……という損な気分だ。
「なんでそんな事わかるの!?」
「……俺達はきっとつながってる。どういう繋がりかはわからないが……俺がお前の兄と変わったことはきっと偶然じゃない」
初めてこんな長く喋ってくれた。ちょっと驚いた小頭である。その喋りにもだけど、内容にも小頭はびっくりだ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます